あけましておめでとうございます! 2023年も本誌CGWORLDならびにCGWORLD.jpをご愛顧のほどよろしくお願いいたします。若杉編集長をはじめとするCGWORLDアドバイザリーボードメンバーに、2023年の抱負や注目トピックについて聞きました。

記事の目次

    アーティスト目線でCGの現場や作品の面白さをみなさんにお伝えしたい

    CGWORLD編集長・アニメーション&海外映像担当:若杉 遼

    Q1:2023年に注目している作品

    2023年は個人的に日本国内のCGアニメ映画の作品全般に注目しています。年始の日本帰国中に『すずめの戸締まり』『THE FIRST SLAM DUNK』など、今日本でとても熱い作品を映画館で観て、改めて、日本のCGは本当にいい意味で海外とは違う新しい世界に踏み込んで、そこでまた新しい文化を作っていると感じました。今まで手描きでやっていたアニメをただ単にCGに置き換えた以上の意味を作ったような気がします。今のCGアニメ映画本当に熱いです。CGWORLDでどんどん深掘りしたいと思います!

    映画『すずめの戸締まり』予告②【11月11日(金)公開】
    映画『THE FIRST SLAM DUNK』公開後PV 30秒 【絶賛上映中】

    Q2:2023年にチャレンジしたいこと

    個人的な話になってしまうのですが、今年は新しいスタジオでの仕事が始まるのでそこでまた頑張りたいと思っています! そして、CGWORLDに関しては、昨年1年間を通して日本のゲームやCGアニメについてたくさん学ばせていただきました。今まではあまり接点がなかったこともあり、知識や面白さ、凄さをたくさん教えていただき頭をガツンとやられたような衝撃でした。

    今年は、そんな昨年の経験を踏まえて、アーティスト兼編集長という立場を最大限に活かし、1歩ではなく2歩踏み込んでアーティスト目線でもっともっとCGの現場や作品の面白さをみなさんにお伝えできたらと思っております。今年も読者、アーティストの皆さんと距離の近いCGWORLDにしていきます。よろしくお願いいたします。

    CGを使用した新しいことを模索していきたい

    CGアート全般&実写VFX担当:Khaki

    Q1:2023年に注目している作品

    『Spider-Man: Across the Spider-Verse』。前作は内容やCG表現ともに圧倒的に素晴らしく、CGアニメーションの新しい可能性を見せてもらったので今作も大変楽しみにしています。

    またILLUMINATIONによる『ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー』も日本のIPを使用したCGアニメーションとして大変勉強になりそうで楽しみにしています。

    『スパイダーマン:アクロス・ザ・スパイダーバース』予告1 2023年 全国の映画館で公開
    『ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー』セカンド予告(吹替版)

    Q2:2023年にチャレンジしたいこと

    世の中の変化も早くなってきており、従来の業務以外にもCGを使用した新しいことを模索していきたいと考えています。フルCGコンテンツでは従来の小規模なものからもう少し規模の大きなものもチャレンジしていきたいです。また、Unreal EngineやBlenderなども試験的にテストしてきましたが、本格的にメインツールとして使用していければと思っています。

    AIの進歩に注目

    ゲーム開発技術&海外ゲーム担当:榊原 寛

    Q1:2023年に注目している作品

    注目している「作品」ということですが、ここはあえてAIと言いたいです。ご存じのようにAIがクリエイティブジャンルで爆発的進歩を遂げたのが昨年。これはツールであるとともに「創作が可能なメタ作品」であると思います。新年は善かれ悪しかれ、AIを活用した作品が続々現れ、人だけが作ったものとは毛色が異なる創作物が我々の眼前に広がってきます。コンピュータの助けで人間の創作が大きく変わったように、AIの進歩が人間の創造性とどう共進化するのか、固唾を呑み注目しています。

    Q2:2023年にチャレンジしたいこと

    AIを活用して何ができるのかできないのかを、外野ではなくあくまで自分の経験として会得してモノにしていきたいと思います。2D絵だけでなく、3Dモデル、音楽、物語などあらゆるものがAIのサポートを受けられるときに、1人の人が創れるものの量や質と我々の感性は変わらざるを得ないので、そのダイナミズムの中に身を置きたい。CGWORLDアドバイザリーボードとしても、そのような実験的・先駆的作品が世に現れ次第ぜひとも取材にご協力して読者の皆様に制作の実際をお伝えしたいです。

    UEエンジニア講座を準備中

    ゲームエンジン(映像・VR)&VIZ担当:スタジオブロス&モデリングブロス

    Q1:2023年に注目している作品

    弊社がインカメラVFXを担当しているNHK大河ドラマ『どうする家康』

    Epic Gamesバーチャルプロダクションパートナー全世界24社のうち日本国内の4社全てが制作に参加している初めての作品です。相当無茶をしているので最後まで楽しんでいただけると思います。1月8日(日)から放送開始です。

    Q2:2023年にチャレンジしたいこと

    エンタープライズ領域のUEエンジニア需要に応えるため、2023年度開講を目指して大学生・院生向けUEエンジニア講座とバーチャルプロダクションエンジニア講座の準備を進めています。準備が整い次第詳細情報をリリースいたします。リアルタイムグラフィックス・エンジニアを必要とする企業様のご支援、ご協力よろしくお願い申し上げます。

    「ChatGPT」の次世代モデルGPT-4に注目

    CGを活用した新領域&ビジネス担当:岸本浩一

    Q1:2023年に注目している作品

    2022年末に世界を驚かせた高性能対話型AI 「ChatGPT」の次世代モデルGPT-4に注目しています。GPT-4は現行のモデルより数百倍高性能と言われています。

    また、MicrosoftがChatGPTを搭載した検索エンジンを発表する方向で準備を進めていると言われており、一般の人がAIを当たり前のように使う未来は思ったより早いのかもしれません。今後のAIの進化と、その進化にクリエイターがどう対応していくか目が離せません。

    Q2:2023年にチャレンジしたいこと

    海外への渡航条件が世界中で緩和されてきているので、今年はもっと海外にいって最新の生の情報をたくさんゲットしたいと思います。

    これからメタバースやAIの時代になっていくからこそ、ソースとなる生の一次情報の価値が相対的に高まります。それは、移動した距離にも比例するのではないかと思います。メタバースとは逆行しますが直接自分で見て触れて感じたことを信じ、その先に新しいサービスや体験を生み出していきたいと思います。

    「NeRF(Neural Radiance Fields)」を探求したい

    レンダラ・ハードウェア担当:澤田友明

    Q1:2023年に注目している作品

    スティーブン・スピルバーグ監督×ルーカスフィルム×ハリソン・フォードといえば『インディ・ジョーンズ』。その全世界待望となる最新作にしてハリソン・フォード最後の作品となる『Indiana Jones and the DIAL OF DESTINY』(邦題『インディ・ジョーンズと運命のダイヤル』)に注目しています。ティザーポスターからもわかる通り『インディ・ジョーンズ』シリーズは巨匠スピルバーグのライティングメソッドがこれでもかというほど凝縮されており、CGを学ぶためにも絶対外せない作品です。

    Indiana Jones and the Dial of Destiny | Official Trailer

    Q2:2023年にチャレンジしたいこと

    実写とCG・現実と仮想を繋ぐメソッド「NeRF(Neural Radiance Fields)」を探求してこれまでのジオメトリ(ポリゴン)に頼らない新たな3Dの表現を探っていきたいです。カメラを持っての撮影(直感)から中間制作物を経ることなしにダイレクトにCG表現につながっていて、なおかつAIのパワーを存分に活かせるところが次世代ですね。まだまだクリアしなければいけない課題はありますが、これまでの枠組みにとらわれずにどんな分野で応用できるのかいろいろ試してみたいですね。