日本最大のコンテンツビジネス総合展である、「コンテンツ東京 2023」が6月28日(水)から30日(金)にかけて東京ビッグサイトにて開催された。

本イベントは漫画やアニメ、ゲームといったキャラクターコンテンツはもちろん、映像やCGのほか、デジタルテクノロジー全般などが出展されている。本記事では、特に映像やCGまわりでどのようなものがあったかを紹介しよう。

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    キャラクターを活かす映像・CG技術

    ▲台湾パビリオンのブース。台湾の様々なキャラクターコンテンツが日本向けに紹介されていた

    会場では、東映アニメーションやバンダイナムコゲームスなどの日本のメジャー企業によるアニメ・ゲーム系人気コンテンツの展示をはじめ、韓国・台湾などのキャラクターコンテンツ展示も存在感を示していた。

    なかでも「映像・CG制作展」では、キャラクターコンテンツを支える技術の展示も数多くみられ、特にVTuberに関係する技術展示は活況を呈していた。VTuberのライブ制作や3Dアバター制作などを手がけるActiv8のブースでは、主に演者の生の動きをキャラクターに反映する技術が数多く展示されていた。

    ▲Activ8のブース。キズナアイのライブコンテンツの実績などが紹介されていた

    例えばLOGIC&MAGICは使いやすいフェイシャルキャプチャシステム「CelFace」を出展。軽いヘッドマウントカメラによって、疲れにくく使いやすいものを提案していた。CelFaceは「和製セルルックモデル専用」とも銘打っており、VTuber向けに特化した製品といえる。

    ▲LOGIC&MAGICのブース。アクターの表情がヘッドセットに付けたカメラを通してキャラクターに反映される様子を見せていた

    また、モーションキャプチャについても、数多くの企業が出展しているのが見られた。かねてから需要の大きい分野であるが、改めて存在の大きさを感じさせた。

    高価な製品から安価な製品まで登場するなか、興味深いのは中間にある製品である。NOITOMのモーションキャプチャは「大企業が使う製品は高すぎるが、中小の会社でも導入しやすい製品」を打ち出しているという。3Dアニメーションが絡む作品を開発したい会社も数多く、その需要に合わせた模様だ。こうした出展から、多様な顧客に合わせて価格帯や品質のグラデーションが生まれていることも窺えた。

    ▲NOITOMのブースでは、中小企業向けの価格帯にあるモーションキャプチャから、安価で簡易なものまで実演が行われていた

    多様な業種に利用されるゲームエンジンや3DCGツール

    今やUnityやUnreal Engineはゲーム開発だけではなく、数多くの業種が採用しはじめている。映像・CG制作展においても、様々な展示がみられた。

    ▲Epic GamesのUnreal Engineブース

    株式会社サードウェーブのブースでは、Unreal Engineを利用した自社製品のアプリケーションなどを展示。

    例えば同社が運営するパソコンショップ・ドスパラのゲーミングPCブランド「GALLERIA」コーナーでは、ユーザーがGALLERIAのマシンを部屋に置く場合のシミュレーションをしやすいよう、Unreal EngineでGALLERIAを3DCGで再現し、部屋に配置した3D空間を展示していた。他にもサードウェーブの製品はCADデータなども利用し、360°ビューアなどで展示するなど、デジタル上で製品チェックできるようにしている。

    ▲サードウェーブのブースでは、同社が運営するドスパラのPCをUnreal Engineで表現したものも

    マンション業界にもUnreal Engineの採用事例がみられた。CG工房ではマンションの内観や外観をUnreal Engine 5で再現することで、デジタル上で顧客にチェックしてもらえるしくみを構築している。主に様々な物件を3ds Maxで再現し、Unreal Engineで仕上げ、アプリ化するプロセスでデジタルの外観の内観を完成させているそうだ。

    ▲CG工房ブースでの、Unreal Engineで制作されたマンションの内観の様子

    かつてマンション業界は物件のモデルを実際の模型を制作し、顧客に確認してもらうものだった。しかし今回のようなデジタル化が進んだ背景にはいくつか原因があるという。

    ひとつは新型コロナウィルスの流行だった。これまでのように直接訪れての確認が難しくなったことなどが理由となり、デジタル化が進むことになった。もうひとつは現在のSDGsのながれである。模型は廃棄コストがかかるため、そうしたコストが発生しないデジタルの需要がより増すことになった。

    マンションにとどまらず、製品紹介をデジタルで行う形式は数多くの企業で広がっている。株式会社2055では動画や写真の制作のほか、3DCGによる製品紹介を行う点が興味深かった。同社はカメラや重機類の製品を3ds MaxやCinema 4Dによって3DCGモデル化し、PRなどに使用している。

    ▲株式会社2055のブース

    こうした3DCGモデルを活用した製品のPRやブランディングを行う企業として、他にもnewtraceのブースが近い事業を行なっていることをアピールしていた。ところが、同社のブランディング事業をよく見ると異質なものがあった。Roblox内でのプロモーションである。

    Robloxとはユーザーがゲームを開発し、他プレイヤーと共有できるゲーミングプラットフォームである。本サービスは欧米圏やアジア圏にて大きな広がりを見せており、1日におよそ6,000万人以上のユーザーがプレイしているという。

    こうした人気からか、RobloxではZ世代をターゲットにファッションブランドのGUCCIやNIKEなどがブランディングに進出している。newtraceも3DCG制作技術を活かし、同サービスにてブランディング事業に関わっているとのことだ。

    ▲newtraceブースでは、3DCGによる多様なブランディング事例が紹介された

    他にもnewtraceは人気バトルロワイヤルゲーム『Fortnite』でもブランディング事業を開始しているという。つまり各企業が今後のデジタル領域におけるPRやブランディングにおいて、ゲームが影響力ある媒体だと認めているわけである。言い換えれば現在メタバースが大きなトピックスになっているが、中でもゲーム領域が最も人気のメタバース空間になっていると言えるだろう。

    このように、映像・CG制作展では多様な業種によるCG制作の用途や、ゲームエンジンの活用などがわかるものとなった。また、各企業がデジタル領域でのプロダクト制作などを加速させたのは、時代の流れはもちろんだがやはり新型コロナウィルス流行の影響が大きいということだろう。今後もデジタル領域が様々な業種で広がっていく未来を感じさせるイベントとなった。

    TEXT&PHOTO_葛西 祝 / Hajime Kasai
    EDIT_小村仁美 / Hitomi Komura(CGWORLD)