>   >  アセットを共有しクオリティを統一、映画『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』のチャレンジ ~SIGGRAPH 2017レポート vol.3~
アセットを共有しクオリティを統一、映画『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』のチャレンジ ~SIGGRAPH 2017レポート vol.3~

アセットを共有しクオリティを統一、映画『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』のチャレンジ ~SIGGRAPH 2017レポート vol.3~

SIGGRAPH期間中に開催されるProduction Sessionでは、ハリウッド映画のメイキングが連日披露される。今年も興味深いテーマが目白押しであったが、本稿ではその中から映画『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー: リミックス』のメイキング・セッションのレポートをお届けする。

TEXT & PHOTO_鍋 潤太郎 / Jyuntaro Nabe
EDIT_山田桃子 / Momoko Yamada

『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー:リミックス』MovieNEX 予告編

Production Sessionはハリウッド映画のメイキングを扱うため、基本的に全てのセッションにおいて、著作権保護の関係で、講演中は写真や動画の撮影がいっさい禁止されている。しかし、インターネットでは公開されていないメイキング資料などが披露されるため、貴重な情報を見聞きできることが大きな魅力のひとつと言える。

さて、このセッションの冒頭では会場前方にあるスクリーンに撮影禁止を含む注意事項が表示される。SIGGRAPHは国際学会なので各国の言葉で表示されるのだが、

英語:Photography and Recording prohibited.
日本語:写真および動画撮影はご遠慮ください。
ウーキー:がるるる がるるる うががが
カーズ:ブルーン ブルーン カッチャウ!
グルート:I am Gloot.

......などと表示されていて、なかなかお茶目であった。

ではさっそくセッションの様子を紹介していこう。同セッションのパネラーは以下の6名。

パネラー
ヴィクトリア・アランソ氏(エグゼクティブ・プロデューサー/Marvel Studios
ダミアン・カー/Damien Carr氏(VFXプロデューサー/Marvel Studios)
クリストファー・トウンセンド/Christopher Townsend氏(VFXスーパーバイザー/Marvel Studios)
ガイ・ウィリアムズ/Guy Williams氏(VFXスーパーバイザー/Weta Digital
シモーヌ・クラウス/Simone Kraus氏(VFXスーパーバイザー/Trixter
ノディーン・ラハリ氏(VFXスーパーバイザー/Method Studios)

<1>4社でキャラクター・アセットを共有し、膨大な数のVFXショットに挑む

ヴィクトリア・アランソ(以下、ヴィクトリア):映画『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー』は主人公であるピーター・クイルがファミリーを探すストーリーです。第1作目ではピーターは幼少時に母親を亡くします。そして続編『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー:リミックス』では、彼の父親についてのストーリーになります。


© 2017 Marvel

ダミアン・カー(以下、ダミアン):同作の制作では、まず最初に脚本が上がってきました。なのでとりあえずVFXのことは忘れ、観客の気持ちになって脚本を何度も読み返しました。そして、Marvel Studios側のVFXスーパーバイザーであるクリス(クリストファー・トウンセンド)と一緒にアプローチ・ミーティングを行い、エクセルとにらめっこしながら、これらをどうやってVFXベンダーに割り振るかを考えました。

ヴィクトリア:大切なことはここで脚本がフィックスしたと思わないことです。まだ撮影は始まっていないし、この段階では内容がまだまだ変更になることが予想されます。......わかりますよね? 予め、内容が変更になることを前提に脚本を読むのです。

ダミアン:この時に予測したVFXショットの数は、ロケットとベイビー・グルート(以下、グルート)が絡んだショットだけでも1,000以上ありました。これは、複数のVFXベンダーにアセットを割り振って、作業を分担させる必要があることを意味しています。


ロケット(左)とグルート(肩の上)
© 2017 Marvel

ヴィクトリア:ロケットは毛の生えたキャラクターです。このアセットを複数のベンダーでシェアすることは、クオリティを統一する上で、技術的に大変難しい。しかし、プロダクション期間とショット数を考えると避けて通れない道でした。そこで複数のVFXベンターにコンタクトしました。まず、今日は残念ながら欠席されていますが、1作目でも参加しているFramestoreがロケットのアセットをつくり、そのキャラクター・アセットをWeta、Trixter、Method Studios(以下、Method)でシェアする方法を考えました。この複数会社によるキャラクター・アセットの共有は、大きなチャレンジでしたね。

ダミアン:最初に行なったことは、1作目のロケットのショットを全部見て、気に入ったショットを選んでQTをつくり、それを全てのVFXスタジオに送ることでした。そして「1作目よりも完成度を高めるにはどうすれば良いか」を検討しました。よりリアリスティックに、毛の下に隠れた表情をより豊かに、リップシンクをワンランク上の精度にする、などを目指しました。

ヴィクトリア:1作目から、3年が経過しています。その間にテクノロジーも進歩していますから、それを取り込む必要がありました。ロケットだけではなくグルートも沢山のチャレンジが必要でした。無表情な中にも意思を伝えなければなりませんし、「I am Groot.」としか言わないですが(笑)、その中に様々な意味をもたせなければいけません。そして、可愛らしさも必要です。

ダミアン:Framestoreがつくったロケットのキャラクター・アセットを他のVFXベンダーに送るにあたり、「マニュアル」をつくってもらいました。これは、どのようにキャラクターをコントロールすべきかなどを理解してもらうための、文字通り、取り扱い説明書です。まず最初にWetaに送りました。

ガイ・ウィリアムズ (以下、ガイ):今回、重要だったのは、ロケットのアセットを4つの大手VFXベンダーでシェアしたことです。本来は、お互いに競合関係である訳ですが、この作品では、4社が「国と場所と名前は異なるが、巨大な1つの会社」というような意識づけで作業を行いました。

Framestoreから届いたアセットの「パッケージ」にはプリントアウトされた詳細な説明書、シェーディングやFur、アニメーションに至るまでが含まれていました。そしてAlembicファイルでアセットを受け取り、キャラクターのジオメトリだけではなくFurツールも含まれていました。最も、FurツールはVFXベンダー毎に異なるものですが、Alembicインポーターで読み込むとFramestoreがつくったロケットのFurの1本1本が、多少の調整は必要とするものの、再現できました。

ヴィクトリア:このような大規模の映画をつくるという「現実」を考えたとき、2,000から3,000のVFXショット数をさばく必要があり、みんなでシェアしないと映画は納期までに完成できません。世界中にあるVFXベンダーと作業をシェアするとき、それぞれが「Mine(自分のもの)! Mine! Mine! Mine!」という気持ちではダメなのです。「Us(私たち)」であり「Ours(私たちのもの)」なのです。みなさん、どうかこれだけは覚えておいてください。シェアすることが、プロジェクトを一定期間内で完成させられる、唯一の方法なのです。1つの大きな、グローバル・テクノロジー・ファミリーにならないといけません。

ガイ:まずは受け取ったAlembicファイルを開いて、うまくパイプラインに取り込めるかチェックしました。多くの場合、スタジオ間をまたぐと、うまくシェアできない部分があります。それはアニメーション・プロセスの部分です。これは各社でパイプラインやワークフローが高度にインテグレートされており、特にリグやマッスル・システムは独自ツールが多く、うまく動作しません。そういうときは電話を使います。Methodなどに電話して、Framestoreから届いたアセットを読み込んだ際、どうやって問題を解決したのかを聞きます。彼らはすぐれたアイデアをもっていて、アドバイスをくれます。そういった部分もシェアしながら、チーム・プレイヤーとして作業を進めていきました。


会場には撮影で使用された衣装も展示されていた

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<2>映画全体の約98%にもおよんだVFXショット

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