7月13日(金)、アプリケーションやゲームの開発・運営に関わるソリューションが一堂に会するイベント「GTMF(Game Tools & Middleware Forum) 2018 TOKYO」が秋葉原UDXギャラリーで行われた。本記事では、「DMLにおけるShotgunの活用法」と題して、株式会社デジタル・メディア・ラボ(以下DML)の3名によるSHOTGUNの使用方法が解説されたセッションをレポートする。
TEXT&PHOTO_神山大輝 / Daiki Kamiyama(NINE GATES STUDIO)
EDIT_小村仁美 / Hitomi Komura(CGWORLD)
<1>DMLにおけるSHOTGUNレビューフロー
まずは東京映像制作部・プロデューサーの吉田 学氏が登壇し、DMLの会社概要が紹介された。吉田氏はCGデザイナーを経てプロダクションコーディネーターとして同社に入社し、現在はクリエイティブプロデューサーとして数多くの案件のプロデュースに携わっている。DMLが年間にこなす案件の数は400件にもおよび、それらはプリレンダリングシネマティック、リアルタイムカットシーン、アセット制作、遊技機向け映像、VRコンテンツ、プラネタリウムなど多岐にわたっているため、必然的にワークフローの整備は必須事項となる。
吉田 学氏(東京映像制作部・プロデューサー)
SHOTGUNはAutodeskが開発するコミュニケーション・プロジェクト進捗管理ツールで、同社でもともと使用していたExcelやGoogleスプレッドシートに近いUIのため、スムーズに移行できたという。「SHOTGUNの導入でセクション同士の受け渡しの自動化・効率化が図られ、モデルデータやモーションデータの受け渡しが楽になりました。DMLは映像制作会社ですが、他業種の皆さまも各々の業務に置き換えてイメージしてほしい」(吉田氏)。
山田賢一氏(SPS映像制作部・テクニカルアーティスト)
続いて同社テクニカルアーティスト 山田賢一氏が登壇し、レビューのワークフローが解説された。DMLではSHOTGUNを基にアーティストへ業務を振り分け、その後チェックが行われている。チェックのフローにおいてSHOTGUNのレビュー機能は優秀で、ディレクターが動画に直接赤ペンを入れてフィードバックを返すことも可能な他、併せてPlaylistとReview Notesを活用したところ「アーティストはやりとりの円滑化、ディレクターはチェックすべきタスクの明確化、プロダクションコーディネーターは進捗状況の把握、クライアントへの提出漏れの防止などのメリットがありました」(山田氏)と説明する。
レビューの全体のながれは上画像の通りで、黄色がアーティスト、緑がディレクター、赤が制作進行のフェーズとなっている。アーティスト→ディレクター→制作進行→クライアント、およびその逆順で行われるフィードバックのサイクルを、PlaylistとReview Notesを用いてくり返している。また、遊技機などの大型案件の場合は、1人のディレクターが複数のラインやアーティストを担当したり、各ラインに統括するディレクターやプロジェクトリーダーが配置されるなど、フローや各々のタスクが煩雑になる。さらに情報を集約する必要がある場合、フロー内に別のPlaylistを追加して対応することで、ディレクターはINBOX通知の内容を確認するだけでチェックが可能となる。
現在DMLでは、クライアント側からPlaylistにアクセスしてレビューを行えるSHOTGUNの機能「Client Review Site」を積極的に導入しているとのこと。「クライアント側はライセンス不要(無料)なので、協議のもとで活用できると思います。いろいろなExcelや表を見なくても、SHOTGUNだけで全て一括管理できるのが良いところかなと」(山田氏)。
また、「SHOTGUNのトップページを通常のOverviewからProject Detailsに変更する」という活用事例では、様々なアイテムをカスタムで配置し、それらの情報を1ページで俯瞰的に確認することができるポータルサイト的な使い方が提案された。必要な情報のみが絞り込まれたディレクター向けのカスタムページも設けており、こちらでは自分が関わるアーティストのチェック動画など、特定のプレイリストに登録されているものだけを確認しているとのこと。
レビューのワークフローの総括では、メリットとして、PlaylistとReview Notesを合わせることで、従来のチェック方法に比べ前段階の状況の確認や比較が容易なことが挙げられた。「ディレクターのコストは半分くらいに減っているのではないか」(山田氏)。また、ディレクターとクライアントそれぞれにPlaylistを用意し、チェックの進行具合を一覧で確認するというフローでは「クライアント提出用のPlaylistとしてまとめているため、データは一括でダウンロード可能です。Client Review Siteが導入されていない場合は、APIを使って自動でFTPにアップするかたちになっています。アップロードコストは90%ほど削減できています」と説明した。
[[SplitPage]]<2>SHOTGUN APIによる機能拡張
片山敏春氏(東京映像制作部・テクニカルスーパーバイザー)
続いてはテクニカルスーパーバイザー 片山敏春氏が登壇し、SHOTGUN API(機能拡張)と活用事例について紹介。SHOTGUN APIは、shotgun上のCreate、Read、Update、Deleteの操作をPython Scriptから行えるもので、このAPIを活用してDMLでは様々な自動化に取り組んでいるという。
APIを使用すると、アーティストがSHOTGUNに動画をアップする際、同時にSHOTGUNのフィールドに動画の説明、IN/OUT、フレームレート、ファイルサーバへのパス、SHOTGUN内でのリンク設定などを付与することができる。成果物をツールに通すことによって、データが適切にSHOTGUN DMLサーバーに蓄積されるようにしているというわけだ。
同様に、Mayaからのアセットデータを、アセット情報やサムネイル等の情報を伴って自動でSHOTGUNに蓄積していくことも可能。大量のアセットでもミスなく確実に入力できる点がメリットである他、「データの破損がどの時点で起きたのか」などの作業履歴を時系列で確認できるため、データトラッキングも容易だ。また、その他のAPI活用方法として、Replyの自動書き出しの事例が紹介された。
先述のClient Review Siteを用いてクライアントとやり取りをする際、成果物に対してダイレクトにメッセージ(Note)を受け取ることができるが、それを踏まえて「どういったフィードバックをしているのかリストにまとめてほしい」という要望があった。そこで、NoteとリンクするReplyをCSVに落とし込むためにAPIを使用。Noteだけでも1,000〜2,000ほどあり、制作進行スタッフが手動で行うと丸一日かかるような作業が2時間ほどに短縮されたという。
続いては、「SHOTGUN Eventsを利用したEntityのステータス自動変更と、Task Dependencyに基づいたタスクステータス自動変更の事例」が紹介された。SHOTGUN Eventsとは、ユーザーがSHOTGUN上で何らかの更新をしたとき、それがトリガーとなってイベントが発動するしくみのこと。例えば、モデルのステータスを変更すると、次のリギングのイベントが自動変更されるというもので、「ステータスの変更漏れやミスがなくなり、アセットが膨大になればなるほど恩恵を受ける機能だと思います」と片山氏は語る。
次に紹介されたのは、SHOTGUN上で右クリックしたときに現れるコンテクストメニューをカスタマイズし、自前のツール上でアクションさせることが可能な「Action Menu Item」。カスタム部分を実行すると、「SHOTGUNからショット情報を取得→Mayaではなくバックグラウンドでアニメーションシーンを開く→Alembicを出しレンダリング用のシーンデータに読み込み→Cubeにレンダリング情報を送信→レンダリングシーケンスに落とし込み」という流れが自動的に行われる。アーティストにとって手間のかかる作業が、SHOTGUNからワンクリックで行うことが可能となっており、人為的ミスや工数の大幅な削減が可能となっている。
また、プロジェクト管理以外の事例についても紹介された。まず「いつ誰が使ったか、いつ誰が更新したか」というトラッキングができる機能では、PCスペックや使用者を管理する「Workstation」、アプリケーションやプラグインのライセンス管理、ログをチケットに蓄積してエラー等を探る「Tool Log」が用意されている他、プロジェクトが終了した後も参考にしたい動画を、ソートして容易に閲覧ができるように管理する「Shared Reference」にも言及された。
DMLは今後、リアルタイムエンジンを使用した映像制作とそれらのプロジェクト管理の強化およびSHOTGUNとの連携の強化を図っていくという。また、SHOTGUNをハブとしたパイプラインサポートも行なっていきたいとのことだ。「弊社で既に取り組んでいて、 実績があるものについては何かアドバイスができるかもしれないので、どうぞお気軽にご連絡ください」と締めくくり、講演は終了した。