2024年2月3日(土)と4日(日)に2日間にわたり、札幌市の大型商業施設サッポロファクトリーのイベントスペースにて、小・中学生を対象とした3DCGの体験会「作って 動いて 楽しく体験 3DCGの世界にとびこもう!」が開催された。体験参加者総数は300名を超え、盛況を博したイベントの模様をレポートしよう。

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    親子で参加できる3DCG体験会

    ガラス天井で大きな空間の広がるアトリウムの一角で行われた「楽しく体験 3DCGの世界にとびこもう!」。同イベントの開催当日は、会場からほど近い大通公園で「さっぽろ雪まつり」が行われていたこともあり、観光客の姿も多く、賑わいを見せていた。

    同イベントは一般財団法人さっぽろ産業振興財団によって開催されたもので、参加対象は小・中学校に通う子供とその保護者である。3DCGを体験してもらうと共に、継続的に3DCGを学ぶ契機にしたいという思いから、子供の教育のかじ取りをする立場にある保護者にも3DCGの魅力や理解を深めてもらうことを目的に保護者も同時に参加してもらう形式をとったそうだ。

    イベント会場には、3DCG制作を体験できる、以下の4つのブースが用意された。

    VRoid Studioを使用したオリジナルCGキャラクター制作体験
    Blenderを使用したモデリング体験
    ③モーションキャプチャ体験
    ④ライブモデリング鑑賞

    このうち①②は事前予約が必要で、③は飛び込み参加が可能。④はライブモデリング用のモニタが常設され、イベント期間中にいつでも自由に見学することができた。

    VRoid StudioでオリジナルCGキャラクターづくり

    最初に紹介するブースは、4ブースの中でも最も多くの参加者が体験した「VRoid Studioを使用したオリジナルCGキャラクター制作体験」ブース。講師の指導のもと、約30分間、実際にPCに触れながらオリジナルアバターの制作を体験することができた。小学校低学年から中学生まで、幅広い年齢の子供達が保護者とともに参加する姿が多く見られた。中には友達同士でやって来た、という飛び込みの参加者もいた。

    最初に講師が質問した「MinecraftやRoblox、フォートナイトをやったことがある人」という質問には、多くの子供たちの手が上がった。「アバターとは、そうしたゲームに登場するキャラクターのことです」という説明からワークショップは始まり、まずは講師がVRoid Studioの基本的な操作法を紹介した。その後、参加者によるアバターづくりが始まると、皆、画面を真剣に覗きながら制作に励んでいた。ゲームプレイの経験をある程度もっている子供たちが多かったこともあり、髪の色を変えたり衣装を変えたりと、スムーズに制作を楽しんでいる様子だった。

    その後はポーズをつけたり衣装のテクスチャを編集したりと、さらにカスタマイズを行いながら、思い思いのキャラクターを制作していった。つくり上げたモデルデータの保存はできなかったのだが、スマホによる画面の撮影は可能だったので、参加者はそれを思い出として家にもち帰ったようだ。

    終了後、感想を子供達に尋ねてみたところ「キャラクターが動く姿が楽しかった」「もう少しやってみたい」と嬉しそうに答えてくれた。また、ブースの様子を外から眺めていた外国人観光客の女の子が「参加したい」とスタッフに尋ねてくることも。そんな光景を目にして、子供たちの中で3DCGへの興味の輪が広がっていくのが実感できた。

    Blenderを使ったスカルプティングも

    VRoid Studioによるアバター制作からもう少し踏み込んで3DCG制作が行われたのが、「Blenderを使用したモデリング体験」ブースだ。VRoid Studioを用いたアバター体験から引き続きの参加者も多く、取材時には小学校中学年から中学生の子供達が多く参加していた

    取材した回では「3DCGは初体験」という人がほとんどだったが、一方でScratchなどのプログラム作業を経験している参加者は多く、「プログラムをやった経験から3DCGへの興味を抱いた」という意見を聞くことができた。

    体験時間はこちらも約30分間、PCを動かしながら講師の指導を受けるものであった。まず講師がマウスの使い方や画面の見方など、Blenderの基本操作を解説。その後はツールの使い方が紹介され、実際に手を動かしながらスカルプトモードで画面に映る球形モデルの形を変えていく。制作中には、隣に座る父親に制作したモデルを見せている男児や、逆に「どうやるの?」とPCの扱い方を尋ねている母親の姿も見られた。

    最後は頂点ペイントに切り替え、色付けを体験。こちらも完成したモデルをスマホで撮影し、終了となった。感想を伺ったところ、「楽しかった、これからも続けてみたい」「画像が点でできていることを知った」と言った嬉しい言葉を多く聞くことができた。

    モーションキャプチャ体験&ライブモデリング鑑賞も

    イベント会場では、モーションキャプチャ体験とライブモデリング鑑賞も行われた。

    会場前方のステージで行われた「モーションキャプチャ体験」では、モバイルモーションキャプチャ機材のmocopiを使い、モニタの中の3DCGキャラクターを動かすことができた。体験者は両手・両足・腰・頭にセンサーを装着し、スマホでキャリブレーション。手をふったり踊るなどしながら、Unreal Engineで開発された体操コンテンツを楽しんだ。

    またライブモデリング鑑賞では、カヤックポラリスのモデラーがモデリングを実演。制作工程が披露され、道行く人たちも興味深そうに、プロのモデリングテクニックを眺めていた。

    体験ブース各講師のコメント

    ■VRoid Studio体験ブース(武田紗季氏)

    私が担当したVRoid Studioの体験ブースでは、あまり講師の説明が多くなく基本的には参加者に手を動かしてやってもらう内容でした。みなさん集中して取り組まれていて、楽しんでやってくれてるんだというのが伝わってきて純粋に楽しんでいただけていたのかと思いました。参加者のなかには「家に帰ってもやりたい。VRoid Studioをダウンロードしてみたい」という方もいました。

    ■Blender体験ブース(渡邉花絵氏)

    ご家族で参加して体験できるのがすごく良いと思いました。また、体験ブースではうまくBlenderを操作できないお子さんもいらっしゃいましたが、やってみよう!という精神でチャレンジしてくれていました。一方で、ガンガン操作して進められちゃう子もいて、もっとCGをやってみたいという気持ちが伝わってきました。

    ■VRoid Studio体験ブース、Blender体験ブース(Lead U 梅原政司氏)

    今回のワークショップは、子供たちやそのご家族の方にいっぱい手を動かしてもらおうというコンセプトだったので、あまりこちらが説明ばかりせず、沢山手を動かしてもらうようにしました。お子さんもですが、ご両親もすごい真剣な顔でやってくれていました。その表情を見ていると教えていた我々の側も元気になりましたね。

    ■モーションキャプチャ体験ブース(ボーンデジタル 村田智洋氏)

    来てくれた子供はとても楽しんでくれていましたね。また、ご家族の方に対しては「こういう風にモーションキャプチャってとるんだ」とか「どういう機材使っているのか」という理解を深めてもらう意味では参加していただけてとてもよかったと感じています。

    ■ライブモデリング鑑賞ブース(カヤックポラリス 斉藤平祐氏)

    回によりますが、思いのほか人が集まってて驚きました。小さいお子さんが多くて、弊社スタッフがライブでモデリングして、つくったものが動かしている回があったのですが、とても楽しんでくれていたのが印象的でした。

    2日間で合計339名が参加

    雪深い季節の札幌で行われたにもかかわらず、2日間で合計339名(子供214名、保護者125名)が参加し、盛況を博した「作って 動いて 楽しく体験 3DCGの世界にとびこもう!」。

    終了後に書かれたアンケートには、「初めての体験で新感覚だった。今後も機会があればやってみたい」、「オリジナルのキャラクターをつくることができ、もう一度やってみたくなった」といった声が寄せられた。「継続的に3DCGをつくってみたいと思いますか?」というアンケートの問いには92%の参加者が「つくってみたい」という返答があった。

    参加した多くの子供達にとって「3DCGへの興味の入り口」となった。そんな手応えを得た結果に、今後の3DCG業界の明るい未来が感じられる2日間となった。

    TEXT_山田桃子 / Momoko Yamada
    EDIT_小倉理世 / Riki Ogura(shushu-kikaku
    PHOTO_大沼洋平 / Youhei Ohnuma