クリエイターがノートPCを選ぶ際に意見が分かれがちなのが、パフォーマンスとポータビリティのどちらに重きを置くかだろう。できるだけ高いレベルで両立させたいものの、物理的な制約や予算との兼ね合いがつきまとう。

そうしたなか、GIGABYTEから要注目のクリエイターノートPC「AERO X16」シリーズが登場した。AMD Ryzen AI 300シリーズプロセッサとNVIDIA GeForce RTX 50 Series Laptop GPUsを搭載した本機は、AI時代のクリエイター向けノートPCである。CG・VFXワークでも高いパフォーマンスを発揮しながらも重量は1.9kg、最薄幅は1.67mmという本機の実力を、VFXアーティスト きむらえいじゅん氏に試してもらった。

記事の目次
    きむらえいじゅん
    VFXアーティスト/映像作家

    日常のワンシーンに、CG・VFXを組み合わせたギミック感あふれるショート動画に定評がある。商業制作と並行して、自身のSNSでもオリジナル作品を投稿しながら映像表現を模索中。

    X個人サイト

    日常のリアリズムが魅力のVFXは、こうして作られる。

    まずは、きむらえいじゅん氏に創り手としての近況を聞いてみた。

    ——CGWORLDのインタビューにご協力いただくのは、3年以上ぶりですね。

    きむらえいじゅん氏(以下、きむら):
    そうですね。こうした取材を受けること自体がひさしぶりです。PCレビューなども僕より詳しいクリエイターさんがたくさんいらっしゃいますし、仕事が忙しいときだとご依頼いただいてもお断りすることもあったので。今回はタイミングが良かったので、お引き受けしました。

    ——きむらさんのように個人でCGやVFXを武器に、CMやドラマだけでなく、SNSショート動画でも積極的に活動されているクリエイターさんの取り組みはわれわれとしても気になっているので嬉しいです。 

    きむら:
    ありがとうございます。実は少し前までは僕自身が露出するのは控えていました。なんというか僕が出てくるのはあまり需要がないんじゃないかと思ってしまって……。

    ですが、親父に「お声をかけてもらったときに、自分ができそうだと思ったことならやった方がいい」と言われたこともあって、最近はまた考えが変わり始めたところでした(笑)

    ——素敵なお父様ですねえ。今年はどのような活動をされていたのですか?

    きむら:
    仕事では、Netflix『イカゲーム』シーズン3や、TVアニメ『ウィッチウォッチ』のプロモーション用ショート動画を制作させてもらいました。

    東京タワーのメインデッキでイカゲームの参加者が大縄跳びをしていたり、実在する建造物が魔法の力で変形したり増えたりするというものですが、それぞれ実在する場所を撮影し、ボリュメトリックビデオなどを合成して作りました。

    TVアニメ『ウィッチウォッチ』SNSプロモーション動画

    ——きむらさんの作品は、日常感が絶妙ですよね。撮影もVFXも独学ですか?

    きむら:
    完全に独学ですね。元々、趣味でSNS動画を撮り始めたことが今につながっています。

    ——まさに「好きこそものの上手なれ」かと。

    きむら:
    いやー、どうですかねえ。強いて言えば、日常のワンシーンかつ、短尺なのが自分の作り方にマッチしているのかもしれません。盛りすぎていないと言うか、コンパクトと言うか。僕がつくるVFXは、大作映画のそれとは3DCGのボリュームやVFXワークの複雑さが全然ちがうはず。

    僕は基本的に一人で制作しているので、作品づくり全体のどこにどのくらいリソースを割くかを考える必要があります。
    どこにこだわるか、どこに時間をかけるか、というのはクリエイターそれぞれだと思いますが、僕は制作内容そのものはコンパクトにして、実写の映像となじませることにリソースを多めに配分しています。

    ——なるほど。その意味では、実写から始められたことで自然とリアルな見た目の感覚を身につかれたのかもしれませんね。

    きむら:
    そうですねえ……。リアルな見た目の追求という意味で言うと違和感の見極めは大事にしています。

    ただ、先ほどの通りリソースも有限なので、「ここは目をつぶろう」と、「これはさすがにおかしいから直さないと気持ち悪いぞ」の間を行ったり来たりしている感じですね。

    ——お仕事(案件)のオファーは、どんな感じで来ることが多いですか?

    きむら:
    大きくは「企画から考えてください」と丸ごとおまかせいただく場合と、「こういうものがやりたいです」というお題をいただいてそれをどうやって実現させるかという2パターンですね。

    ただどちらの場合もほぼほぼ自己完結でつくるので、制作スタイルとしてはどちらかというと個人作家のイラストレーターさんに近いのかもしれません。

    CG・VFXワークに最適な軽量ハイスペックの実力

    ——今回はGIGABYTEの新しいクリエイターノートPC「AERO X16」を試していただきました。まずは第一印象を教えてください。

    きむら:
    薄さと軽さに感心しました! ゲーミングノートって、パワーがある分、ゴツくて重たい印象があったのですが、最薄部は16.7mm、重量も1.9kgというのは驚きです。

    僕はノートPCに持ち運びのしやすさを求めているので、この軽さは良いですね。

    評価機の「ルナーホワイト」というシルバー的なカラーリングも気に入りました。黒だと汚れやすいし、白だとキズが目立ちやすいから。

    GIGABYTE AERO X16 Copilot+ PC

    商品の詳細はこちら。

    www.gigabyte.com/jp/Laptop/GIGABYTE-AERO-X16-EG61H
    評価機の主要スペック
    型番

    GIGABYTE AERO X16 1WH93JPC64DP

    OS

    Windows 11 Pro (GIGABYTE recommends Windows 11 Pro for business.)

    CPU

    AMD Ryzen™ AI 7 350 プロセッサー(50 TOPS)

    GPU(グラフィックス)

    NVIDIA® GeForce RTX™ 5070 Laptop GPU(8GB GDDR7、ブーストクロック 最大 Graphics Power 85W 798 AI TOPS)

    ストレージ

    1TB M.2 PCIe Gen4 SSD(PCIe Gen4x4)

    RAM(メモリー)

    DDR5-5600 16GB*2 合計32GB(空きスロット 無し)※最大64GB

    ——普段はどのようなPCを使われていますか?

    きむら:
    デスクトップ環境で腰を据えて作り込むスタイルなのでスペック重視のデスクトップPCと、撮影時や外出時に持って行くノートPCとしてMacBook Pro M4 Max(14インチ)を使っています。

    ——MacBook Proを選ばれた理由は?

    きむら:
    案件でMacとデータのやり取りすることが多いのでmacOS環境も持っておきたいなと。あとは、バッテリー駆動時間と持ち運びのしやすさですかね。

    ですが今回AERO X16を使ってみて、もしCG・VFX作業をノートPCでやるなら16インチの方が良い気がしました。AERO X16は、ベゼルがスリムなので実際の画面の大きさよりもコンパクトな印象です。

    あとは、冷却性能もしっかりしているなと思いました。底面のメッシュ構造とかは、GIGABYTEのゲーミング関連のノウハウが活かされているんでしょうね。

    AERO X16は、上面と底面に大型吸気口を設けた「3D VortXエアチャンネリング機構」を採用(側面の4方向から排気)。さらに12Vパワーの強化ファンを2基内蔵することで、超薄型でありながら優れた熱効率のエアフローを実現している

    パフォーマンス検証<1>After Effects

    ——今回の検証内容を具体的に教えてください。

    きむら:
    先日Xに投稿した『キットカット用小型冷凍ケース』(※冒頭に載せたポスト)というオリジナル作品のデータを使って、よく行う処理をいくつか試してみました。

    僕がメインで使っているAfter EffectsとCinema 4Dのどちらもプレビューが滑らかで感心しました。普段使っているデスクトップPCには、NVIDIA GeForce RTX 4090を搭載していますが、AERO X16に搭載されたNVIDIA GeForce RTX 5070 Laptop GPUはそれと同じくらい軽快でした。

    ノートPCでこれほどのハイパフォーマンスを出せるのは驚きです。泊まりで撮影とかに出かけることもあるので、AERO X16があれば普段の感覚で作業できそう。

    AERO X16上でのAfter Effectsのリアルタイムプレビューの様子をキャプチャした動画。20近くのレイヤーで構成された4Kサイズのコンポジションだが、再生もスクラブが滑らかである

    きむら:
    After Effectsのパフォーマンスはメモリ容量にも大きく依存するので、メモリを増設すればさらに快適になると思いました。

    ——今回の評価機に搭載されたメモリはデフォルトの32GBですが、オプションで64GBに増やすことができますよ。

    きむら:
    After Effects作業で使うなら、増設した方が良いかもしれない。いったんキャッシュを取れば、32GBでもキャプチャした動画ぐらい滑らかに再生してくれますけどね。

    パフォーマンス検証<2>EmberGen

    きむら:
    爆発や煙の表現で愛用しているEmberGenも試してみました。流体シミュレーションをGPU処理で行うツールになりますが、問題なく作業できる印象です。

    EmberGenの魅力はシミュレーションとレンダリング結果をリアルタイムで再生してくれることなので、こちらもAERO X16に搭載されたGeForce RTX™ 5070 Laptop GPUが存分にパワーを発揮してくれました。

    GPUを100%使っているときは冷却ファンもフル回転していましたが、作業に支障を来すレベルではありませんでした。

    ちなみに水などの液体表現が生成できるLiquiGenも試しましたが、EmberGenと同じくらい快適でした。

    AERO X16上にて、EmberGenの煙エフェクトのリアルタイムプレビューをキャプチャした動画。再生中に表示サイズやアングルを変えて、極端にコマ落ちすることはなかった

    パフォーマンス検証<3>Topaz Video

    きむら:
    AI世代のマシンということで、Topaz Videoのアップスケール機能で試してみました。

    対象によっては歪んでしまったりすることもありますが、今回はフルHDの素材を4Kへと綺麗にアップスケーリングできました。

    僕はAIでイチから何かを生成するということはやっていませんが、こうしたアップスケールとかデノイズ、フレーム補間などにTopaz Videoは便利なので、AERO X16が高性能GPUを搭載しているメリットは大きいと思います。

    AERO X16上での、Topaz Videoのアップスケール機能(フルHD→4K)のリアルタイム処理の様子をキャプチャした動画

    ゲーミング性能がクリエイティブワークにも確かなメリットをもたらす

    ——限られた期間で様々な検証をしていただきありがとうございます! 最後に今回のレビューの総括をお願いします。

    きむら:
    AERO X16は、すごく良いマシンだと思いました。

    薄型で軽量ということが、僕がノートPCに求める一番重要なポイントをおさえているし、普段行なっている感覚でCG・VFX作業が行えるのが魅力的です。

    先ほどもお話した通り、ディスプレイサイズが16型のWQXGA(2,560×1,600)なところも良いですね。最近のCG・VFXソフトのUIはかなり細かいので。

    あとこれはゲーミング性能も高いAERO X16ならではのポイントだと思いますが、リフレッシュレートが165Hzと高くて応答速度も3msなのは体感としてもかなりスムーズで、長時間使用時の細かいストレスが抑えられている気がします。

    僕はゲームが趣味なので、AERO X16で『サイバーパンク2077』とかもプレイしてみたかったです(笑)

    ノートPCの魅力は買ってすぐに使えることでもあるので、1台のマシンで環境を整えたいという人にもオススメだと思います。

    AERO X16は、4面スリムベゼルを採用することで画面占有率(画面と本体の比率)92%を実現している。WQXGAかつ16:10のアスペクト比であることに加え、 sRGB100%表示(ノングレア)なのでAfter EffectsやCinema 4DなどのDCCツールも快適に操作できる

    お問い合わせ先

    日本ギガバイト株式会社

    www.gigabyte.com/jp



    商品の詳細はこちら。

    www.gigabyte.com/jp/Laptop/GIGABYTE-AERO-X16-EG61H

    INTERVIEW & EDIT_NUMAKURA Arihito