>   >  高解像度なのに省メモリ! 『NOSTALGIC TRAIN』の美しい景観を支えたダイナミックマテリアルレイヤリング
高解像度なのに省メモリ! 『NOSTALGIC TRAIN』の美しい景観を支えたダイナミックマテリアルレイヤリング

高解像度なのに省メモリ! 『NOSTALGIC TRAIN』の美しい景観を支えたダイナミックマテリアルレイヤリング

UE4をベースに、誰もが郷愁を覚える田舎の街並みをフォトリアルに描き出したSteamで好評発売中のウォーキングシミュレーター『NOSTALGIC TRAIN』。作者は国内外で豊富な経験をもつ、ナラティブ&背景アーティストの畳部屋氏だ。ここでは、本作で実装されているモダンな技術について本人に解説していただいた。

※本記事は月刊「CGWORLD + digital video」vol. 244(2018年12月号)からの転載となります。

TEXT_畳部屋 / Tatamibeya
EDIT_藤井紀明 / Noriaki Fujii(CGWORLD)、山田桃子 / Momoko Yamada

NOSTALGIC TRAIN 発売日告知トレイラー
© 2018 Tatamibeya All Rights Reserved.

オープンワールドで説得力のある景観を実現

2018年6月、SteamでリリースされたインディーゲームがUE4界隈を中心に大きな注目を集めました。現代より少しだけ昔の日本の田舎を舞台にした小規模なオープンワールドのウォーキングシミュレーターで、タイトルは『NOSTALGIC TRAIN』といいます。どこを切り取っても美しく懐かしい風景描写はUE4をベースに構築されており、そのフォトリアリスティックな表現はとても個人制作によってつくられているとは思えないほどのクオリティです。また、クラウドファンディングによってプロジェクトを起ち上げたこともエポックメイキングでした。

本作を制作したのは、エンバイロンメントアーティストとして海外のゲーム会社でオープンワールドのゲーム開発に従事する畳部屋(Tatamibeya)氏です。幼少期から鉄道模型やジオラマが好きだったそうで、現実の景観を一定空間に落とし込むためのノウハウや、誰もがどこかで見たことがあるように感じさせるテクニックが、3DCGというプラットフォームでもおおいに活かされています。例えば、畳部屋氏のこだわりのひとつに「物の配置」があります。簡単に言えば、何か物を置くときに見た目や位置に意味をもたせたり、関連する別の物も置くことで背景にあるストーリーを想起させ、説得力を生み出すというものです。これらを細かく積み重ねることで、本作では誰もがどこかで自らの過去の記憶を刺激され、等しく郷愁が感じられるようになっています。

3DCGの技術面で特筆すべきなのが「ダイナミックマテリアルレイヤリング」という手法です。個人制作でオープンワールドという難題の解決にあたり、メモリの制約にも耐えうる効率的なテクスチャの運用方法として導入されました。詳しくは、以下より畳部屋氏に解説していただいたので、ぜひ参考にしてください。
(文・編集部)

ダイナミックマテリアルレイヤリング

『The Order: 1886』などでも採用された、テクスチャ解像度の高さとモデル形状に沿った汚しを両立させるマテリアルパイプラインについて解説したいと思います。特にメモリ制約の厳しいオープンワールド作品に有効かと思い、本プロジェクトで採用しました。

■UE4用のシェーダ導入とマテリアルライブラリの準備

STEP 01 UE4にレイヤーシェーダを導入


NOSTALGIC TRAINはUE4を使って制作しましたので、まずSubstance ShareにてAllegorithmicが配布しているUE4用のシェーダを導入します。具体的なインストール方法はダウンロードファイル内のガイドをご参照ください
share.allegorithmic.com/libraries/2125


UE4のコンテンツブラウザにインストールされた状態です

STEP 02 シェーダのカスタマイズ

シェーダはそのままでも良いのですが、いくつか本プロジェクトのためにカスタマイズしました


レイヤーごとの色付けパラメータが乗算処理になっていたのを、もう少し自由度を高めるためオーバーレイに変更。ただ、極端な色を付けるとPBRのアルベドで良しとされている値を超えてしまうので注意が必要ですね


ブレンドマスクの解像度が建築アセットでは十分でないことが予想されたので、ブレンドにノイズテクスチャを挟む処理。コントラストやタイリングなどのパラメータも露出させています。詳細は後述します

STEP 03 UE4内でのマテリアルライブラリの構築


ダイナミックマテリアルレイヤリングでは、ベースとなるテクスチャはプロジェクト全体で共有し、モデルのどの部分にどのテクスチャが現れるかをマスクによりコントロールする、というのが基本のアイデアです。そのためプロジェクトごとに使う基本マテリアルのライブラリをあらかじめ作成することが重要で、例えば木の板壁、磨かれた金属、錆びた金属、数種のコンクリート等はtextures.comやUE4マーケットプレイスから購入したものなどを使い、UE4コンテンツブラウザのフォルダごとに整理しました

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MayaとSubstance Painter内でのデータ作成

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