2024年1月に劇場公開された『機動戦士ガンダムSEED FREEDOM』。数あるガンダムシリーズ劇場公開作品の中でNo.1の興行収入を達成し、ファンの間でも盛り上がりを見せている。
今回はバンダイナムコフィルムワークスのCGチームに取材。3DCGで描かれたMSや戦艦のメイキングを紹介していきたい。
モビルスーツやメカを3DCGで描く新たな『SEED』の世界の表現!
TVシリーズ終了から約20年のときを経て2024年に劇場公開を遂げた『機動戦士ガンダムSEED FREEDOM』(以下、『SEED』)。大勢のファンが劇場に詰めかけており、『SEED』の根強い人気を裏付けている。そして本作登場を待ち望んでいたのは、一般のファンだけではない。当時『SEED』に熱狂した世代からCGクリエイターとなった人物もまた多いのだ。
本作にCGモデリング メインディレクターとして参加した櫛田健介氏もそのひとり。「『SEED』は小学生の頃、友だちと学校の帰り道で主題歌を歌って楽しんでいた作品。今、こうして関わることができるとは……。本当に不思議な気分です」と、夢見心地な様子だ。
本作はその性質上3DCGとの相性が良く、総カットの65%以上がCG使用カットだ。そのうちの740カットは、モビルスーツ(以下、MS)や戦艦など、CGのみでフィニッシュしている。アニメーション メインディレクターの佐藤光裕氏はカット制作についてこうふり返る。
「TVシリーズ当時は作画で表現していたメカのケレン味の再現、それが第1目標でした。フルコマでつくったCGを2コマ(12fps)に落としたり、セルアニメと同じタイムシートをつくったりと、再現性にこだわっています。福田己津央監督とメカニカルアニメーションディレクターの重田 智さんには、ほぼ全カットの監修とチェックをしていただきました」。
用意したCGモデルは、MSが47体、戦艦が13隻、プロップモデルが11種、そして艦橋内部やコックピットのガイドモデル54種類。ディレクターを含み、7名の社内モデラーが全CGモデルを制作し、13名の社内アニメーターがCGフィニッシュカットの6割を担当。外注先の協力も得ながら、約18~20ヶ月という期間で膨大な仕事をこなした。
佐藤氏は「ファンの方に納得していただけるよう、画面づくりにも工夫を凝らしました。メカアクションに注目して観てください」と、その出来映えに胸を張る。
TV当時と同様の“重田ルック”を再現したMSモデリング
本作のメカデザインのポイントは、やはりTVシリーズ制作当時にチーフメカ作監を務めた重田氏が、本作劇場版でもメカニカルアニメーションディレクターを務めたこと。本作ではメカデザイナーの大河原邦男氏らが描いた設定画から、ケレン味のある“重田ルック”にリファインしたMSを描き出していくという作業を、CGチームがモデリングのフェーズから行なった。
櫛田氏をはじめとするCGモデリングチームは当初、『SEED』のMSは顔が小さく足元が長い、近年のガンプラのようなプロポーションと考えており、CGモデルもその方向で制作を進めていた。しかし、重田氏によるモデル監修の朱入れから、そうではないことに気づかされた。
「実際は、アオリのアングルでパースが付いているから小さく見えているだけだったんです。CGモデルとしては、フェイスやヘルメット部分をもっと大きくしないと、“らしく”ならない。重田さんの指示は、ケレン味がありながらもデザインとしては非常に理論的で、3面図にもモデル的な破綻がありませんでした。チェックバックの通りに直すとキチンと仕上がったんです。とても勉強になりました」(櫛田氏)。
ライジングフリーダムガンダムのモデル変遷
主人公のキラ・ヤマトが搭乗するMS、ライジングフリーダムガンダムのモデリング。モデル制作は段階を踏んで重田氏による修正指示を受けながら進めた。そのため、モデラースタッフは制作が進むにつれて重田氏の特徴を理解し、最終盤のアカツキなどはわずか2~3週間で仕上げられるようになったという。
CGWORLD 2024年4月号 vol.308
特集:アニメ『アイドルマスター シャイニーカラーズ』
判型:A4ワイド
総ページ数:112
発売日:2024年3月8日
価格:1,540 円(税込)
TEXT_日詰明嘉 / Akiyoshi Hizume
EDIT_海老原朱里 / Akari Ebihara(CGWORLD)、山田桃子 / Momoko Yamada