駅ナカや商業施設で存在感を増すカプセルトイ。コロナ禍に実店舗と独自流通網を広げてきた。そんな中、高いアート性と技術力でアート雑貨ファンの人気を集めているのがケンエレファントだ。年間、100種類以上のカプセルトイを発売する中から、今回は「宮下サトシ アートピースコレクション」&「ザリガニボーイズ フィギュアコレクション」のデジタル造形によるメイキングを紹介する。

記事の目次

    ※本記事は月刊「CGWORLD + digital video」vol. 338(2026年10月号)からの転載となります。

    ノベルティからアート雑貨へ
    「世界を面白くする」する仕掛け人

    ケンエレファントの創業は2000年2月。代表の石山健三氏が立ち上げた会社だ。キャンペーンノベルティ(企業の販促グッズ)の企画製造からスタートし、精巧なフィギュアをカプセルトイの世界にもち込んで独自の地位を確立。現在は東京・神保町に本社を構えるアート雑貨メーカーだ。

    ケンエレファント

    「世界を面白くする」を経営理念に掲げ、カプセルトイ、ソフビ人形、アップサイクル活動、出版事業などの分野で活動。なお、ケンエレファントのカプセルトイショップ「KENELE STAND」は現在、秋葉原、新橋駅などで15店舗を展開。
    kenelestore.jp

    「エネルギーの塊」「まるで水戸黄門」とスタッフに評される石山代表の理念は、「世界を面白くすること」「作家と共に、コレクターの心に刺さり、残るものをつくること」。とはいえ社内はトップダウン形式ではなく、石山代表に惹き寄せられて集まったこだわりの強いスタッフたちの感性が連動し、自然と「ケンエレファントらしいプロダクト」が生まれていくのだという。

    現在は、カプセルトイを担うフィギュア事業部と、アート性を追求したソフビ人形や雑貨などを担当するアート事業部が2本柱の組織となっている。

    写真左より、原型師・N.I氏・開発造形上長・小嶋喜徳氏・原型師・林 諒多氏、原型師・福増竜馬氏、原型師・本広英二氏(以上、ケンエレファント フィギュア事業部)

    中でもフィギュア事業部は、カプセルトイの企画・開発・造形を一手に担う、いわばケンエレファントの心臓部だ。現在は、企画、開発、造形、デザインの計17名が所属。その守備範囲は広く、本物そっくりの精巧なミニチュアから、今回取り上げるような作家と組んだフィギュア、さらには自社開発のオリジナルキャラクターまで、幅広く手がけている。

    企画からデジタル原型、彩色見本まで、今回紹介するのは、全てこのフィギュア事業部の仕事である。主な使用ソフトはRhinocerosとZBrushで、作品によるものの、ほとんどの場合、両ソフトを併用してミニチュアを制作しているという。なお、同社の特徴として、原型師はデジタル造形だけではなく、塗料やエアブラシなどを使いミニチュアの着彩まで自ら行う。

    本稿ではそんなケンエレファントの高い企画力を紹介しつつ、フィギュア事業部が手がけたカプセルトイ「宮下サトシ アートピースコレクション」と「ザリガニボーイズ フィギュアコレクション」の2作品について、メイキングを解説していく。

    高い企画力とチャレンジ精神がアート雑貨ファンの心を掴む

    全社員が仕掛け人になれる多彩な挑戦の数々

    年間で100作品以上、累計1,000を超える作品を展開してきたフィギュア事業部の開発力。それを支えるのがケンエレファント名物、通称「青ファイル」制度だ。役職を問わず全社員が、A4用紙1枚の企画書に名前を書き、企画担当のデスクにある青い共有バインダーへ挟んでおく。

    企画チームは2週間に1度これを開き、製品化すべきアイデアを審査する。カメラ好きのスタッフがもち込んだ二眼レフカメラのミニチュアなど、スタッフの「個人的な好き」がそのまま形になったマニアックな名作も多い。ただし、審査を通過してから店頭に並ぶまでは約1年。想像以上に長い道のりだ。

    そして、注目してほしいのが、ケンエレファント製品の8~9割は「会社側から作家へ声をかける」かたちでスタートしているという事実である。SNSのDMなどからの売り込みによる製品化はほぼ皆無。スタッフが足繁く通うワンダーフェスティバルやデザインフェスタで「これだ!」という作家を見つけても、その場では声をかけず、まず企画書をつくって青ファイルの審査を通し、社内の企画会議でゴーサインが出てから「ぜひ一緒に」と作家にアタックする。つまり、ケンエレファントから作品をトイ化したいクリエイターへの最短ルートは、SNSでの売り込みではなくイベント出展。スタッフの鋭い感性に、作品で直接「刺さる」ことなのだ。

    全社員が企画を提案できる「青ファイル」

    実際の青ファイル。挟まれているのはNo.2の記事で紹介する、宮下サトシ氏のミニチュア制作のきっかけになった、実際にスタッフから提出された企画書。

    オリジナルキャラクターやブランドの展開

    ケンエレファントは作家とのコラボレーションだけではなく、オリジナルキャラクターの展開にも挑戦している。それが2023年誕生の「ぽっこし」。ぬいぐるみ作家・むにゅ氏と一緒に生み出した自社キャラクターで、ぬいぐるみのようなふわふわの起毛仕上げ(フロッキー加工)のフィギュアが人気を呼び、絵本やグッズにも展開を広げている。

    さらに、同社のもう一翼を担うアート事業部は、作家性を前面に押し出したソフビ人形や、廃材を新たに生まれ変わらせるアップサイクルブランド「NEWSED」などを展開。こうした多彩な企画がアート雑貨ファンの高い支持を集める要因になっている。

    ケンエレファントのオリジナルキャラクター「ぽっこし」

    オリジナルキャラクター「ぽっこし」。画像はカプセルトイ「ぽっこし フィギュアコレクション Vol.1」から「Vol.4」までのもの。カプセルトイ以外にグッズや絵本も出版された、同社期待のオリジナルキャラクターたちだ

    ソフビ人形やアップサイクルを担うアート事業部

    カプセルトイではないが、アート事業部による人気商品の一例を紹介。

    ▲ソフビ人形「中空ジャポニズム」シリーズ。この一例だけでも同社の個性の強さが感じられる
    ▲アップサイクルブランド「NEWSED」の商品で、アクリルの端材を使用してつくられたアクリルタグプレート。端材を使っているため同じものは2つとなく、全て1点ものの柄だ
    ▲東京・丸の内にあるギャラリー併設ショップ「VINYL(ビニール)」。多種多様な作家ソフビに出会える

    No.2に続く。

    CGWORLD 2026年10月号 vol.338

    特集:アニメ『攻殻機動隊 THE GHOST IN THE SHELL』
    判型:A4ワイド
    総ページ数:118
    発売日:2026年9月10日
    価格:1,540 円(税込)

    詳細・ご購入はこちら

    TEXT_坂本ますく / Masuku Sakamoto
    PHOTO_弘田 充 / Mitsuru Hirota
    EDIT_海老原朱里 / Akari Ebihara(CGWORLD)、山田桃子 / Momoko Yamada