戦車同士による模擬戦競技「戦車道」をテーマに、女子高生チームが奮闘する姿を描いた『ガルパン』こと、『ガールズ&パンツァー』シリーズの最新作『ガールズ&パンツァー 最終章』第4話が昨年秋に劇場上映され、大好評を博している。

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    Unreal Engine活用の幅を履帯跡や走行煙などにも広げ、迫力の戦車戦を表現!

    『ガールズ&パンツァー 最終章』第4話
    10月6日(金)より、上映中
    監督:水島 努/脚本:吉田玲子/アニメーション制作:アクタス/製作:ガールズ&パンツァー 最終章 製作委員会/配給:ショウゲート
    girls-und-panzer-finale.jp
    ©GIRLS und PANZER Projekt © GIRLS und PANZER Film Projekt © GIRLS und PANZER Finale Projekt

    『ガールズ&パンツァー 最終章』第4話の3DCG制作は前作に続いてアクタス内の「STUDIOカチューシャ」が担当し、3DCGI監督は同社の柳野啓一郎氏が務めている。本作からは、Unreal Engine(以下、UE)を積極的に活用したことにより、全1,100カットほどのうち、約800カットに3DCGが活用され、さらにそのうち600カットほどでUEを使用。3DCGとUEによるカットが大きく増えている。

    左より、テクニカルディレクター・足立 真氏、3DCGI副監督・髙橋慎一郎氏、システムエンジニア・濱崎宏之氏、3DCGI監督・柳野啓一郎氏、CGIデザイナー・剣持真人氏、CGプロデューサー・花木海斗氏、プロダクションマネージャー・遠藤 司氏(以上、株式会社アクタス

    特にUEについては、前作では背景を中心に使われていたところ、本作では戦車の履帯跡や走行煙、着弾跡、吹雪、砂嵐といった表現にも活用され、使用範囲を大幅に拡大している。ただ、その影響で、『最終章』第3話までのように柳野氏がひとりで全カットのプリビズとベース設計をつくるというフローを採るのが難しくなった。そのため、本作ではプリビズの途中工程やアセット・システム開発の分業化を進めている。

    技術開発は3ds MaxとUEの良い点・悪い点を検証して、効率を重視しながら組み替えて開発。本作ではUEの使用範囲が増えたが、基本的にツールにはこだわっておらず、その時々でベストなツールを選定して使っていきたいと考えているという。「ひとつひとつをきちんとやって、説得力のある画をつくること。それがこの作品で一番大事なことです」と語る柳野氏。

    本作を観ると、細やかな戦車の動きやシチュエーション、画づくりの技術など、熟考を重ねた上での表現だということが伝わってくる。「現在は続編の制作中で、こちらもこだわってつくっています。公開は少し先ですが、必ず満足してもらえるものにしますのでご期待ください」(柳野氏)。今回は戦車とUEの活用を中心に解説していく。

    作業負荷の増加に応える制作ワークフローの刷新

    本作では3DCGとUEのカットが大幅に増えたことから、これまで柳野氏に集中していた作業を分散する必要が出てきた。そこで、今回のプリビズ制作は柳野氏が複雑なシークエンスのプリビズとコンテ翻案を行い、約半数は水島 努監督のラフコンテを基に各スタッフでシーンデータをつくり、それを柳野氏がブラッシュアップしてFIXさせるというフローに変更。柳野氏はこのワークフローに手応えを感じているという。水島監督のやりたいことを汲み取り、柳野氏の演出内容をしっかりと反映させ、各スタッフの演技の余地を残す。それが柳野氏が目指しているところだったからだ。

    本作の見どころのひとつ、雪山を滑り落ちながらのダイナミックな戦車戦では、柳野氏の指示の下、3DCGI副監督の髙橋慎一郎氏が、魅せ場となるBT-42の長回しのカットなどを担当した。「自由にやってよいと言われて、悩みながらつくりました。自分が面白いと思うものや、こうしたいという気持ちを柳野さんにぶつけて、リアクションをもらいながらつくっていった、思い出深いカットです」(髙橋氏)。今回のワークフローはスタッフの成長にも大きく貢献したようだ。

    絵コンテにアイデアを盛り込みプリビズに反映する

    本作のプリビズは絵コンテをベースに制作。この過程で、戦車の出るカットに対して緊張感や説得力、戦略性、テンポ、ギャグなどを上手く表現できるか考え、ブラッシュアップを行なっていった。カメラワークはもちろん、演技、殺陣、戦車の位置関係やロケーションの変更、戦車から出ているキャラクターの演技まで、必要に応じて修正。戦車が登場するほとんどのカットには、何かしらアイデアが追加してあり、図のカットでは、ダム穴のメンテナンススロープから滑り降りて飛び込むような演出が加えられている。

    3DCGのラフに加筆してつくった絵コンテ
    3ds Maxによるプリビズ

    『ガルパン』専用のデータコンバートツール「MAXtoUE4」

    「MAXtoUE4」は『ガルパン』制作に合わせた3ds MaxとUE間のデータコンバートツール。過去作でも使われているが、ヘッダーを作成してバージョン情報の視認性を向上したり、「地面」「砲弾」「白旗」「貼り込みマスク」素材に専用の書き出しタブを作成したりと、細かなバージョンアップを経て使い勝手が向上している。

    情報共有と遊び心を両立した社内Wiki

    本作のような大規模プロジェクトでは、広範囲にわたる知識の共有が効率化の観点から欠かせない。アクタスでは柳野氏が先頭に立って自社サーバ内にWikiを開設。ワークフローの説明から始まり、全体の作業における細かい手順やTIPS、アニメーションや制作ツールの基礎知識、感染症対策まで、扱う情報は多岐にわたる。知識の共有が目的だが、堅苦しい印象では目的が果たせないため、なるべくカジュアルなつくりにし、書き込みやすいように配慮した。また、トップページには本編画像や戦車の資料、ファンアートなどがランダムに表示され、ページ下端にはCGや戦車、大洗、『ガルパン』、PC操作の豆知識などがランダムで表示される。

    • Wikiのトップページ。ファンアートやアクセスランキングなど遊び心が嬉しい
    • 画像や動画の埋め込みにも対応

    (2)に続く。

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    TEXT_石井勇夫/Isao Ishii(ねぎデ
    EDIT_海老原朱里Akari Ebihara(CGWORLD)、山田桃子/Momoko Yamada