Substance 3D Designerは高品質かつ大量のマテリアル制作を支援し、プロシージャル・ワークフローを実現するためのソフトウェアである。2021年にAdobeの製品ラインナップに加わり、幅広い分野での活用が期待される本ツールの入門書『作例で学ぶ Substance 3D Designerの教科書』が3月2日(水)に刊行された。
それに先駆けて、2月23日(水)には発売記念セミナーを開催。著者のもんしょ氏、黒澤徹太郎氏、mino氏を迎えて、書籍の内容紹介や作例のデモンストレーションが実施、Substance 3D Designerのノウハウを説き明かした。本記事では2時間にわたったセミナーの概要をレポートする。
『作例で学ぶ Substance 3D Designerの教科書』
著者:もんしょ、黒澤 徹太郎、mino
定価:6,600円(本体6,000円+税10%)
発行・発売:株式会社ボーンデジタル
ISBN:978-4-86246-526-9
総ページ数:576ページ(オールカラー)
サイズ:B5変形判
www.borndigital.co.jp/book/25615.html
Substance 3D Designerの基礎からチュートリアル、ノードの分類まで
本書は全6章・576ページのオールカラー。Substance 3D Designerはもちろん、PainterやSamplerとの連携も網羅しており、「Substance Suite」全体を学べる書籍となっている。セミナーでは各章を執筆担当者が解説した。
第1章「Substance 3D Designerの基礎」は章全体をUIや操作方法などの説明に割いており、レンガの作例を通じて基本的な使い方を学習できる。Substance 3D Designerはパラメータを変更して状態を変化させることができ、レンガの積み方を長手積みから小口積みにする方法などもレクチャーした。
例えば井戸のデザインは小口積みが使われることが多く、用途に合わせて適切なものに素早く対応可能。もんしょ氏はリアリティがあるマテリアルを作るためには実物をきちんと知ることが大切だと語り、「実際のものはどうできているのか?」を考えれば作業もより楽しくなってくると、Substance 3D Designerの奥深さを伝えた。
第2章「基本的なマテリアルの作成の流れ」ではチュートリアルに移る。Substance 3D Designerは自然系のマテリアルを手がけることが多いため、最初は石の地面を題材とした。
チュートリアルは石の形状を出力するためのノード作成から始まり、ひとつずつ手順を教えるステップバイステップ形式となっているため、初心者も迷わずに進められるだろう。最終的にテクスチャとして出力する方法や、Blenderなどの外部ソフトでマテリアルを使う方法なども解説した。
第3章「ノードの活用テクニック」では実際にノードをどう使えばいいのか、そのノウハウを伝授する。まずはどのような種類のノードがあり、どう出力がされるのかを説明。mino氏による用途別の分類も用意した。
そのノード一覧を踏まえた上で、「割れたタイル」、「メカ」、「材木と金属」の作例を紹介。例えば「メカ」はノードは意外と少なく、ベースとなるパネルの形をランダム配置することで、複雑に見える構造を生成した。
ノードの数によって作業量が増えてしまうため、ランダム性をコントロールすることでコストを減らすテクニックを駆使しているのだ。mino氏が具体的にどういった考えで作業しているのかが理解でき、その技術はもちろんヒントやアイデアも得られる章となっている。
Substance Suiteをより活用する方法を伝授
第4章「Substance 3D Painterとの連携」では、Painterの基本的な説明の後に活用法を紹介。Substance 3D Designerで作ったマテリアルはPainterで再現ができ、エクスポートしたパラメータも同じように動作することを伝える。
セミナーではPainter用のフィルタを作り、より便利に使う方法を作例に挙げた。そのひとつのドリップフィルタは、ペイントした場所から液体が垂れたような効果を足すもので、色や垂れる量などのパラメータも後から調節できる便利なものだ。
チュートリアルでは一気に完成形を目指すのではなく、ひとつずつ個別の機能として作成して拡張していく手法を採った。各ステップで区切られているため、もし失敗したときも原因が探りやすいという利点がある。Substance 3D Designerのような非破壊編集ツールは、自分は何が理解できて何が理解できていないかを把握しやすいため、新たなチャレンジをしやすい点が強みである。
第5章「Substance 3D Samplerとの連携」も前章と同じくSamplerの説明からスタート。Samplerは写真からPBRマテリアルを比較的簡単に作れるため、写真撮影のコツやPBR化での注意点に触れた。
黒澤氏は付録B「Substance 3D Samplerのフィルタ一覧」も担当。レンガのパターンを生成できるBrickwallフィルタ、金属を酸化させたディテールを作れるOxidateフィルタ、埃が付いたものを作れるDustフィルタなど、約70種類ものフィルタを網羅。特にテキスタイルなどを扱うユーザーにオススメのページとなっている。
第6章「Substance Automation Toolkitを使った自動化」は中上級者向けに、大量のマテリアルを作成・管理するときに知っておきたいツール群について解き明かした。
ただしSubstance Automation Toolkitは現在エンタープライズライセンスのみで、個人制作のユーザーは使用できないため注意が必要だ。また本書ではPythonモジュールを利用して自動化する方法を解説しているが、Python言語使用や開発環境には言及しておらず、開発環境を構築済みの読者に向けた内容となっている。
Pixel Processorを使った画像フィルタの作成についてのトピックでは、普通の写真が絵画風に変わるフィルタを紹介した。その中には大量のノードを使ったものがあるが、そのときに関数を実行できるPixel Processorを用いれば作業時間を大幅に軽減できる。
もんしょ氏は付録A「PBRの基礎知識」も執筆。こちらはSubstanceを提供するAllegorithmic(現Adobe)の「THE PBR Guide」の第2版をベースに、わかりやすく解説を加えたものだ。「光と色」や「エネルギー保存の法則」、「金属と非金属」などの項目があり、読み物としても興味深い仕上がりとなっている。
後半は「Substance Suiteっていいよね!」座談会を開催。「ほかのノードベースのソフトとの違い」に関しては、ノードに画像のピクセルデータしか通っていないためシンプルで、途中経過もプレビューしやすいため、初心者でも覚えやすいツールだという意見が出た。細かい作業のときは自由度が利かないデメリットはあるものの、ノードベースのソフトの入門に最適だという。
ノードの組み方についての話題では、他の人のノードを見ることが大いに勉強になるというコメントが出た。「作例で学ぶ Substance 3D Designerの教科書」には3氏による多彩なノードが掲載されているため、それらを読み解くことでスキルアップにも繋がるだろう。セミナーは当初の予定時間を超える盛り上がりを見せ、時間内に収まらなかった質疑応答はこちら(https://bdchannel.borndigital.jp/2715/)で公開中だ。ぜひ確認してほしい。
『作例で学ぶ Substance 3D Designerの教科書』
著者:もんしょ、黒澤 徹太郎、mino
定価:6,600円(本体6,000円+税10%)
発行・発売:株式会社ボーンデジタル
ISBN:978-4-86246-526-9
総ページ数:576ページ(オールカラー)
サイズ:B5変形判
www.borndigital.co.jp/book/25615.html
TEXT_高橋克則 / Katsunori Takahashi
EDIT_小村仁美 / Hitomi Komura(CGWORLD)、山田桃子 / Momoko Yamada