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バーチャルプロダクションの運用や運営の課題は?〜Virtual Production Day 2022(1)

224日(木)、オンラインカンファレンスVirtual Production Day 2022が開催された。初開催となるこのカンファレンスはバーチャルプロダクション、特にインカメラVFXにおけるメリットや課題、今後の展望などを語り合うことを目的として実施。ソニーPCL21日(火)にオープンしたばかりの常設バーチャルプロダクションスタジオ「清澄白河BASE」を会場として、多彩なセッションが行われた。

本稿ではその中から、ケーススタディセッションA「多面的に広がるバーチャルプロダクションの可能性-ソニーPCLの最新バーチャルプロダクション制作事例と実用化までの変遷-」、およびケーススタディセッションB「キャラクターが実在する空間と新たなファンコミュニティ創出拠点として」の一部を記す。

記事の目次

    オンラインイベントでは引きの映像を必ず入れる

    ケーススタディセッションAで登壇したのはソニーPCLクリエイティブ部門・ビジュアルソリューションビジネス部の小林大輔氏(統括部長)と遠藤和真氏(プロダクションマネージャー)、そして電通ライブ コンテンツ&テクノロジー開発部の前澤克文氏(チーフクリエイティブディレクター)。

    前半では小林氏が自社のバーチャルプロダクションにおける制作事例と実用化、オープンしたばかりの「清澄白河BASE」について語った。後半ではトヨタのイベント「カローラクロス オンラインプレゼンテーション」の実例に基づき、遠藤氏と前澤氏を交えてディスカッションを行なった。

    左から 小林大輔氏(ソニーPCL)、前澤克文氏(電通ライブ)、遠藤和真氏(ソニーPCL

    前澤氏は初めてバーチャルプロダクションを目の当たりにしたときの所感として「時間や空間、ありとあらゆる制約から解かれて、映像コンテンツの大革命という印象を受けた。コロナ禍で映像制作に様々な制約がかかり、オンラインで(カローラクロスの)イベントができたことは幸運だった」とふり返った。

    遠藤氏は前澤氏からイベントの相談を受けたタイミングとして「東宝のスタジオで昨年LEDを組んで、映画やCMといった撮影ものの作品をしっかり作る試行錯誤をくり返していた」と明かした。それから当セッションの実施に関しても「実際にオンラインでLEDを後ろに置いて、割と早い段階でイベントを行うことができて良い経験になった」と述べた。

    続けて小林氏は「実際に撮影をするにあたって、クオリティを上げるノウハウはあったのか?」と問いかけた。

    前澤氏は「クルマは本当にライティングが大切で、車体にどのように背景が映るのか、バーチャルな空間に入っていけるのか、というのがグリーンバックではできなかった。それが(インカメラVFXでは)できてしまうのが本当にすばらしい」と絶賛。合わせて「ギャラリーのイメージがクルマに反射として映っているところを、同時にカメラで動かしていけるので、様々なオンラインイベントで使われていくのではないか」と展望した。

    遠藤氏は「いろいろなクリエイターがカローラクロスを題材としてコラボするという内容」だったことを踏まえ、技術的な面では「背景がギャラリーであったり、自然の中やアート作品に包まれるようなものであったりと、いくつかシークエンスがまったく異なるシーンがオンラインイベントの中でくり返されるため、照明を合わせるところ」が難しかったという。また「床がLEDではなく美術セットだった。セットごとに作り変える時間もなく、ベースをどのようにしていったらいいのか」という悩みもあった。解決策として「反射のある黒い板を貼って、全体的にLEDの光が映り込むようにしたら馴染みが良かった」とのことだ。

    最後に小林氏から「イベントで使うときのノウハウは、映像制作と親和性が高い。今後に活かせるのか?」との質問がなされた。

    前澤氏は「映像の完パケで終わらない世界がどんどん広がっていくのではないかと思う。オンラインで見ている人たちだけでなく、スタッフとして見ている人たちも『これはすごい』と言っている」と応じ、「今後オンラインを超えた何かになるのではないかという可能性を秘めている。映像制作やイベント制作はスタッフが100%の力を出したときに効果を発揮するので、インカメラVFXは武器になる」と期待を込めた。

    遠藤氏は「いかに実際のロケであるか、どこで撮っているかをわからなくする技術」である一方で、「オンラインイベントの場合はネタばらしというか、『こういう空間でやっている』という引きの映像を必ず入れる」と補足した。「イベントの場合は『こういう場所なんだ』、『実際はLEDなんだ』という驚きも含めて伝えられるため、通常とは異なる企画や撮影では使うことのない事業者にも使ってもらえるようになるのかな」と話を終えた。

    周辺環境やテナントの制限でクリアすべき課題は?

    ケーススタディセッションBで登壇したのはバンダイナムコエンターテインメント3IP事業ディビジョン ニュービジネスプロダクションクロスメディア課の吉本行気氏(アシスタントマネージャー・MIRAIKEN studio / ASOBISTAGEプロデューサー)。デジタルとリアルの融合、それに伴うキャラクター×ゲームアセットによるIP価値の最大化、実際の運用を通じて得た気づきや課題、今後のキャラクターおよびファンとの関わり方に対する新たな挑戦を解説した。

    吉本氏はMIRAIKEN Studioを立ち上げる際の方向性として、クリエイター同士でのコミュケーションが生まれるように意識してデザインを検討したという。立ち上げてみると演出家、開発チーム、撮影チームが一緒になって「もっとこうした方がいい、ああした方がいい」というディスカッションが生まれたり、たまたま別の用事で通りかかったチームが別のチームとコミュニケーションしたりなど、希望した通りの機会が創出されたそうだ。

    吉本行気氏(バンダイナムコエンターテインメント)

    さらに多くの見学者が訪れ、新しい実験をしてみたいという申し込みもあり、バーチャルプロダクションやXR、それ以外の撮影技術の向上に貢献できたとのこと。出演者同士の交流でも、コロナ禍でくつろいだりリラックスして話をしたりすることができない中、和気あいあいと話している場面が多く見られたと補足した。

    LEDを背景にすると、その場で画づくりができるため、季節感の演出やキャラクターの世界の表現が可能になることが最大のメリットと言える。吉本氏は出演者からとして「キャラクターの空間に入り込むことで、その演じている世界への没入感が高まる」、「そのためにまたちがった役づくりに活かせる」といった感想を紹介した。

    次に吉本氏はバーチャルプロダクションやXRスタジオの課題点として、カメラアングルの制限になるような天高(天井高)の問題、音響や振動の問題、電気容量の問題、消防法対策など、数多く存在している周辺環境やテナントの制限を挙げた。実際にオフィスビルの中で運用していくために、クリアしていかなければならない課題である。

    また現在では安全な運用への配慮を欠かすことができない。感染症対策として出演者、スタッフの安全を守るために検温や消毒はもちろん、換気能力、それらを逆算した上での入室制限、安全な動線の確保、安全性を担保するために様々な能力が必要となる点にも触れた。

    そしてこれらのLEDを用いたバーチャルプロダクションやXRスタジオの運営に際して欠かせないものとして、導入コストや制作コストの高さも挙げた。日本でも導入事例が少なく、オペレーターの人手不足などによって機会が限られていたり、それらが制作コストに跳ね返ってしまったりするケースが見受けられるためだ。

    一方でアメリカ、韓国、中国などでは、さらにバーチャルプロダクションを発展させた映像技術を生み出しているクリエイターが多くいることを念頭に、日本のエンタメ企業として盛り上げるべく、業界が一致団結して取り組んでいくことの必要性を述べた。

    吉本氏はMIRAIKEN Studioで試験的に技術交流会を開催していること、クリエイターの輩出にも貢献したいことにも言及した。演出家や映像・収録・撮影チーム、またはUnityUnreal Engine、インターネットやWebに関わるエンジニアチームといった各セクションが、さらに進化させるにはどうすべきか技術研鑽を続けていることに期待を寄せた。

    オープンプラットフォームでファンコミュニティを創出

    吉本氏は今後のエンターテインメントコンテンツがクリエイターによる競争を必要とすることを背景として、MIRAIKEN Studioはプロデューサー、ディレクター、エンジニア、プログラマーやCG、音響、映像などのクリエイターに対してオープンプラットフォームであり続けたいと希望を述べた。ここに様々な分野のエキスパートが集まり、出会い、多彩なクリエイティブを発揮して生み出される新しいコンテンツに期待しているという。

    またMIRAIKEN Studioで制作されたアセットや映像が実際のコンサート現場で使われること、ゲームに収録されること、逆に実際のコンサートで使われた映像やアセットがMIRAIKEN Studioで使われることも想定。さらにその先の可能性として、アセットや映像がバンダイナムコ以外のスタジオおよび国境を超えて海外でも使われることまで展望した。

    吉本氏は最後にファンコミュニティの創出について語った。この20年間でWeb2.0UGC(ユーザー生成コンテンツ)、SNSにおけるユーザー活動や新しいクリエイティブが隆盛を極めてきて、現在はWeb3によるDAO(分散型自立組織)などといった新しいクリエイティブのあり方も広く世に出始めている現状から、MIRAIKEN Studioが広くインターネットを通じて社会とつながり、新しいファンコミュニティの創出拠点になることまで考慮しているという。

    それは同時にエンターテインメントはファンの熱量が作り出すものでもあるため、ゲーム、音楽、映像、アミューズメント、おもちゃといった従来のエンターテインメントに新しいエンターテインメントが加わることも意味している。インターネットやメタバースを通じてファンの身近な生活圏にあることや、コミュニティのハブやバーチャルとリアルが融合するポジションをも目指しているという。

    従来の配信でコメントやインタラクティブな機能を通じてファンとキャラクター、出演者がつながっている一方で、新しいファンコミュニティと配信、映像、キャラクターが実在することのあり方はどうなっていくのか。これからも進化し続けていきたいと吉本氏は語り、講演をしめくくった。

    Virtual Production Day 2022

    https://expo.nikkeibp.co.jp/vpd/2022/

    TEXT & PHOTO_真狩祐志 / Yushi Makari
    EDIT_小村仁美 / Hitomi KomuraCGWORLD)、山田桃子 / Momoko Yamada

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