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Villardに学ぶクリエイティブの極意 ~『Dragon Chess Statue』のスカルプティング~

Villardに学ぶクリエイティブの極意 ~『Dragon Chess Statue』のスカルプティング~

2018年1月26日、東京神田にあるワテラスコモンホールにて、「唯一無二の創造物を提供する デジタルスカルプティングのハイブランド」を旗印とするVillardの代表取締役、岡田恵太氏によるセミナー「Villardに学ぶクリエイティブの極意」(主催:ボーンデジタルオートデスク)が開催された。本セミナーでは、岡田氏が過去に手がけた作品を元に、デジタルスカルプティングの考え方や、コンセプトアート用のレンダリング画像を作成するための様々なテクニックを解説。取り上げた作品は全6点で、質疑応答も含め、約2時間にわたるセミナーとなった。その中から本記事では、Villardのオリジナルスタチュー『Dragon Chess Statue』のメイキングを紹介する。

TEXT_永岡 聡 / Satoshi Nagaoka(lunaworks
EDIT_尾形美幸 / Miyuki Ogata(CGWORLD)

▲恐竜を題材としたコンセプトモデルのメイキングを披露する岡田氏
(本作のメイキングは3月14日に公開します。ぜひ、合わせてご覧ください)

キーポイントは、作品全体のシルエットを常に意識すること

ドラゴンの荒々しさと、美術品のような繊細さを兼ね備えた『Dragon Chess Statue』の全長は約27cm。全てZBrushでスカルプトして、3Dプリンタにて出力。そこから丁寧に塗装を施したVillardオリジナル商品である。本セミナーでは岡田氏がZBrushの実データを開き、初期段階から完成までのながれを披露した。

▲『Dragon Chess Statue』


  • 岡田恵太氏(代表取締役)
    株式会社Villard

    2012年に大阪の専門学校を卒業後、大阪のゲーム会社に就職し、2013年に退職。1年ほどZBrushを独学で勉強し、東京のゲーム会社に就職。その後2015年からフリーランスとなり、クリーチャー制作をメインとした2D/3Dコンセプトアーティスト、クリーチャーデザイナー、デジタルスカルプターとして活躍。2017年4月にVillardを設立し、映画、ゲーム、CMなどに登場するキャラクターデザイン、コンセプトデザイン業務のほか、オリジナルのスタチュー販売なども手がけている。

    www.artstation.com/yuzuki www.villard.co.jp/

1:初期ラフモデル

スカルプティングに際し、岡田氏はまず顔を中心につくり始めると解説した。顔を最初につくると、その後の全体イメージが湧いてくるという。「最初はラフに造形していきます。トポロジーなどは気にせず、デザインと速さを優先します。粗いメッシュで、雰囲気を重視した造形を心がけています」(岡田氏)。

▲初期ラフモデル。トゲや鱗など、各パーツが細かく分かれている状態だ。「最初にDynaMeshで顔全体をつくり、その後にマスクで選択範囲を指定し、各パーツを切り離します。ZBrushにはマスクでパーツを分離させる機能があるので、それを使っています。最初から顔と口を分けてつくるのではなくて、ある程度形ができてから、マスクをかけて切り離し、段階的にデザインを詰めていくという感じです。特に胴体や背中は、全体を見ながらざっくりとデザインしていきます。この段階では、細部よりも全体のシルエットをメインに造形しています」(岡田氏)

2:中間モデル

ある程度デザインを進め、全体イメージが湧いた後は、鱗を足して細部を詰める作業に入る。「Snakehookブラシで引っ張って鱗を1枚1枚つくるのではなく、1枚の鱗を複製し、並べることで造形していきます。その方が、後々全体のバランスを調整しやすくなります。加えて、DynaMeshの表面を伸ばして造形すると、メッシュが汚くなり、パーツがくっついてしまうことも多くなるので、編集しやすいようにSubToolを多用しています」(岡田氏)。

▲鱗を複製し、1枚1枚丁寧にボディの上に配置し、全体のバランスを整えていく。全体が1つの塊になっていると個々の変化をつけにくくなるため、大きな鱗はできるだけ分離させている。「顔などの細かいところにばかり目がいってしまい、全体の造形をなかなか進められない人もいるようですが、そのやり方だと完成するまでに時間がかかります。細かいところのクオリティアップよりも、まずは全体を構築し、後で細部を編集したり、気になるところを直したりするスタンスが大事になってくると思います」(岡田氏)


▲終始アップの状態で作業することがないよう、たまに引いた状態で作品全体を見ることが大事だと岡田氏は語った。作品がどのようなシルエットになっているか、常に意識しながら作業を進めることがキーポイントだ。基本的なパーツが揃ったら、1つ1つのパーツに手を加え、全体のブラッシュアップを進めていく


▲中間モデルができたら、KeyShotでライティングを施し、レンダリングして雰囲気を確かめる。「この工程を経ることで、最終形のイメージが明確になり、クオリティアップにつながります」(岡田氏)


3:完成モデル

3Dプリンタでの出力の有無に関わらず、細部のエッジをしっかり整えることを意識していると岡田氏は解説した。特に鱗の凹凸、トゲのエッジなどがしっかり出ており、ラインの流れがよれていないことが大事だという。つまり、シャープなところはよりシャープにするということだ。

▲完成モデル。「全体を細かく彫っているので、情報量はすごく多いです。このモデルは3Dプリンタで出力することが前提なので、彫り込み具合を強くして、エッジを立たせてあります。3Dプリンタで出力するとエッジのディテールが緩くなることがあるので、ZBrush上では『ちょっと強いかな?』というくらい、がっつり彫っていくことが大事になります」(岡田氏)


「クリーチャーをつくる上では、隙間をつくることが大事です」と、岡田氏はセミナー中に何度も強調した。「全身をとめどなく鱗で敷き詰め、可動域が全くないようなクリーチャーを見ることもありますが、現実の生物は可動するための隙間をもっています。大きい鱗、小さい鱗、中間の鱗の間には隙間があります。口の開閉部にも隙間があります。クリーチャーをつくる時には、意図的に隙間を彫っていくことがかなり大事だと思っています」(岡田氏)。本作に限らず、岡田氏のつくり出すクリーチャーにはリアリティがある。例え空想の生物とはいえ、可動する生物としての基本をしっかりと捉えているからそこ、生き生きとした存在感がにじみ出るのであろう。

▲仕上げ段階では、鱗の1枚1枚に、キズや欠損したダメージなどを加えていく。綺麗なところを残す一方で、1番目がいくところに激しいダメージを入れたりもして、しっかりとメリハリをつけている


▲岡田氏は、細部のメリハリを確認するのに有効な、お勧めの設定も紹介してくれた。「ベーシックマテリアルを選択し、デフォルト状態からスペキュラの値を上げ、色を少し暗くすると、ハイライトが入り、細部の形状がわかりやすくなります。マット過ぎる質感だと形状がわかりにくいので、シャープな造形に加え、ロボットなどのハードサーフェイスをつくる時にもこの設定を使っています。KeyShotやArnoldでレンダリングする際にはハイライトが入るため、スカルプティングの段階からハイライトを表示した方が、仕上がりのイメージを想像しやすいというメリットもあります。ある程度ディテールが詰められたら、このような設定でのチェックをお勧めします」(岡田氏)


▲本作はかなり細部にまでこだわり抜いており、そのポリゴン数は半端な数ではない。そのためパーツ全てにおいて、Subdivisionレベルをしっかり保持しているという。「全体的にすごく情報量が多いモデルなので、これら全てがDynaMeshの状態だと、ZBrushの作業スピードが遅くなってしまいます。ブラッシュアップに入る時には、全てのパーツにSubdivisionレベルをもたせ、データを軽くする癖をつけることが大事です。Subdivisionレベルをもっていれば、レベルを低くした状態で編集でき、破綻が少なく、修正が容易というメリットもあります」(岡田氏)。【左】はSubdivisionレベル1、【右】はレベル5の状態である



3月14日には、恐竜を題材としたコンセプトモデルのメイキングも公開します。ぜひ、合わせてご覧ください。

3DCGソフトウェアのお問い合わせ先

本記事で紹介した3DCGソフトウェアは、ボーンデジタルほか、リセラー各社にて取り扱っております。

株式会社ボーンデジタル
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