「ドスパラ」サードウェーブのCG制作チーム「XR部」が、Unityを活用した『カスタマイズシミュレーター』を発表! 仮想空間でPC性能を可視化できるリアルタイムPCカスタマイズが面白い
ハイエンドを中心としたBTOパソコンの企画・製造・販売を手がけるサードウェーブが、BTOカスタマイズの際に視覚的に確認しながら選べるオリジナルXRコンテンツ、『カスタマイズシミュレーター』を発表し、なんと本作を自社制作したという。独自の存在感を放つPCメーカーが、自社の制作チーム「XR部」のさらなる事業拡大を目指し、ゲームエンジンや3DCG制作ツールによるコンテンツ開発で活躍したいクリエイターを募集するとのことで、制作チームに話を聞いた。
上の写真は室谷将之氏(部長)、山石大樹氏(課長)、摩庭 悠氏(エンジニアグループ スペシャリスト)、吉村明恵氏(デザイナーグループ)が所属するXR部メンバー。
BTOの新しい形『カスタマイズシミュレーター』を開発! 「XR部」の描く未来とは?
CGWORLD(以下、CGW):今回、自社内にてCGビジュアライズのコンテンツを開発したと伺っています。外注せずPCメーカー自身が自社開発したという点が非常に面白いと思うのですが、どういうものなのでしょうか?
室谷将之氏(以下、室谷):カスタマイズシミュレーターといって、端的に言えばPCのBTOカスタムをWebブラウザ上でビジュアライズして見せるツールです。その前身である『GALLERIA Configurator(ガレリアコンフィギュレーター)』というものがありまして、コロナ元年でもある2020年になかなか店舗にお越しいただけない状況の開発したもので、Unreal Engine 5で筐体を3DCGで再現し、仮想空間上でリアルに製品をイメージしてもらえる、というものでした。
その後、社内で公開すると「やはりうちの会社はBTOメーカーなので、中身のカスタマイズがしたいよね」という声が自然に出てきまして。そこで、BTOカスタマイズが仮想空間でできたら面白いな、ということで開発したのがこのカスタマイズシミュレーターになります。GALLERIAのケースなどは自社で製造しているためモデルデータもあり、GALLERIA Configuratorという前身もあったため比較的短期間でつくれました。開発メンバーの摩庭が「モックを見せた方がいいですよね」と1ヶ月ほどで動くところまで実装してくれたことも大きかったですね。
摩庭 悠氏(以下、摩庭):企画書やドキュメントなど紙のテキストベースだとイメージが沸きにくいだろうし、まず動くものを見てもらって意見をもらいながら進めた方が良いだろうと思いました。
CGW:その勢いに乗って、短期間での開発に至ったというワケですね。ではそんなカスタマイズシミュレーターのポイントをお聞かせください。
山石:ポイントのひとつはカスタマイズによる性能変化がビジュアル化される、ということですね。モデルを変えるとパーツが変化し、またパラメータとして視覚的に性能を見ることができるようになります。性能の変化がわかりやすくなり、都度価格も表示されるので、どの部分に何のためにコストをかけているかに納得して購入してもらえる、新しいPCの選び方を提供できるかなと考えています。バイクやクルマをカスタムするのと同じような感覚で、速くしたり頑丈にしたり、色々と触って試してもらってカスタマイズを楽しんでもらえたらと。
CGW:自分の理想のカスタムになるまで色々試したくなりますね! いつ頃稼働するのでしょう?
室谷:お客様個人で触ってもらうのは次のステージで、まずはドスパラに来店されたお客様に店舗スタッフが説明するときに使ってもらい、スタッフが解説しながらニーズに合うように画面を見せつつカスタムし、変化をお客様に見てもらうようなイメージになります。
CGW:その狙いはどういったところでしょうか?
室谷:BTOパーツというのはやはり膨大で、まだ現段階では、売れ筋モデルの一部に対応した、という状態なんですね。また、このシミュレーターは操作がしやすいか、操作していて楽しいかという使用感がとても重要だと考えておりますので、お客様に触っていただいた時の様子を見ることができ、直接声を聞く事ができる店舗でテストを行なって、どの機能が必要でどの機能がいらないのか、ニーズを見極めて本開発、つまり全アセットや機能の実装に進んでいきたいと考えています。
初回導入は、2024年1月下旬ごろを目指して最終調整中です。ドスパラの店舗は全国にありますが、最初は開発メンバーも直接様子が確認出来る秋葉原地区を中心に、数店舗から始めたいと考えています。お客様の声と店舗スタッフの声を聞き、テストを繰り返して一層精度を高め、その先に、全国全店舗、またWebユーザーご自身でも触ってもらえるような段階に展開していけるかなと思っています。
カスタマイズシミュレーターは、Unityによる実装を摩庭氏が担当し、モデルやマテリアル設定を吉村氏が手がけた。筐体以外のパーツは1からモデリングが必要で、約100種のパーツを作成。吉村氏曰く、「まだ社歴も浅く、商品知識を入れながらの作業となり苦労しましたが、スタッフの協力もありつくりきれました」と話す。
なお、今回摩庭氏が開発にUnityを採用したのは、「目的を最短で達成させるための手段であって、特にそこにこだわりがあったわけではない」という。優先するべきはどうすれば目標に最短で辿り着くかで、そのために臨機応変に手段や開発環境を変えられるところが、サードウェーブのXR部の“らしさ”ということだろう。
3年後には“XRと言えばサードウェーブ”と言われるブランドへ!
CGW:そもそもBTOメーカーになぜ「XR部」があるのでしょう?
室谷:弊社は「人々の創造活動の可能性を最大限にする」というミッションステートメントを掲げています。それに沿ってお客様の目的の為のいちツールであるBTOパソコンの販売にとどまらず、ゲームだけでなく、映画・アニメ・VRコンテンツなど幅広い用途に使用されているゲームエンジンを用いたコンテンツ制作を支援することを目指しXR部が生まれました。XR部では、ツールの提供や教育だけでなく、実際の制作までサポートし、創造力を引き出すお手伝いをしています。
CGW:現在のチーム構成はどのような規模になっているのでしょうか?
山石:アーティスト、エンジニア、教育分野、合わせて13名です。その内1/3くらいがスクール事業、それ以外が制作部隊ですね。
CGW:PCメーカー内のXR部ならではの魅力などはありますか?
摩庭:やはりPCメーカーなので、提供される制作環境は良いですよ。何より率先してやりたいことを提案できる風土があります。仕様書通りに開発するというより、自分で考えて動くことを期待される、自由度が高い環境ですね。
吉村明恵氏:私は入社してすぐにドスパラメタバース店というプロジェクトにも参加していましたが、自社ブランドに貢献するプロダクトの制作は反応も直に感じることができ、やりがいがあります。
CGW:今後の目標はどういったところですか?
室谷:3DCGとかXR、Unreal Engineといえば「サードウェーブ」といわれるくらいに育てていきたいと思っています。現在は社内業務が主体となっていますが、3年後には外部からも仕事が受けられるような状態にまで、積極的に動いていきたい。そのためには“シミュレーターをつくったらこうなりました”とか、“メタバースにお店を出してみたらこうなりました”といった事例や実績を、自社の活動を活かしつつ作っていき、顧客体験の向上や成果を上げて、外へ横展開していきたいですね。
コロナ渦を経て特に感じたことは、あの時活動が制限されている中でも愉しむ事ができる、様々な作品や体験によって救われた人は多かったと思います。この先も私たちは”愉しむ”という欲求は尽きることはないと思いますので自社制作ではなくとも、PC・ゲームエンジン・XR技術など我々が出来ることの支援を通して、世の中に新たな体験、新たな感動を増やしていきたいと考えています。
また、ゆくゆくはXR部として50人程度の規模を目指しています。XR部に共感してくれた方からの応募を心待ちにしています。
STAFF Voice
摩庭 悠 氏
ゲーム会社での5年間とシステム会社での10年間の経験を経てXR部に加わりました。趣味でゲームやVRコンテンツを開発してます。CGWORLDの記事を見て面白そうな会社だな、と思い入社を決意しました。Unityの使用経験はありますが、今後はUnreal Engine実務として経験し伸ばしていきたいなと。サードウェーブは柔軟な選択ができる環境で、その柔軟性が私にとって魅力です。
Unreal Engineのスペシャリストである必要はなく、ツールは手段であり、目的が重要だと考えています。単なる仕様通りの作業ではなく、自ら考えることが好きな方にぜひ参加していただきたいですね。
吉村明恵 氏
前職ではゲーム業界で10年、建築業界で5年の経験を積み、その後、東京で様々な案件に参加したいと思い入社しました。Unreal Engineの経験は3年ほどありましたが、今回初めてUnityに取り組むことになりちょっと焦りました(笑)。ただ学ぶ意欲があれば大丈夫、となるのがXR部の魅力ですね。ゲーム業界とは異なり、ウォーターフォール型ではなく、自己裁量を重んじ、主体的に仕事に取り組むスタイルがXR部の特徴です。
そういった働き方に興味をお持ちの方にはぜひお勧めしたいです。それにPCメーカーなので、こんなにハイスペックでなくてもいいです、っていうくらい良い制作環境も用意してもらえますよ(笑)。
募集職種と仕事内容
①Unreal Engine シニアエンジニア
・主にゲームエンジンを使用した、コンフィギュレーター、シミュレーターなどのプロダクト開発
・ノンゲーム分野の受託開発(自宅から通える範囲での客先常駐の可能性もあり)
②プロジェクトマネージャー
・複数プロジェクトの管理業務
・開発チームの管理業務/開発メンバーのメンター
③Unreal Engine トレーナー
・Unreal Engineオンラインスクールの講師(受講サポート業務)
・オンラインスクールのコース開発、教材作成
・専門学校でのUnreal Engine 講師、企業向け研修講師
雇用形態:正社員 従業員数:1,146 名(2023年7月)グループ全体
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cgworld.jp/jobs/30635.html
TEXT_Takahide Yamase(との)、Sadamu Takagi