2024年2月11日(日)に新宿NSビルにて、ゲーム業界の開発職志望学生に向けた就活イベントである「ゲームキャリアEXPO」が開催された。
ゲーム会社とゲーム業界の開発職志望学生のマッチングイベント
本イベントはゲーム業界で活躍する様々な企業の現役クリエイターや採用担当者が集まり、ゲーム業界の開発職への就職を希望する学生に対し、会社説明からゲーム業界での働き方、就職活動時のアドバイスまで、様々な面から企業の生の声を届けることを目的に開催されている。
主催はエンタメ・ゲームなどコンテンツ業界への就職をサポートする株式会社ルイジア。主な参加企業はアトラス、コジマプロダクション、コロプラ、シフォン、スクウェア・エニックス、ステアシステム、セガ、サイバーコネクトツー、トイロジック、メテオライズ、ファンコーポレーションといった業界をリードするゲーム企業が名を連ねる。
開催内容は「企業ブースエリア」での、各企業の社員が学生と直接対面して企業説明会や作品講評を行うものと、「セミナーエリア」での、参加企業のクリエイターや採用担当者が登壇して学生たちにパネルトークをおこなうものの二種に大別される。
本記事では各企業のクリエイターが登壇し、各職種への理解を深める講演をおこなう「セミナーエリア」にて開催されたパネルトークから、特に三つのセッションを抜粋してレポートする。
【コジマプロダクション】会社紹介&スペシャル座談会
12:00から、コジマプロダクションによる「会社紹介&スペシャル座談会」が開催された。登壇したのは人事・採用担当坂本奈名子氏、プロデューサー松花賢和氏、プロデューサー片岡力氏、プログラマー鄭直氏(いずれもコジマプロダクション)の四名だ。
セミナーでは、まず同社の採用情報が学生たちに対して説明された。コジマプロダクションではゲーム開発職種を中心に幅広く様々な職種を採用しており、中途採用と同様に新卒採用の時期も特に設けていないという。
続いて、登壇者たちによるパネルトークが開始された。まずは、登壇者たちがどのような経緯でコジマプロダクションで働き始めたのかの経緯が語られた。
松花氏はもともと小島秀夫監督がコナミ在籍時に手掛けたゲームタイトル『スナッチャー』に感銘を受けて以来、小島監督と仕事がしたくて前職のコナミに入社したそうだ。やがて、独立した小島監督が世界に対して飛びたっていくところを追いかけたいという思いから、現在のコジマプロダクションに入社することを決めたという。
片岡氏は将来的なキャリアとして世界のトップメーカーで働きたいという思いがあって、コジマプロダクションに入社したそうだ。
鄭氏はもともと小島監督のファンであり、『メタルギアソリッド4』のメイキング映像を見て「こんな風にゲームって作れるんだ」と感心していたそうだ。やがてプログラマーとして大阪で働いていた時、コジマプロダクションの中途採用に地方移住者向けのリモート枠があると知って応募し、見事採用されたという。
入社後の印象について、片岡氏は「オフィスは宇宙船というコンセプトで設計されていて、広い作業スペースがそれぞれの個人に与えられています。作業環境面でのストレスを感じることはありません。それにカフェテリアなど仕事以外のリラックススペースも充実しています。」と同社の社風や魅力について語ってくれた。
また鄭氏は「自分から提案することで開発環境を良くしていくことができる会社です。また、私は子育てに忙しいのですが、勤怠周りも柔軟に対応してくれて助かっています」と、働きやすさについて語ってくれた。
最後は学生との質疑応答のコーナーが設けられた。
「入社してからの研修期間はありますか」という質問に対しては、「入社してすぐにタスクを投げるということはなく、弊社のゲームの作り方を教えた上で働いてもらいます。ただ、現状はどちらかと言えばOJTに特化しているところがあり、チームの中に入ってタスクを学んでもらう形になっています」と松花氏が回答した。
「我々コジマプロダクションは歴史に名を残すスタジオになろうというビジョンを掲げています。今日興味を持ってくれたと、一緒に仕事ができる日を夢見ながらお待ちしています」と松花氏が学生たちに声を掛け、セッションを終えた。
ゲーム業界研究パネルトーク
13:30からは、バンダイナムコスタジオ平野響子氏、アトラス奥野雄士氏、スクウェア・エニックス利根川優一氏による、これからゲーム業界への就職を志望する学生に向けて、各社の採用担当者が「ゲーム業界とは」「ゲーム業界の仕事とは」を語る、「ゲーム業界研究パネルトーク」が開催された。
まず「ゲーム業界の仕事の魅力を教えて!」というテーマについて、それぞれの登壇者が語ってくれた。
「たとえば企画職ですと、ゲームのコンセプト作りから携わってアイデアを反映していけるので、大きなやりがいがあると思います。プログラマーなら、プランナーの仕様書をもとにプログラムを組んでいくのが仕事ですが、ゲーム業界の場合は仕様書通りに作るだけでなく、自分でこうしたほうがいいんじゃないかと提案していくことも求められますし、それがプログラマーの仕事としてのやりがいにも繋がっていると思います。
ゲームはインタラクティブ性が一番の魅力で、そこが映像や映画とは違うところですね。それに、今は個人でもゲーム開発をしてSteamなどで販売することができる時代なので、ゲーム会社でゲーム作りをするということがどういうことなのかを考えてもらいたいです。ゲーム会社に入れば、それぞれのセクションにプロフェッショナルが集結していますし、学生の皆さんが思っている以上に任される範囲も広くて、やりたいことにチャレンジさせてくれる会社は多いと思います。そういう点もやりがいがあると思います」(利根川氏)
「総合職ということで言えば、一般的な企業にある機能は同じくあると思います。その上でゲーム業界での特徴としては、自社IPを使って魅力を伝えていく仕事が多くあることですね」(奥野氏)
続いては「どんな人にゲーム業界にきてほしい?」というテーマだ。
「まずゲーム好きというのがマストのポイントですね。あとはゲーム以外のエンタメにも触れておいて欲しいです」と利根川氏が言うと、「ただし、ゲームが好きなだけではなく、その上で、仕事としてゲームを作るということに意識をフォーカスしてくださる方がいてくれるといいですね。今はインディーでもいくらでも作れる時代なので、なぜゲーム会社に入社したいのか、というところを考えてもらいたい」と奥野氏が補足をする。
続いてのテーマ議題は「学生時代にしておいてほしいことは?」だ。
「好きなもののことを、なぜ好きなんだろうとか、いまいちなものはなぜだろうとか、その理由を分解して話せるようになるといい」(奥野氏)
「デザイナーで入ってくる人の半分くらいは大小問わず個人で仕事をしたことがある方ということが増えてきたので、なるべく多くの外部の人と接する経験を積んで欲しい。」(平野氏)
最後に、学生との質疑応答の時間が設けられた。
「書類選考でここを見ているというポイントを知りたい」という質問に対して、「クリエイター職だと、課題やポートフォリオのクオリティを重視しています」と奥野氏が回答した。
また利根川氏は「志望動機はちゃんと書いたほうがいいですね。特に大手企業だとどこの会社も同じようなことを書いてしまいがちですが、できるだけ自分の言葉で表現できるようにしたほうがいいです」と答えた。
「ゲームは様々な職種があって、それぞれの職種の中でもさらに様々な仕事内容があります。今のうちからネットで調べて、必要な情報を取捨選択していくことをやってもらうといいと思います」と利根川氏が語り、セッションは終了した。
ゲーム業界で働く女性パネルトーク
16:30から「ゲーム業界で働く女性パネルトーク」として、ファンコーポレーション代表取締役・石本則子氏、ファンコーポレーション第4研究開発室室長代理・長田江里加氏、サイバーコネクトツー 業務部人事課/マネージャー・百武みずほ氏、セガ ゲームコンテンツ&サービス事業本部第1事業部第1開発3部・萩原麻依子氏らによるパネルトークが開催された。
まずは冒頭にモデレーターを担当する、元セガでドリームキャストのプロデューサーをしていた石本氏が本日の趣旨の紹介し、その後各登壇者の自己紹介があった。
和やかな雰囲気の中、まずはそれぞれの女性が「いまどのような業務を担当しているか」がテーマとなった。
「もともとは総務として入社して、会社の知名度が上がるにつれて取材応対などをするようになり、広報的な仕事が増えていきました。現在は人事として、主に採用担当をしています」(百武氏)
「最初に入ったスマイルビットという会社で2D周りの仕事をしていて、セガに入社後、『龍が如く』でキャラクターデザイナーをつとめました。去年の4月からはマネージャーになったので、部内のメンバーのサポートや育成をしています」(萩原氏)
「データイーストにデザイナーとして入社して、セガ、ソニーを経てフリーランスのデザイナーとして活動しています。アミューズメントからアプリゲームまで、幅広いジャンルを手掛けています」(長田氏)といった具合に、それぞれの女性が様々な部署で業務を担当していることが語られた。
「ゲーム業界は男性が多いというイメージがあるが、実際はどうなのか」というテーマについては、「七割男性、三割女性ですが、そもそも応募者は男性が多いので、自然な比率だと思います」(百武氏)
「私が入社した頃は男性9割、女性1割といった比率でしたが、現在は5:5くらいの比率になっています」(萩原氏)と、ゲーム業界で働く女性がかつてと比べると大きく増えたことが語られた。また「女性であることで働きづらいことは?」というテーマについては、「仕事の上で働きづらさを感じたことはありません。技術があれば男女関係なく抜擢されます」(萩原氏)
「周囲の女性スタッフにも聞いてみましたが、特にないですという回答でした」(百武氏)といったように、女性であるからといって働きづらい思いをしたことはないという回答が出揃った。
「女性特有の体調不良や出産、育児について会社からサポートはあるか」というテーマでは、
「弊社は体調不良の場合、万全に整えてから出社してくださいという方針です。体調不良と言えば、細かな理由までは聞かれません」(百武氏)
「現在は私が出産したときにはなかった制度も増えており、出産育児についてのサポートは手厚いです。子が3歳までの短時間勤務における一部給与補償など独自の制度も揃えています。」(萩原氏)
「大きな会社のような制度はありませんが、それぞれの個人の状況に合わせたサポートが受けられます」(長田氏)といったように、各企業でしっかりとサポート体制が設けられているところが多いようだ。
「今後、ゲーム業界を目指す女性に対してのメッセージを」というテーマでは、
「ゲーム業界はまだまだこれから成長する産業なので、夢があります。女性だから家庭を選ばなきゃいけない、仕事を選ばなきゃいけない、という考えはもたずに、欲張っていいとこどりをしていくようにしていただければ、自分の望む生き方、働き方が実現できると思います」(百武氏)
「女性のキャリアの話をするとどうしても育児とか苦労話が出てきますが、ライフイベントでキャリアに大きく影響することは、自分の力ではどうにもならないことが多いです。まだ来てもいない未来に不安になるより、エンタメ業界は人を楽しませる業界なので、まず自分が楽しむことが大切だと思います。その上で、自分の力を伸ばしながら働いていってください」(萩原氏)
「私たちがこの業界に入った頃は、育児と仕事の両立は難しかったです。でも今はそういう時代でもないですから、やりたいことがあるのであれば、何か一つを犠牲にするのではなく、それら全てを手に入れるぞという意気込みで臨んでいただきたいですね」(長田氏)
といったように、ゲーム業界を目指す女子学生たちに対して、ゲーム業界で働く女性としての立場からアドバイスがおくられた。最後に女性の参加学生からの質問に対して各氏からの力強い励ましの回答があり、セッションが締めくくられた。
TEXT_オムライス駆
PHOTO_大沼洋平