1988年のOVA版から約40年続く人気シリーズの最新作『機動警察パトレイバー EZY』が、劇場3部作として公開中だ。本作の舞台は2030年代の日本。これまでの世界観を踏襲しつつ、新たなキャラクターたちでリブートされた作品だ。

2026年5月15日(金)に『機動警察パトレイバー EZY』の『File 1』が公開され、続く8月14日(金)には『File 2』の公開が控えている。今回は『File 1』の内容を中心に、全3回にわたりメイキングを解説していく。

記事の目次

    ※本記事は月刊「CGWORLD + digital video」vol. 336(2026年8月号)からの転載となります。

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    Information

    『機動警察パトレイバー EZY File 2』
    2026年8月14日(金)公開

    監督:出渕 裕/ 脚本・シリーズ構成:伊藤和典/キャラクター原案:ゆうきまさみ/アニメーション制作:J.C.STAFF/ プロデュース:GENCO
    ezy.patlabor.tokyo
    © HEADGEAR / 機動警察パトレイバー EZY製作委員会

    内部構造を考慮したリギングと
    めり込みを回避したケレン味あるカット制作

    本作の主役機ともいえるイングラム・プラスは、メカニカルな魅力と映像的な見映えを両立させる工夫が詰まっている。森泉氏はその魅力について、「見どころが詰まったデザインです。脚のカバーの中にリボルバーが入っているという設定がありますが、手を伸ばして掴む構造が複雑でリアル。コクピットも開いて人間が乗り降りでき、内側もつくり込んでいます。中身がかなり詰まったデザインなんです」と語る。

    リグはメカデザイナーのこだわりに合わせ、2軸が連動して動くなど、軸の位置や動き方まで細かく考慮して構築された。

    左より、CG制作・佐野世奈氏、リギング・久保圭之氏、キャラクターモデリング・松重宏美氏、レイアウト・大前登志樹氏、CG監督・森泉仁智氏(以上、GAZEN)
    www.gazen.co.jp

    しかし、設定通りに動かすとポージングの際に違和感が生じてしまうこともある。そのため、カットごとに細かく調整できる柔軟なリグが設定された。また、銃を両手で構える際に腕が胸にめり込むような場面でも、無理に関節を曲げず、胸部を部分的に変形させる後付けコントローラをその都度、埋め込んで対処している。

    最終的には見え方とポージングを最優先し、動きの中で破綻を見せないような、良い意味で“ごまかす” アプローチで画づくりがされた。

    イングラム・プラスの内部構造の設定

    • ▲メカニカルデザイン・渭原敏明氏によるイングラム・プラスの内部構造設定。CG制作の経験をもつ同氏だからこそ、実際の立体可動を想定した詳細なデザインがなされている
    • ▲イングラム・プラスの腹部周りのデザイン。特長はシリンダ状のアクチュエータが多いことで、腰や首に数多く設定されている
    • ▲肩の構造。複数の軸をもつヒンジが複雑に連動し、スライドしながら回転する機構だ。ただし、軸間が離れているため、ポージング時に違和感を覚える場合もあり、カットごとに細かな調整が施されている
    • ▲出渕監督が初期に描いた手首の設定。手首は三軸分離構成となっており、アクチュエータの駆動によって動くリアルな構造になっている

    リグによる動き

    ▲胴体、および腰まわりのリグ。久保氏は「メカデザイナーが丁寧にギミックを考えているので、プラモデルをつくる感覚でした」と制作時をふり返る。設定をプラモデルの設計図のように捉え、不明点は都度デザイナーに確認しながら、設定通りの構造をそのままリグへ落とし込んだ。結果として、前後だけでなく斜め方向にも柔軟に可動するリグが設定された
    ▲肩が動く様子。こちらも胴体と同様に、設定画に準拠した可動を実現している。単純な軸回転ではなく、ヒンジ機構を用いてスライドしながら回転するという設定通りの複雑な動きを、リグによって正確に再現しているのがわかる

    めり込み回避のためのリグ

    • ▲イングラム・プラスのめり込み回避リグ。バウンディングボックス状に配置されたコントローラでボディを部分的に変形させ、干渉を防ぐ。制作過程で上がる要望に合わせて、後から回避策を都度、追加しやすい柔軟なリグ構造になっている
    • ▲零式用のめり込み回避リグ。なお、イングラム・プラスと比較して回避用の設定箇所が比較的少なめなのは、劇中での登場カット数が相対的に少ないためだ
    ▲イングラム・プラスの肩回りのアップ。肩や胸、首回りはポージングの際にパーツのめり込みが特に発生しやすい箇所であるため、細かく変形の対策が採れるように入念な設定が施されている

    実際のカットでのめり込み回避

    • ▲アトラクション用レイバーを押さえ込むイングラム・プラス。肩の下にあるグレーのパーツが、そのまま動かすと胴体にめり込んでしまっている
    • ▲干渉を避けるため、胸の幅を部分的に狭くしてめり込みを回避した状態。関節や肩そのものを変形させるのではなく、「当たる側の部分」を変形させるアプローチを採っている。これにより、アニメーションの印象を大きく変えずにめり込みを調整できるメリットがある。

      本作ではこうした細かな調整がカットごとに行われている。それでも変形のみで吸収しきれない場合は、カメラアングルやポージング自体を変更するといった柔軟な回避策を採ることもあるという
    • ▲こちらをふり返る零式。顔が襟部分にめり込んでいる
    • ▲襟部分を変形させることで、めり込みを回避している

    No.3へ続く。

    CGWORLD 2026年8月号 vol.336

    特集:『Mori Calliope MV』
    判型:A4ワイド
    総ページ数:112
    発売日:2026年7月10日
    価格:1,540 円(税込)

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    TEXT_石井勇夫 / Isao Ishii(ねぎデ)
    PHOTO_弘田 充 / Mitsuru Hirota
    EDIT_海老原朱里 / Akari Ebihara(CGWORLD)、山田桃子 / Momoko Yamada