札幌市と同市に拠点を持つゲーム開発企業によるイベント「Sapporo Game Camp 2024」が、2024年10月11日(金)~13日(日)の日程で開催された。
同イベントは札幌のIT人材およびゲームクリエイターの育成、エンタメ業界の盛り上げを目的に始まり、今回で3回目の開催になる。

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    Sapporo Game Camp 2024

    開催日時:2024年10月11日(金)~13(日)
    会場:サッポロファクトリー
    https://sapporo-game-camp.com/2024/

    開催3回目でますます盛り上がる「札幌市による」ゲーム開発イベント

    本イベントでの催しは大きく4つ。
    プロのクリエイターたちと共に即席チームを結成してわずか2日でゲームをつくりあげる「Game Jam」、札幌で活躍するクリエイターたちがゲーム業界志望者に向けて経験や指南を語る「トークセッション」、実際にゲームを作りながらプログラミングを学んだり、eスポーツも体験できる「ぷよぷよ プログラミング講座& eスポーツ サッポロ タッグチームトーナメント 」、同じく小中高生が3Dキャラクターの作り方を学べる「初めてのCG講座」。

    ゲームを “つくる” ということにかなりフォーカスされたイベントだが、参加企業は業界でも錚々たる企業ばかり。『龍が如く』や『ペルソナ』でおなじみのセガから、開発として『ピクミン4』『DNF DUEL』などを手掛けるエイティング、『桃太郎電鉄ワールド』を手掛けるロケットスタジオ  など、ゲームを遊ばない人でもタイトルだけなら耳にしたことがあるはずの企業がずらりと並ぶ。

    会場を前回の札幌市産業振興センターからサッポロファクトリーへと移し、本イベントは「ゲームの札幌」にますますの盛り上がりと勢いを感じさせつつ幕を閉じた。本記事は、イベントでもメインの催しとして白熱の盛り上がりを見せた「Game Jam」の模様をレポートとしてお届けする。

    今回の会場となったサッポロファクトリー

    今回も120名以上が参加!16チームが白熱したゲームジャム

    今回のゲームジャムは1チーム約8名、全16チーム、総勢130名ものクリエイターが集結しての開催。ここには、札幌で活躍するプロのクリエイターたちも含まれ、各チームはプロのサポートを受けながらゲームを制作するというプロの現場もかくやという体制となっている。

    制作期間は2日間(およそ16時間)で、3日間(23時間)の開催だった前回に比べると縮小したようにも思えるが、その密度は前回にも負けず劣らず。2日間にわたる制作を終えたそれぞれのチームの発表前には「怒涛の2日間!」と題したスライドが踊り、壇上から投げかけられた「ゲームジャムが初めてだったという方はいますか?」「ゲームジャムがつらかったという方は?」という質問にそろそろと手を挙げる参加者も見られた。「ゲームジャムが楽しかったという方は?」「物足りないという方は?」という質問には同等かそれ以上の挙手があったのと併せて、イベントの拡大と幅広い層の参加が感じられる一幕である。

    そんな参加者たちに、与えられたテーマは「凹」。

    前回のテーマ「増殖」に比べると、些か解釈の余地があり、難解ともいえるテーマである。その上で「言葉での発音はしません」という一言を添えられた奇妙なお題に対して、16チームそれぞれのアプローチでのゲームづくりが繰り広げられ、発表が行われることとなった。

    今回参加したチームはそれぞれ、①チーム瀬川、②ホリホリ、③ウサギルティ、④国語、⑤おちきゅみーず、⑥タオ、⑦マジカルセブン、⑧トンの怪物、⑨日刊青年ミギアッパー、⑩トラブルシューター、⑪イレブンバーガー(Eleven Burger)、⑫フルーティーフレンズ、⑬13本のコード、⑭石化サンドイッチ、⑮因幡宅急便、⑯ねこ吸い 

    参加者層が多岐に渡るだけに、与えられたテーマ「凹」の解釈も様々。

    猫になって障子を凹に突き破るというものから、凹をウサギと解釈してウサギを主人公として横スクロールアクションをさせるもの、そのものずばり凹という漢字を操作してゴール地点にある凸を目指すというもの、逆に凸を操作して適切な凹とドッキングをするというものまで、多種多様なゲームが披露された。


    • ①チーム瀬川「にゃにゃんと!凹あけパンチ」
    • ②ホリホリ「掘れ!」
    • ③ウサギルティ「うさおうの犬死に」
    • ④国語「漢字の冒険」
    • ⑤おちきゅみーず「おちきゅみWARS もう一度最高の景色を!」
    • ⑥チームタオ「ぱっきん」
    • ⑦マジカルセブン「ヘコリズム!」
    • ⑧トンの怪物「GALAXY CRUSHER」
    • ⑨日刊青年ミギアッパー「ふぁ~むラビッツ」
    • ⑩トラブルシューター「Trouble Shooter」
    • ⑪イレブンバーガー(Eleven Burger)「バーガーアイランド(BURGER ISLAND)」 
    • ⑫フルーティーフレンズ「FRUIT EATER
    • ⑬13本のコード「俺はムキムキ天才型ロボットつくりんちゅを凹ませたい!!!!!~たのむぜうさぎ型ロボット~」
    • ⑭石化サンドイッチ「凸凹探検」
    • ⑮因幡宅急便「とどけろ!ハコウサギ!」
    • ⑯ねこ吸い「ねこまっしぐら」

    各チームが思い思いに制作したゲームを紹介したあとは、スタッフが担当箇所への苦労やこだわりを語り、それぞれの得意分野に基づいて活躍、あるいは不慣れな分野をこなしつつの制作が行われたことが感じられた。

    途中、シビアすぎる判定にステージ中に一度もアクションが成功しないというトラブルや、アイデア被りに苦笑する一幕などはあったものの、プレゼンが終わるたびに会場には拍手が巻き起こり、終始和やかなムードのまま16チームの発表が展開された。

    閉会の挨拶ではイベントの実行委員長である瀬川隆哉氏が登壇。
    2日間のゲーム制作を終えて疲れた様子の参加者たちに「普段のゲーム会社での仕事はここまで大変ではないので安心してもらいたい(笑)」と諭しつつも、「ゲームジャムの開始前と違ってみなさんの表情がりりしくなった気がします。成長や発見があったのではないかと思います」と労った。今回のイベントに参加していた北海道議会議員の赤根広介氏、札幌市議会議員の山口かずさ氏からも「最高でした」「おもしろかったです!」と声があがり、参加者からは次回以降の開催への期待が感じられた。瀬川氏は最後に「将来真剣にゲームクリエイターになりたい人、がんばってください」と檄を飛ばし、イベントは閉幕を迎えた。

    「ゲームといえば札幌、と言われるくらいを目指したい」

    閉会後、議員という立場でゲームジャムに参加された北海道議会議員・赤根広介氏、札幌市議会議員・山口かずさ氏の両名に、今回のイベントの印象を尋ねた。

    配属されたチームでゲーム開発に打ち込む議員両氏。写真上段一番左、山口かずさ氏。写真下段一番右、赤根広介氏。

    ――議員でゲームジャムに参加するというのは異例のことだと思うのですが、そもそもきっかけは何だったのでしょう?

    赤根氏:
    きっかけは、実行委員長の瀬川さんですね。瀬川さんから「世界でヒットする札幌発のゲームをつくりたい」という話を聞いて感銘を受けたんです。それで、まずは僕自身がゲームづくりの制作現場を知らなくてはと思い、参加させていただきました。

    山口氏:
    私もきっかけは瀬川さんなんですが……。

    ……実は、私はまったくゲームに興味がなかったんですよ。

    ただ、偶然、経済観光委員会の仕事としてセガさんの視察に伺う機会があって、そこで瀬川さんからプレゼンを受けたんです。そこで、ゲーム産業の成長率の話であったり、北海道は東京や大阪に次いでゲーム会社が多いという話であったり、知らなかったことをたくさん教えてもらううちに、ゲーム産業に夢を感じられるようになって。それで、この機会に実際に体験してみようと飛び込んだ形です。

    ーー参加されてみて、いかがでしたか?

    赤根氏:
    僕には何かゲームづくりのスキルがあるわけではないので、できることといえばみなさんの応援ぐらいだったのですが、アイデアを形にしていく過程はすごく勉強になりました。みなさん、僕とは親子ほども歳が離れていたりしたのですが、技術も持ち合わせているし、こうした人たちのものづくりの後押しをしていかないといけないなと思いましたね。また、ものづくりを体験できる機会そのものをもっと各地で設けていきたい。

    ゲームに対してプレイヤーとして接するしかできなかった僕らの世代と違って、遊ぶと同時に制作にも関与できる新しい世代が出てきたことはわかったので、環境や取り組みでなにかしてあげられないかと考えていきたいと思います。

    とにかく、すごくたくさんの可能性が感じられる場でしたね。

    山口氏:
    正直、私はみなさんの足を引っ張るのではないかと心配しながらの参加だったのですが、2日間を共にするうちに、私もみんなのがんばりに答えないと、という気持ちになってきまして。結果的には、進行や音響をやらせていただきました。みなさんがつくってくれた絵や世界観を見つつ、ああでもないこうでもないと音を模索するのはすごく大変でしたが、楽しかったですね。ほんの些細なことでも、自分の考えたこと、選んだことがゲームの中に組み込まれるだけですごく感動しました。

    その一方で、ぼんやりと捉えていた産みの苦しみ、コミュニケーションをとりながら人とものをつくることがいかに大変かというのも身に沁みましたね……。ゲームづくりにたくさんの人手とお金が必要なことはセガさんから聞いていたんですが、深く納得できました。たった2日でこれだけ大変なのに、仕事で毎日やっている人たちはどれだけ大変なんだろうと。

    でも、いまはそうした世界をもっと知りたいと思っています。
    ゲームといえば札幌と言われるくらいまでがんばりたいですね。

    閉会後の懇親会では、互いのチームが制作したゲームをプレイしながらの交流が為され、同じ時間と空間での開発を共有した仲間たちで親睦を深めた。

    札幌市が参画するゲーム開発イベントという、あまり類を見ない取り組みとして始まったSapporo Game Campだが、3回の開催を重ねて順調に参加者数も拡大、今回は議会議員までもがゲームジャムに参加するという異例のイベントとなった。

    まだ始まったばかりだが、回を重ねるごとに勢いをます「Sapporo Game Camp」。

    次回開催の際は参加されてみては。

    TEXT_稲庭淳