バケツを被って暮らすことが義務づけられた街を舞台に、安定した「生活」を守るためバケツを被り続ける男の姿を描いた短編アニメーション『Bucket Man』。2026年度「アヌシー国際アニメーション映画祭」パースペクティブ部門に選出されるなど、国内外のアニメフェスティバルで受賞・入選が相次ぐ要注目作だ。

監督を務めたのは、CGアニメーターとして活動するのと並行して絵本やイラストなどの個人創作を行なっている、ヤカタカナタ氏。自身初のオリジナルアニメーション監督作となった『Bucket Man』では、社会の中で揺れる個人の姿を、寓話的な世界とエンターテインメント性の両立によって描き出した。その創作の舞台裏を、ヤカタ氏に聞いた。

記事の目次
    『Bucket Man』Trailer
    Director / Screenplay / Character Design / Background Art / Animation: YAKATA Kanata
    Modeling / Setup: HOSODA Ruka
    Character Rigging: IMAKI Yuta
    Rig Support: MURATA Tessai
    Animation Support: ISHIKAWA Rinnosuke
    Character Voice: IHARA Masataka
    English Advisor: TSUKADA Saya
    Music: "NY Girl" by Dani Jalali (Licensed via Artlist)

    「絵を描いて生きるには?」総合的な判断からCGの道へ

    ——ヤカタさんは幼少期から絵を描かれていたそうですね。きっかけは、どんなことでしたか?

    『Bucket Man』監督 ヤカタカナタ(以下、ヤカタ):
    幼稚園くらいの頃から、自然と描くようになっていました。ただ、絵を描くのが楽しいというよりも、体験を忘れないように書き留めておく、というきっかけで描くことが多かったです。

    だから、好きなキャラクターの模写から絵が好きになる、というよくある入り方ではなくて、自分が見た風景を描くことから始めたと思います。描いた絵を周りの大人が褒めてくれるうちに、ライフワークになっていた感じです。

    ヤカタタカナ/YAKATA Kanata
    1997年生まれ、愛知県出身。名古屋のCG専門学校を卒業後、映像制作会社に勤務する傍ら、絵本をはじめとする個人作品をコンスタントに発表している。2026年2月に完成した初めてのオリジナルアニメーション監督作『Bucket Man』が国内外のアニメフェスティバルで受賞、入選に輝いた。
    <『Bucket Man』主な賞歴>
    アヌシー国際アニメーション映画祭2026「パースペクティブ」部門選出
    第1回「日中国際アニメ映画祭」グランプリ
    第24回「インディーズアニメフェスタ」審査員賞受賞
    ゆうばり国際ファンタスティック映画祭2026「アニメ・AI部門」選出
    <絵本作品の主な賞歴>
    第9回「MOE絵本創作グランプリ」 『僕は昔、怪獣だった』佳作
    第10回「MOE絵本創作グランプリ」『想像上の祖父』最終選考選出
    yakatakanata.myportfolio.com

    ——現在、本職はCGアニメーターとして活動されています。CGとの出会いは、いつ頃、どのような感じでしたか?

    ヤカタ:
    実は、高校生の頃はまったく別の職業を目指していたんです。だけど、「自分はやっぱり、アートに関わる仕事がしたいんだ」と気づいたときに、色々な道を検討しました。美大に進むことも考えたし、絵を描く仕事って具体的にどんなものがあるのか調べたりもしました。

    結論として、自分がいきなり絵描きを目指しても、親や周りの人たちの理解と協力を得るのは難しいだろう、と。であれば、「会社員として働けて、将来性のある業界・職種は?」と考えたときにCGが思い浮かびました。

    ——なるほど。かなりロジカルというか、現実的な選択肢としての3DCGだったんですね。

    ヤカタ:
    そうですね。あとは、新海 誠さんのようにCG(デジタル技法)を使えば1人でも作品をつくれるんじゃないか、と思えたことも大きかったですね。そうした要素を総合的に判断して、僕の地元・名古屋にあるCG専門学校に進みました。

    ——総合的に判断して落としどころを見つける、というのはプロの現場でも求められる考え方ですよね。

    ヤカタ:
    普段からひとつの思いで突き進むというよりは、総合的に見て最善策を見出す、という考え方をしがちかもしれません。

    ——『Bucket Man』が初めてのオリジナル作品とのことですが、以前からオリジナル絵本の創作にも取り組まれていらっしゃいますよね? 先にアニメーションではなく、絵本からつくり始めた理由を教えてください。

    ヤカタ:
    2020年頃から絵本をつくるようになりました。絵本を選んだのは、働きながらつくれると思ったからです。

    本当は最初から映像をやりたかったのですが、シナリオを考えてアセットを用意するだけでもひと苦労です。1年に1本を確実に発表していくのはしんどいだろうなと考えていました。

    その点、絵本なら制作コストの面でも毎年1冊というペースで発表しやすいはず。それが大きかったですね。

    漫画や音楽などいろいろな媒体がある中で、自分が1番向いているだろうと思えたのも絵本でした。子どもの頃をふり返っても、文章だけ、あるいは絵だけで評価されることはあまりなくて、絵と文章がそろったときに賞をいただくなどの成功体験があったので、絵本が自分に向いているのかもしれないと思って始めました。

    ▲ ヤカタ氏が子どもの頃に描いたもの。『Bucket Man』の主人公でもある「バケツを被った男」は、昔から何度も描いてきたキャラクターだという(後述)。「この人物は、自分の中で俳優のように扱っていて、物語によって優しい人物だったり、臆病な人物だったり、時には冷酷なキャラクターになったりします」

    ——ヤカタさんはイラストも描かれるそうですが、お話を聞いていると物語を伝えることに軸足があるように感じます。

    ヤカタ:
    どちらかというと、絵を描く行為自体はそれほど好きではないかもしれません。

    いや、決して嫌いではないのですが。画力を褒められた経験が今まであまりなくて、それは自分のコンプレックスでもあります(苦笑)

    本当に絵が上手い人や技術が高い人に、真っ向から勝負しても勝てない。それならば、独自のアプローチを取り入れることで強みにできるのではないか……といったことは昔から考えてきたかもしれません。

    絵と文章、あるいは絵と物語がそろったときに、自分らしさを最大限に発揮できる。その手応えが、絵本から映像へと創作の軸を広げていく土台になっています。

    ——絵本づくりは、今でも継続されていますか?

    ヤカタ:
    はい。絵本は、身近で小さな出来事や個人的な感覚をテーマにすることが多いです。2年に1冊くらいのペースでライフワークとして続けてきました。

    その積み重ねの中で自分の作家性が固まってきた実感があって、初めてアニメーションに挑む上での基盤にもなりました。個人的な感覚から出発して、それを他者に伝わるかたちに仕上げていく、という創作のプロセス自体は、絵本でも映像でも変わらないと考えています。

    ▲ 絵本『僕は昔、怪獣だった』(2020)

    無名だからこそ、できるだけ多くの人に観てもらいたかった

    ——このタイミングで『Bucket Man』の制作にチャレンジした経緯をお聞かせください。

    ヤカタ:
    きっかけは、同僚のモデラー 細田がオリジナル短編アニメーション『えんぷてぃ~ポコポコききいっぱつ~』を2025年に制作したことでした。

    自分もアニメーターとして参加していたのですが、「これで自分の作品をつくろうと思ったときに手伝ってもらえるぞ」と(笑)。そこで、彼のほかにも何人かに声をかけたところ、みんな快く引き受けてくれて、条件が整いました。自分の中で筋道が見えたので、やってみようと。

    ——本作の「バケツを被ることが義務化された街」という設定は、どのように思いつかれたのですか?

    ヤカタ:
    大きくは2つあります。1つは、主人公の「バケツを被った男」というキャラクターです。これは幼少期から自分が何度も描いてきたキャラクターで、メイキング動画の冒頭に出てくる絵は、小学校高学年から中学生の頃に描いたものです。

    自分はこの男を「俳優」として扱っていて、作る物語によって優しい人物になったり、卑怯な人物になったりします。このバケツの男を主役にした話を昔からつくっていて、今回はその中から映像映えしそうな物語を選び、今の自分の知識で脚色していきました。

    もう1つは、ナチス政権下時代の牧師マルティン・ニーメラー/Martin Niemöllerの有名な詩です。彼は反ナチス運動の象徴的な人物として知られていますが、その『First they came...(彼らが最初に来たとき……)』と呼ばれる詞にある「他者への迫害を人ごとだと思って黙認し続けた結果、最終的に自分が標的になった時には誰も声を上げてくれなかった」というテーマをアニメーションでわかりやすく表現したいと思ったんです。

    あとは、個人的に最近の排外主義的な主張や自国第一主義的な風潮に居心地の悪さを感じていたことも大きかったですね。

    The Making of "Bucketman" Short ver.

    ——「バケツを被る」という設定には、どのような意味を込めたのでしょうか。

    ヤカタ:
    意識的にも無意識的にも、「自分以外に無関心な状態」の象徴として描いています。ただ、「自分に関係ないと思っているけれど、本当は無関心でいられることではない」という点も、本作の中で描きたかったことです。

    ——そうした社会的なメッセージ性を持ちながらも、『Bucket Man』にはテンポの良さやユーモアも感じるところが魅力だと思いました。

    ヤカタ:
    そのバランスは今回、特に配慮した部分です。『Bucket Man』はジャンルとしてはアートフィルムかもしれませんが、そうしたジャンルに馴染みのある方には見応えのあるものにしつつも、より多くの人に気軽に楽しんでもらえるようにしよう、と。

    そこでビデオコンテの段階で、関心事の異なる友人たちに観てもらい、率直な感想を聞かせてもらいました。ほかにも、『Bucket Man』の世界観に対してどのような印象を抱かれる傾向にあるのかリサーチしたりもしました。

    最終的には「ビジュアルと題材は当初のアイデアのまま、映像のテンポとラストの大きな展開によってエンターテインメント性を担保する」という方針でつくることに決めました。

    ——アートとエンタメの中間をねらったわけですね。

    ヤカタ:
    そうですね。アートとエンタメという2つの軸があるとしたら、本当にその真ん中あたりをねらったつもりでした。

    面白かったのは、人によって感想が分かれたことです。『Bucket Man』を観て「すごくアートだ」と言ってくれる人もいれば、逆に「エンターテインメントだと思った」と言う人もいます。

    制作当初のねらい通りになっているのかは自分でもわからないのですが、アートかエンタメか、人によって感想が分かれるということは、ある程度は達成できたのではないかと思っています。

    そもそも自分はまだ無名の人間なので、「どうすれば多くの人に観てもらえるか」という意識は常に持ち続けていました。アートフィルムはもちろん、アニメーションとは無縁の人が観ても、「よくわからなかったけど、思わず最後まで観てしまった」というような、そんな作品を目指していました。

    1年で完成させる。明確な期限を設けることのメリット

    ——『Bucket Man』のチーム編成について教えてください。

    ヤカタ:
    モデリングとセットアップを細田に、キャラクターリギングを今木に、リグサポートを村田にお願いしました。3人とも同僚です。メインスタッフとして参加してくれた今木と細田にはモデリングとリギングに集中してもらい、それ以外の作業を自分が担当する、という分担でした。

    アニメーションは基本的に自分で付けていますが、終盤で間に合わないパートが出そうだったため、学生時代からの友人で現在はフリーランスのCGアニメーターとして活躍している石川にヘルプで入ってもらいました。

    ——同僚のお三方は業務の合間に協力してくれたそうですね。

    ヤカタ:
    はい。3人には業務時間外を使って作業をお願いすることになるので、なるべく負担にならない進め方を意識しました。

    あとは会社に許可を得て、普段の業務に使用しているMayaやPCなどの作業環境を、そのまま『Bucket Man』の制作にも使わせていただきました。

    そのおかげで、自分と同僚3人も個別に環境を整備する必要なく、仕事終わりにそのまま作業に入りやすくなりました。

    ——勤務先は、スタッフの方々の個人創作にとても協力的ですね。

    ヤカタ:
    ありがたいです。先ほど細田のオリジナル作品の話をしましたが、個人クリエイターとしても活動している人が多いですね。お互いに良い刺激をもらっています。

    ——Maya以外のメインツールを教えてください。

    ヤカタ:
    Maya以外には、Photoshop、Substance 3D Painter、After Effects(以下、AE)、そして制作管理にFlow Production Tracking(以下、Flow PT)を利用しました。あとは、サブキャラクターのアニメーションには、MOHOも使いました。

    ——全体的なスケジュールを教えてください。

    ヤカタ:
    企画当初から、1年で完成させることは決めていました。

    自主制作は、こだわればいつまでも続けられてしまうので、先に期限を決めて、その条件下でベストを尽くそうと考えました。

    実際には、2025年2月から制作を始めて、今年の2月中旬に完成しました。物語のベース自体は以前から考えていたものだったので、プリプロ期間を短縮できたことが大きかったと思います。

    ——1年間の作業配分はどのようなものでしたか。

    ヤカタ:
    1番時間がかかったのは背景制作です。背景美術は僕が手描きしたものをAEでレイアウトしています。枚数が多かったので、2〜3ヶ月はずっと、家に帰ったら絵の具で描いている、という状態でした。

    その作業と並行して、細田に主人公のモデリングを進めてもらいました。自分としては、土日にアナログの作業を行い、平日はPCでできる作業を行う、という進め方でした。

    ▲ カナタ氏がアナログで描いた背景美術の例(メイキング動画より)  

    ——手描きの背景が立体的にレイアウトされているところも本作の魅力ですね。

    ヤカタ:
    ありがとうございます。1枚絵として描くのではなく、建物単位などパーツごとに分けて描きました。

    例えば主人公の勤務先の門であれば、要素を分けて描いたものをPCに読み込んで、Photoshop上に配置して、その上からレタッチして一体感を高めます。そのデータをAEに読み込んで奥行きを加えました。

    背景素材は同じものを繰り返し配置することで情報量を増やしつつ、少しずつルックを調整することで密度の濃い画になるように工夫しました。タッチは、絵本を描くときの画風をそのまま活かしています。

    ▲ 背景レイアウトの例(メイキング動画より)

    ——ビデオコンテの段階では、どんなことを意識されましたか?

    ヤカタ:
    ビデオコンテをつくる際は、完成イメージをできるだけ具体化するために音やセリフも入れるようにしました。

    この段階でエンタメ性の柱となるテンポ感を詰めておくことで、本制作で迷わずに済むように心がけました。

    ——テンポ感という意味では、約7分という本編の長さはどのように決めたのでしょうか?

    ヤカタ:
    長すぎず短すぎず、というベストのバランスを探りました。ビデオコンテの段階で、削ったり足したりを重ねた結果、この長さになった、というのが正直なところです。

    ▲ アニマティクス(ビデオコンテ)と完成アニメーションの比較(メイキング動画より)

    ——キャラクターのルックデヴについてお聞かせください。

    ヤカタ:
    何か特別なことをしたわけではありません。レンダーパスとしては、ベースカラーとリムライトを個別に書き出して、それをAEでコンポジットするというシンプルな作り方でした。

    テクスチャについては、自分の手描きタッチを再現するために、PhotoshopやSubstance 3D Painterを使ってアナログ筆で描いた印象を残すように工夫しました。

    ▲ 主人公の髪の毛テクスチャリング(メイキング動画より)

    ——劇中に登場する文字や言葉のデザインが独特で印象に残りました。

    ヤカタ:
    劇中の文字は、自分の作品でよく使う、手癖で書いたものです。厳密に言語として体系立てたものではなく、今回はフィーリングで作った部分が大きいです。

    ただし、適当過ぎても良くないと思ったので、一度リスト化して、そこから文字を選んで並べ替える、という作り方はしています。

    ——キャラクターが発する言葉が実在しない言語であることも気になりました。

    ヤカタ:
    日本語や英語など具体的な言語にすると、セリフ自体や口調など、発したときの微妙なニュアンスが気になってしまい作業工数が増えてしまうと思いました。

    そこで独自の(架空の)言葉にして、喜怒哀楽などベーシックな感情に注力することで効率化しています。結果的に、言語に依存しないユニバーサルな作品になったのではないかと思っています。

    キャラクターの声は、声優さんを探すことができるオンラインサービスを通じて、いはらまさたかさんにお願いしました。日本語の台本とビデオコンテをお渡しして、各キャラクターを演じ分けていただきました。ただし、声録りに間に合わなかった一部のサブキャラクターについては、自分でも声を当てています。

    ▲ 主人公のフェイシャルリグ(メイキング動画より)

    現実のモチーフを使わずに、キャラクターを描き分ける

    ——キャラクターデザインについて教えてください。

    ヤカタ:
    キャラクターデザインで意識していたのは、実在する動物をモチーフにしないことでした。具体的な動物にすると、その動物が持つ意味をつい重ねたくなってしまうので。

    主人公以外のキャラクターについては、マジョリティにはないマイノリティの要素を何らかのかたちで込めるようにしました。

    ▲ 劇中に登場するキャラクターたち。マイノリティの象徴として、各キャラごとに首が長い等の独自のアレンジが施された

    ——重要なキャラクターである異星人の一家は、他のキャラクターと違ってロボットのようなデザインですね。

    ヤカタ:
    実はあのキャラクターは、細田のオリジナル作品の主人公モデルを『Bucket Man』向けにアレンジしたものです。

    当初は採用する予定はありませんでしたが、ビデオコンテを詰めていく中で『Bucket Man』の世界観に合っていると思い、細田の承諾を得て採用させてもらいました。オリジナルデザインをそのまま使うのではなく、本作に合うように色味やディテールを調整しています。

    自分が普段描く絵柄にはない、可愛らしい雰囲気が、「異星人」という設定にマッチしていることに気づいて、そこからどんどんアイデアが広がっていきました。作品に深みを加えることができたと思います。

    ▲ 重要な役回りを担う異星人の子ども

    ——アニメーションについては、3Dと2Dをどのように使い分けましたか?

    ヤカタ:
    主人公と、先ほどお話しした異星人の子ども、そしてラストに登場する巨大なキャラクターを3DCGアニメーションで。それ以外のキャラクターは、全てMOHOによる2Dアニメーションで作成しました。

    全て3Dキャラで作成するのは1年という制作期間では難しいと感じたため、主要キャラ以外はMOHOでカットアウトアニメーションでつくることにしました。結果的に、その描き分けがどんな人が観ても意図が伝わることに寄与したと思います。



    カメラワークについては、背景が2D素材をベースにしているので、なるべく立体的な動きを付けないようにしました。また意図的に同じ動き・同じテンポをくり返すことで、テンポ感を高めつつ工数を抑える、といった工夫もしています。

    ▲ サブキャラクターは、MOHOによるカットアウトアニメーションで動きが付けられた(メイキング動画より)

    自分にキャップをかけない。アワードに挑戦したことで視野が広がった

    ——本作は、2026年度「アヌシー国際アニメーション映画祭」パースペクティブ部門に選出されました。この部門は、社会・政治・パーソナルなテーマなど「世界の見え方(視点)」にフォーカスした新しい作家・作品を紹介する公式セレクションです。改めて、今の率直な心境を教えてください。

    ヤカタ:
    アヌシーに自分の作品が選ばれるとは、本当に思ってもいませんでした。

    自分の作風や描きたいストーリーは、日本では目新しく見えるかもしれないけれど、数多くのアートフィルムが発表されている海外では、それほど目新しくないのではないか、と思っていたので。

    それが、独自性や新たな視点を重視するパースペクティブ部門に選出されて、自信にもつながりました。主催者サイドからメールが届いたときは、思わず目を疑いました(笑)

    つくったからには、アヌシーにもダメ元で出そうという軽い気持ちで応募したのですが、実行して良かったと本当に思います。

    ——国内外の様々なアワードに応募されていますが、当初から計画されていましたか?

    ヤカタ:
    どの映画祭に応募するのか具体的に決めていたわけではありません。ですが、つくったからには、対外的な評価を受ける場にも出そうとは考えていました。

    海外のアワードでは、まだ結果待ちのものもありますし、ありがたいことに「うちの映画祭にも出しませんか?」というご連絡をいただくこともあります。素直に嬉しいですね。

    SNSでの発信は得意な方ではありませんが、海外アワードに出したことで、視野が広がった気がします。自分でキャップをかけないことの大切さを実感しました。

    ——最後に今後の展望をお聞かせください。

    ヤカタ:
    技術的なことでは、MOHOに手応えを感じたので、次作ではMOHOを全面的に使ってみようかと考えています。

    実は、次回作の準備も進めています。Instagramに投稿した「自販機の中にいる人」が、そのテストカットになります。

    『Bucket Man』は「社会(他者)から個人へ」というアプローチでしたが、自分が本来題材にしてきた「小さな視点」をテーマにする予定です。

    ▲ 次回作『しょぼい神様(A Powerless God)』は、ヤカタ氏の幼少期の体験を下に、「誰かに見ていてほしかった」という気持ちや、子供の頃にだけ存在していた、架空の存在との別れについて描いた物語になるという
    yakatakanata.myportfolio.com/next-project

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