TEXT & PHOTO_安藤幸央(エクサ)
EDIT_山田桃子 / Momoko Yamada

2017年12月14日に発売されたiMac Pro。従来のiMacと同様のディスプレイ一体型ながら、最高スペック(オプション)でコアXeon CPU、メモリ128GB、ストレージ4TBとプロ仕様のマシンとして登場した。各種DCCツールもiMac Proを見据えたアップデートを実施、iMac Proを活用した6人の映像のプロフェッショナルたちによるショートムービーが公開されるなど(※日本語版は4/16公開予定)、映像制作現場での活用もしっかりと意識されている。本稿では「これまででもっともパワフルなMac」と謳われるこのiMac Proとそれに対応する各種DCCツールについて、レビューしていく。

<1>高額ながら、大幅なスペックアップでプロユースに生まれ変わる

筐体形状はiMacと変わらず、プロ仕様にスペックがアップグレードされたiMac Pro。ディスプレイ部分はRetina 5Kで十億色対応のワイドカラーをサポートしている。プロセッサは8コアから最高18コアまで、オプションで選べるようになっており、どれくらいのコア数を選んだら良いのかは悩むところだ。何を目的にするのかにもよって変わってくるが、10コアのマシンが価格帯性能比のバランスが良いそう。CPUのターボブーストの機能や、CPUよりもメモリの量が効いてくるアプリケーションなど、用途に応じて、バランスを考えた構成を選ぶと良いだろう。

グラフィックスはRadeon Pro Vega 56またはVega 64、メモリ最大128GB、ストレージも4TB SSDのオプションまである。全てのオプションをフルスペックで搭載すると価格もすごいこと(ちょっとした車が買えるほど!)になりびっくりするが、Macintosh II発売当時の価格やその当時の性能から考えるとずいぶん手が出やすくなったものだ。

ローレベルのコントロールもセキュアになっており、デフォルトの設定では、外部ストレージから勝手にブートできないつくりになっている。また、スピーカーもプロ仕様に変わっており、裏側に配置されたスピーカーの位置も従来とは異なる。映像制作の現場でも個別のモニタースピーカーを必要としないほど、十分満足のいく音質が好評だという。さらに大容量のデータ転送が必須のプロ仕様として10GBイーサネット接続可能なのも、この機種ならではの特長だ。

<2>新たにmacOSに対応した建築向けビジュアライゼーションソフト「Twinmotion 2018」

CADデータを読み込み、3DCGで景観シミュレーションをクライアントに見せるといった用途によく使用される建築業界向けのソフトTwinmotionも、Twinmotion 2018よりmacOSに対応した。このTwinmotionではクリックするだけで木を生やしたり、植栽の範囲を指定して木や植物を生やすとともに、日照の様子、木陰の様子などを見て確認することができる。樹木の他にも岩や石なども配置してどのような景観になるか、ランドケープデザイナーが手軽に試行錯誤して確認できるソフトだ。


領域を指定して植栽中の様子

描画にはゲームエンジンとして定評のあるUnreal Engineが使われている。さらにHTC ViveがMac対応したことにより、VRヘッドセットを装着して景観を確認することができる。


岩を配置中の様子

<3>Final Cut Pro Xでは、REDの4.5K RAW動画ファイルがそのままあつかえるように

Final Cut Pro Xもまた、iMac Proのローンチにあわせていくつかアップグレードしている。そのひとつが、プロ向け高精細カメラの定番REDシリーズの4.5K RAW動画ファイルが、プロキシーと呼ばれる確認用の中間ファイルではなく、RAWデータでそのままあつかえるようになった点だ。これにより、iMac Proの5Kディスプレイで、RAWデータを100% pixel by pixelで再生表示できるようになった。また、RED WEAPON 8Kの映像も、50%表示ながらもProResフォーマットでストレスなく表示、編集と素早くあつえるようになっている。


4.5K RAW動画を再生している様子

<4>Cinema 4Dでは素早いリアルタイムレンダリングを実現

iMac ProとCinema 4Dの組み合わせでは、GPUに最適化されたリアルタイムレンダリングにより、色を変えたり視点を変えたりといった操作が、数秒で反映されレンダリング画像を確認することができる。またトータルのレンダリング時間もコア数の多いiMac Proの真価を発揮する領域だ。


リアルタイムレンダリング中の様子


最終レンダリングでは数時間かかる素材を、リアルタイムレンダリングで数秒待つだけで確認中の様子

<5>ロード時間が高速化された音楽制作ソフトLogic Pro X

新しいマルチコアに完全対応した音楽制作ソフトLogic Pro XをiMac Proと組み合わせることで、なにより好評を得ているのがロード時間が高速になったことだ。80トラックあるような制作中ファイルも、10数秒で起動する。また、SSDのパフォーマンスも良好で、パフォーマンスメーターも常時余裕をもった数値を示している。さらに、5Kディプレイに全面に表示される楽譜モードも使い勝手がよく好評とのこと。


84トラックの音楽編集ファイルを扱っている様子

<6>今後はMac Proと並行して新機種の販売も

iMac Proの登場により、これまでのように他のコンピュータをメインで使用し編集や特定の作業だけをmacOSマシンであつかうといったながれから、映像撮影した素材から3DCG、映像編集、音の編集まで、全ての作業をiMac Pro 1台でこなしていく環境が整いつつある。さらに映像系のみならず、大量の演算パワーを必要とする流体シミュレーションやデータのビジュアライズ、プログラムなどを行うユーザーにとっても、iMac Proは好評だそうだ。従来からニーズの多かったWebデザインやWeb開発の分野でも、メモリの潤沢なiMac Pro上で複数のバーチャルマシンを動かして利用するといった使い方が増えてきているそうだ。

マシンのサポートに関しても、従来通りリテイルストアでの修理対応、電話などによるサポートの他、プロ向けのアプリケーションコースの開催などが定期的に実施されている。

今度の動向として現在明らかになっていることとしては、従来のMac Proの製品ラインはそのままで、今後はiMac Proの新機種も予定されており、カスタマイズ可能なモジュラー型のMac Proと究極のオールインワンと呼ばれるiMac Proが並行して販売されていくという。さらに今後、Apple純正の製品として、プロ仕様の単体ディスプレイ製品が予定されている。

また取材後、iMac Proの付属アクセサリーであったスペースグレイ色の周辺機器(Magic Keyboard、Magic Trackpad 2、Magic Mouse 2)がApple Storeで単体で購入できるようにもなった

新しいmacOSでは外付けGPUのサポートもアナウンスされており、作業効率の向上やVR用途など、今後、ますますiMac Proのようなハイスペック機種に注目が集まりそうだ。