6月3日(金)より公開されているアニメ『機動戦士ガンダム ククルス・ドアンの島』。言わずと知れた『機動戦士ガンダム』のキャラクターデザイナー、アニメーションディレクターであり、近年も『機動戦士ガンダム THE ORIGIN』で総監督を務めた安彦良和氏が、TVシリーズのなかで特別な位置づけの一編を劇場長編作品としてつくり上げた。そんな本作において3DCGによるモビルスーツのアニメーションを担当したのはYAMATOWORKS。彼らのもつ従来からの3DCGによるキャラクターアニメーション哲学が安彦監督の映像づくりの方針に合致し、ドラマ性と爽快感を両立させた見応えのある映像に仕上がった。その演出手法やアニメーションづくりの工夫について、同社の代表で、本作で3D演出を担当した森田修平氏と、3Dディレクターの安部保仁氏に聞いた。

記事の目次
    『機動戦士ガンダム ククルス・ドアンの島』
    公開:全国公開中
    配給:松竹ODS事業室
    g-doan.net

    企画・制作:サンライズ 
    原作:矢立 肇、富野由悠季 
    監督:安彦良和 
    副監督:イム ガヒ
    脚本 : 根元歳三 
    キャラクターデザイン:安彦良和、田村篤、ことぶきつかさ
    メカニカルデザイン:大河原邦男、カトキハジメ、山根公利 
    総作画監督 : 田村 篤
    美術監督:金子雄司
    色彩設計:安部なぎさ
    撮影監督:葛山剛士、飯島 亮
    3D演出:森田修平
    3Dディレクター:安部保仁
    編集:新居和弘 
    音響監督:藤野貞義
    音楽:服部隆之
    製作:バンダイナムコフィルムワークス
    主題歌:森口博子「Ubugoe」(キングレコード)
    ©創通・サンライズ

    念願の安彦良和監督ガンダムシリーズへ満を持しての制作参加

    CGWORLD(以下、CGW):まずは本作への参加の経緯から教えて下さい。

    3D演出・森田修平氏(以下、森田):YAMATOWORKSとしてはガンダムシリーズへの参加が今作で3作目なんです。『G40』(『機動戦士ガンダム40周年記念 ガンダム×KEN OKUYAMA DESIGN×LDH JAPAN“G40プロジェクト”スペシャルムービー』、2020年)と、『機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ』(2021年)のお仕事をしたあとに、この作品でプロデューサーを務めているサンライズの福嶋大策さんから、お声掛けをいただきました。福嶋さんとは僕がサンライズで『コイ☆セント』(2010年)の監督をしていたときからのお付き合いで、一度僕たちとガッツリ組んでみたいとおっしゃっていただいていたので、今回ついにお仕事をさせていただける機会となりました。それと、理由としてはもうひとつあります。本作のメカニカルデザインを務められているカトキハジメさんとは短編集CGアニメ『SHORT PEACE』(2013年)の「武器よさらば」という作品で、カトキさんが脚本・監督、僕が演出という立場でお仕事をさせていただいていたので、意思疎通も速やかに行えそうということで、お鉢が回ってきました。

    森田修平氏【左】
    株式会社YAMATOWORKS代表。アニメーション監督作の代表作としてOVA『KAKURENBO』(2005)、OVA『FREEDOM』(2006~2008)、OVA『コイ☆セント』(2010)オムニバス短編映画『SHORT PEACE』より『九十九』(2013)など。TVアニメ『東京喰種トーキョーグール』(第1期・第2期監督/2014)、長編映画『ニンジャバットマン』(パート監督/2018)ほか。

    安部保仁氏【右】
    株式会社YAMATOWORKS CGIディレクター。『機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ』(3Dディレクター/2021)。短編アニメ『Rick and Morty "The Great Yokai Battle of Akihabara"』 (演出、CGIディレクター/2021)、ほか。

    3Dディレクター 安部保仁氏(以下、安部):尊敬する安彦良和監督のファーストガンダムにCGディレクターとして携われるというお話を聞いたときにはとても嬉しかったです。ただ、『ククルス・ドアンの島』というタイトルを聞いたときには少し驚きました。

    CGW:『機動戦士ガンダム』のストーリーなかでも外伝的なお話で、当時の制作状況もあってこれまで不遇な扱いをされてきたエピソードですからね。

    森田:そうなんですよね。僕は子供の頃にファーストガンダムを再放送で観ていた世代だったのですが、この話数は強く印象に残っています。子供の頃って、敵だったキャラクターが味方になる展開に熱くなるじゃないですか。アムロからすると敵にあたるジオン軍の兵士のドアンが、戦災孤児たちと島で暮らしていて、彼がかつて所属していたジオンのザクと戦う姿にシビれましたね。作画のことはむしろあまり覚えていなくて、ストーリーが印象深かったので、今回のお仕事でタイトルを聞いたときには懐かしい記憶が蘇りました。

    CGW:お2人は「3D演出」、「3Dディレクター」という肩書でクレジットされていますが、お仕事の分担はどのようになっているのでしょうか?

    安部:CGディレクターの一般的な仕事である作業の割り振りや指示については僕が担当しています。

    森田:僕はその手前の段階で、3DCGでできることはどんなことかを安彦監督や副監督・演出のイム・ガヒさんに提案や説明をする立場です。僕自身、CGアニメの『FREEDOM』と、作画アニメの『東京喰種トーキョーグール』で監督を務めた経験があり、3DCGと作画の両方の間に立って、できることや工夫が要ることなどのコミュニケーションが取れるので、それぞれの側に言語を“翻訳”する役割を担っています。これまで作品を作る中で、僕自身こういった立ち位置の人間がいてくれたらなと思っていたので、自分から提案をしてこの仕事を担当させていただきました。

    CGW:絵コンテは3DCGが登場するカットも手描きでしたか?

    森田:そうです。ジオン公国軍のサザンクロス隊が初登場するカサブランカのシーンはイムさんで、それ以外のモビルスーツ戦は安彦監督によるものです。絵コンテを読んで監督の描きたいイメージを憑依させて、このカットで大事なポイントはここだとスタッフに伝えていきました。

    CGW:CGアニメーションのチェックは森田さんのお仕事でしょうか?

    森田:僕はもちろんですが、イムさんと総作画監督の田村 篤さんもチェックをされます。一般的に3DCGは実写のようにムービーを見てチェックをして口頭で指示を出すので、田村さんのイメージを僕がCGスタッフに噛み砕いて説明するというかたちでした。それに関連して面白かったのは、今回の作品で紙のタイムシートを起こしたことです。作画のアニメは紙での指示の遣り取りがほとんどなので、安彦監督は最終的に紙でチェックをされます。そこで、3DCGのムービーからキーフレームの画を書き出し、その動きに相当するシートを作っています。これによってCGアニメーションの動きを改めて分析する機会になりました。これはCGスタッフにとっても勉強になることなので、以前から試したいと思っていたことでした。

    安部:3DCGでコマを書き出すときはフルコマで出すようなかたちを取ることが多いのですが、今回はキーフレームに加えて動画の中割も打っています。それを森田さんがチェックし、さらに安彦監督にチェックしていただくのですから、ものすごい勉強の機会です。タイムシートはやはりアニメ業界においては重要なコミュニケーションツールなんですよね。

    森田:基礎言語みたいなものですよね。全スタッフがシートの読み書きができるようになったことで、今後の別の仕事で作画アニメーターとのコミュニケーションがシート上でできます。YAMATOWORKSとしても大きな財産になりましたね。

    「ガンダムはヒーロー」演出に応じてモビルスーツの表情やスタイルを変形

    CGW:今作でセットアップしたアセットはどのくらいの数になりますか?

    安部:モビルスーツの設定画として公開されているもの全てと、ホワイトベースとコアブースターを制作したので、全部で10体ほどになります。『機動戦士ガンダム THE ORIGIN』を作っていたサンライズ デジタルクリエイションスタジオさんが協力してくださいまして、3ds Maxから弊社のLightWaveに変換して、テクスチャはUV展開を新規にし直しています。ガンキャノンなどは既に作られたモデルがあったので、基本的な部分は使わせていただいて、適宜アレンジを加えています。ガンダムも『機動戦士ガンダム THE ORIGIN』のときにテストモデルが作られていたので、それを参考にさせていただいています。

    CGW:安彦監督からはどのようなリクエストがありましたか?

    森田:安彦監督が開口一番、「ガンダムはヒーローなんです!」と、とても強くおっしゃったことが大変心強かったです。というのも、YAMATOWORKSはもともとキャラクターのアニメーションを志向している会社ですので、自分たちの強みを活かしていけると思いましたし、そこにカトキさんによるリアリティのあるメカを合わせていくことで面白いことが起きそうだという予感がありました。さらに良かったのが、総作監の田村さんが入ってくれたことです。田村さんはカトキさんのデザインをもとに作られた「GUNDAM THE ORIGIN RX78-02」のプラモデルに、安彦監督の特徴をパテで盛り込んで改造したものを作って、それを僕らに預けてくれたんです。つまり、それをもとにCGモデルを作れば安彦監督らしいガンダムのモデルが作れるというわけです。こうして出来上がったモデルを見て、カトキさんも喜んでくださいました。

    CGW:田村さんが盛り込まれていた安彦監督の特徴とはどんなところでしょうか?

    安部:足に特徴がありましたね。ヒーローらしくスラっとしているんです。

    森田:つま先に行くに従って細くなるんですよね。ただ、それを全て再現しすぎるとモビルスーツらしくなくなってしまうので、左足を前に出しているときは左足だけメカっぽく見せて、右足の方はシュッとさせる。3DCG上でそう見せられる機能を入れています。

    安部:ザクとのちがいもシルエットで明確に出せるので良かったですね。サンライズ作品ではデザイナーが描いたものを作画するときにアレンジすることは昔からよくあったので、その意味でも今作では伝統に則っていると言えます。ベースにカトキさんのしっかりしたデザインがあり、そこに田村さんや安彦監督の解釈が入って、アニメらしいガンダムになったと思います。

    CGW:足のほかにデザイン上の特徴としてはどんなことがありますか?

    森田:顔が難しかったですね。

    安部:安彦監督のガンダムはどこか優しさを残しているんです。近年のガンダムの傾向として少し怖い方向が強かったので、アニメーターにはそうならないように意識してもらいました。

    森田:ガンダムの顔って本当にいろいろな表情になるので、細かな変形を仕込んでいます。睨んでいるような目つきとか、片目を少し大きくするだけでもかなり変わって見えます。

    CGW:メカの場合、特に一度つくったアセットを変形させることはないと思われがちですが、シーンの演出意図によって実際に表情を変形させているんですね。

    森田:そういうことです。それはガンダムだけでなく他のモビルスーツもそうです。サザンクロス隊と対峙したジムは怖気づいているように見せています。先ほどの安彦監督の「ヒーロー」の言葉のように、モビルスーツ対モビルスーツのシーンでは、メカというよりもキャラクターになるんです。いわゆる“正義と悪”の構図をつくると、やはり敵は怖く見えなくてはいけないし、ヒーローがピンチのときはそういう表情をつくって雰囲気を出す必要があります。その意味では人間キャラクターと一緒ですね。戦うときに緊張しているとか、怒っているとかをしっかりと入れ込んでいます。逆にこうしたシチュエーションのときに巨大さを出そうとすると、動きの面で弱くなってキャラクターにはならなくなってしまいます。

    安部:ロボットアニメ好きの人間としては、アニメーターによって特徴が出ることこそ醍醐味だと思うんです。CG作品はこれまであまりそれが出しづらかったイメージがあるのですが、今回はモビルスーツに表情がつけられるしくみを取り入れたことで、カットによるアニメーターの特徴が出やすくなっています。

    CGW:YAMATOWORKSでは皆さんがそう思われているのでしょうか?

    森田:そんな人間だらけです(笑)。筆頭はリードアニメーターの坂本隆輔ですね。若手スタッフもみんな彼に引っ張られています。サザンクロス隊が初登場するシーンで高機動型ザクがジムの胸ぐらをつかんで殴るカットがあるのですが、怖く見せたいという演出意図があったので、それを伝えて坂本に担当してもらったら、まあ暴力的なアニメーションに仕上がりまして(笑)。田村さんも「素晴らしいです!」と喜んでくれました。また、別のシーンでドアンのザクが反撃のために立ち上がるカットでは、担当した若手アニメーターが上手くアニメーションを付けられずに悩んでいたところ、「おじさんが苦しんでも立ち上がる芝居なら映画『ロッキー』を見ろ!」と言って、そのシーンを見せたり(笑)。アニメーターは役者であれというのがYAMATOWORKSの方針なんですよ。

    CGW:ちょうど今お話に出ましたドアンのザクのモデリングはいかがでしたか?

    森田:TVシリーズのときに作画が荒くなった部分は、ドアンが修理したからこうなっているんだとカトキさんが解釈して、きちんと理屈を伴ってデザインに落とし込まれているのが素晴らしかったですね。使っては直しを繰り返せば鉄も伸びるし、装甲も剥がれる。モノアイの周りがボンネットのようにちょっと蓋が開いていたりするんですよ。

    安部:つくっている僕らにしかわからないだろうと思っていたら、プロモーション映像や資料が公開されるとファンの方もちゃんと気づいてくれて、「こういう解釈なのか」と反応してくれたことも嬉しかったですね。観てくれる方もしっかりカトキさんの愛を受け止めてくれるんだなと思いましたし、こちらとしてもこだわれてよかったなと思いました。

    YAMATOWORKSの哲学と合致する「地に足がついた演技」

    CGW:本作でのCGカット数はどのくらいですか?

    森田:正確な数字は覚えてないのですが、300から400ぐらいだったでしょうか。

    安部:モビルスーツが登場するカットは、過去回想とルッグンにぶらさがっているところが主に作画で、それ以外は3DCGが入っています。

    森田:あと、1カットだけドアンのザクのモーションを安彦監督が作画されたカットがあります。それがどこかは劇場で探してください(笑)。

    CGW:作画と3DCGが混在するカットはどのようにつくっていきましたか?

    森田:レイアウトを切る際に、作画と3DCGのどちらを先行させるかは僕のほうで差配しました。作画が先の方がつくりやすそうであれば作画から、といった具合に提案しています。島のカットは3DCG先行が多かったですね。

    CGW:物語の舞台となる島は建物がほとんどない、だだっ広い空間が多いのでレイアウトが難しそうですね。

    森田:そうですね。ただ、シーンごとに背景のセットアップを変えているんです。原図修正を含めた絵面の仕上がりを僕の方で調整しています。そういった部分も3D演出の仕事でした。例えば、だだっ広いところは板ポリで歪んだ地面を作って奥に岩を配置したり、岩場は自然物なので鉛筆の方が雰囲気が出るからそのスタイルでお願いしたりといったことをしています。またモビルスーツ同士の鍔迫り合いのエフェクトは作画っぽく見えますが、ルックデヴアーティストの大原伸一が3DCGでつくっています。

    安部:『機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ』の仕事をしたときに、作画監督の方からガンダムの伝統的な影付けのリファレンスをいただいて、それを再検証して今回採り入れたそうです。

    森田:大原も『FREEDOM』の頃から一緒に仕事をしているルックデヴアーティストです。作画の方の言語を理解してリスペクトしているので、ハイブリッドなつくり方ができます。作画に近い考え方で3DCGを使っていますし、3DCGでできない部分は大原がデジタル上で手描きをしていたりもします。例えば、最初にドアンのザクが表れた場面で、後ろで雷が光っているときにザクにギザギザとした複雑な影が落ちるのですが、その影などは手描きですね。

    CGW:キャラクターとモビルスーツが混在するカットではモビルスーツの巨大感が特によく表れていたと思います。これにはどのような工夫があったのでしょうか?

    森田:今回の演出上のコンセプトとして、モビルスーツと人間が同時に出るようなカットは見せ方を明確に変えています。例えば、ガンダムが最初に立ち上がるシーンは、あえてロボットっぽく見せて兵器であることを強く印象づけています。先程のモビルスーツ同士の戦いでキャラクターとして見せるのとは真反対の考え方です。子供たちとガンキャノンが同時に映るカットもそうですね。手前の足を大きく見せたり、パースを工夫させたり、カメラレンズを調整したりして見せています。

    CGW:特にこだわられたところはどんな部分でしょうか?

    森田:今のメカらしく見せることと、最初の監督の言葉の通り、モビルスーツをキャラクターらしく見せるシーンを分けて見せることをしっかり意識したことです。安彦監督からも「地に足がついた演技をしてほしい」というお話がありました。自分もどちらかというとそういった演技が好きなんです。この映画でガンダムがビーム・サーベルを持ったときは、侍のように構えてゆっくり近づいていく様子を任侠映画に例えてアニメーターに説明したところ、上手く拾ってくれました。

    安部:重力下のガンダムだったので、重さを意識してほしいともおっしゃっていましたよね?

    森田:そうそう。やっぱりCGモデルは意識して重さを出そうとしないと、つい軽く見えてしまいがちなんです。人が歩いたときには肉も下がるので、CGモデルでもそれに相当するパーツが下がるように仕込んだり、人間のように身体が縮められるよう、ボーンも潰せるようにしています。そのようにして腰をしっかり落とさないと重さが出ないんです。そこが「地に足が付く」という表現なんです

    安部:YAMATOWORKSのセットアップにおける一番の特徴ですね。どの作品でも、まず腰から動かすことを森田さんや坂本さんから叩き込まれます。

    森田:腰から動かすと足が地面から離れてしまいます。そうなるからこそ、そこで重力のことを意識して一生懸命に付けようとする工夫が生まれるわけです。

    CGW:まさにその動かし方の考えと、今回の高機動型ザクのスケーターのような走り方がマッチしていましたね。

    森田:そうですね。安彦監督からは「モビルスーツの歩き方とドムのホバーの動きの間の子のような、スケートのような走り方で」というオーダーでした。いろいろとトライ&エラーした結果、上半身で勢いをつける感じで走っていくかたちになり、監督からは「イメージ通りだ」と褒めていただけました。

    CGW:重量感が表れたカットでいうと、ガンダムとドアンのザクが最初にぶつかり合うところは、重さの表現に加え、CG特有の接触とめり込みの問題も発生しそうで大変そうでした。

    安部:そうですね。めり込みに関しては、今でも残っているんじゃないかとヒヤヒヤしています(笑)

    森田:このカットは最初のテイクだとあっさりしていたので、「もっとねちっこく、重く重く」と指示を出しました。こういう表現って、3DCGではつい逃げたくなる表現なのですが、僕は見逃しません(笑)。押したら押し返しがあって、そこでさらに腰を入れて押す。一度押すだけでは重さというものは表現されないんです。押し合いへし合いの相撲のように見せていきました。そういう意味でも、モビルスーツ同士のカットはやはりキャラクターとして地に足がついた演技を見せていくようにしていました。

    CGW:今回の作品はYAMATOWORKSにとってどんな作品になりましたか?

    安部:YAMATOWORKSとして3作品目のガンダムで、CGディレクターとしてこれまで様々な監督の下でガンダム表現を学んできたものを出し切れた集大成的な作品になったと思っています。個人的にもガンダムの二刀流シーンをモデラーとプロポーションについて何度も試行錯誤をして本編中で一番格好良いと思えるシルエットを出せましたし、これまで吸収してきたことを100%出せたと思っています。

    森田:YAMATOWORKSでは3DCGだけにこだわらず、作画スタッフなどからさまざまなことを吸収して映像をつくっています。演出家としてはやはりカットをつくる人は役者であってほしいと思うので、この記事を学生さんやこれからクリエイターを目指す方が読まれていたとしたら、さまざまな表現を幅広く学んで、映像づくりの面白さを知っていただきたいですね。今日お話したことが実際の画面でどのように表現されているのか、ぜひ劇場でご覧になって確かめて下さい。

    TEXT_日詰明嘉
    EDIT_海老原朱里(CGWORLD)、山田桃子
    PHOTO_蟹 由香