イベント「Unity デザイナーズ・バイブル出版記念トーク in Unity STATION」が6月10日(水)にUnity JapanのYouTube公式チャンネルにて生配信された。ゲストには執筆陣から森 哲哉氏(株式会社キッズスター CTO)、轟 昂氏(フリーランスゲーム開発者)、karukaru氏(BitStar Akihabara Lab)、編集担当の佐藤英一氏(株式会社ボーンデジタル)が登壇。司会を大下岳志氏(Unity Technologies Japan)が務め、6月に発売されたばかりの書籍『Unity デザイナーズ・バイブル』の内容や執筆秘話を解き明かした。

TEXT_高橋克則 / Katsunori Takatashi
EDIT_小村仁美 / Hitomi Komura(CGWORLD)

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Unity初心者のデザイナーに向けてわかりやすく解説

まず本書の編集に携わった佐藤氏は「『Unity デザイナーズ・バイブル』は2018年刊行の『Unity ゲーム プログラミング・バイブル』の姉妹書ということになっているが、実体は少し違う」と裏話を披露する。前書『プログラミング・バイブル』は好評だったものの、Unity 2017をベースに執筆していたため、最新バージョンに合わせた改訂版を作る予定だったという。

しかしその場合、総ページ数が膨大になって、一冊の書籍として発売するのが難しくなってしまう。そこで今回は『プログラミング・バイブル』からデザインの機能をフォーカスする方針に変更したと、出版にいたるまでの経緯を明かした。

書籍概要。出演者は上から大下氏、佐藤氏、轟氏、森氏、karukaru氏

『デザイナーズ・バイブル』はデザイナー向けの書籍のため、プログラマー向けだった前書とは異なり、Unity初心者にも優しい内容を目指した。入門編と中級編を充実させたことが大きなポイントで、入門編「みんな大好き! 『Unity』を使ってみよう」は、Web連載「マンガでわかるUnity」で知られる森氏に執筆を依頼。キャラクターの会話を楽しみながらUnityが理解できるガイドに仕上がった。森氏は自身の担当ページについて"THE 入門編"だとコメント。「そもそもUnityとは何なのか?」やどのようにインストールするのかまで丁寧に解説し、Unityを操作する前段階でつまずかないような配慮がなされていると話した。

入門編「みんな大好き! 『Unity』を使ってみよう」

本書は多くの章にサンプルが付属しており、自由にダウンロードできる点も特徴だ。入門編のサンプルは玉転がしゲームの「Roll a Ball」。大下氏は「デザイナー向けの本のサンプルはテクスチャやアセットであることがほとんど。最初がゲームなのは斬新」と驚いた様子。ゲームをプレイしながらUnityの基本的な操作方法を学べることも、初心者に優しい作りとなった。

入門編のサンプルは玉転がしゲームの「Roll a Ball」

実践ツール編「Visual Effect Graph によるエフェクト制作」は轟氏が担当。「Visual Effect Graph」はノードベースのエフェクトエディタであり、本書ではツールの概要や画面の操作方法に触れた後、水をイメージしたエフェクトを一緒に作れるようにチュートリアル形式で解説している。水しぶきが飛び交う派手なエフェクトを見た視聴者からは「サンプルがめちゃくちゃカッコイイ!」や「これが作れるようになるだと......」といったチャットが飛び交って好評だった。

実践ツール編「Visual Effect Graph によるエフェクト制作」のページ(上)と、サンプルエフェクト(下)

「Visual Effect Graph」が正式リリースされる前のプレビュー版から使っていた轟氏に対し、佐藤氏からは「ノードの場合はプログラム的なセンスが必要になると感じている人も多いと思うが、実際はどうなのでしょうか?」との質問が飛んだ。轟氏は「どんな計算をすれば良いのか頭に思い描きながら当てはめていくので、確かにプログラム的な考え方ができれば、よりスムーズに作れる印象はあります」と回答。ただ「その場で結果が出るためトライ&エラーがしやすいことが大きなメリット」であり、そういった知識がないユーザーであっても使いこなすことができると付け加えた。

実際にサンプルのノードを見た視聴者からは「ノード数が意外に少なくて作りやすそう」といった声が上がっており、今回の配信で興味をもった人も多かったようだ。轟氏は「ノード数を抑えても良い感じのエフェクトが作れるのでオススメの機能です」とその魅力を伝えた。

ゲーム開発ですぐに使えるスキルも紹介

アバターで出演したkarukaru氏は、実践ツール編「Animation Rigging で簡易的なアニメーション作成」を執筆した。「Animation Rigging」は、既存のアニメーションに対してリアルタイムに変更を加えて、新しい動きを追加したり制御したりすることができる。今回の配信では、待機モーション中のキャラクターを、Animation Riggingによって銃を構えるポーズに上書き編集したサンプルを紹介した。

実践ツール編「Animation Rigging で簡易的なアニメーション作成」のページ(上)と、サンプルアニメーション(下)

他のサンプルでは、動く球体をターゲットに見立てて、銃のねらいを自動で定めるアニメーションなども用意されている。karukaru氏は「敵をねらいながら移動したり、ターゲットの動きに合わせてエイムをずらすという動きはよくあるシチュエーションなので、ゲーム開発ですぐに使える技術だと思います」と断言。大下氏から、Animation Riggingはまだプレビュー版なので使うときに不安はなかったかと問われると、「特に大きな不具合もなくカジュアルに触っても大丈夫なので安心して使っています」と太鼓判を押した。

大下氏は中級編「グラフィック描画の基礎 『レンダーパイプライン』を理解しよう!」を担当。Unityにはグラフィックを描画するためのレンダーパイプラインが、従来から搭載されている「Built-in Render Pipeline」に加えて、汎用性をもつ「URP(Universal Render Pipeline)」、高品質な「HDRP(High Definition Render Pipeline)」の3種類が存在する。しかし何を基準に選べば良いのかがわからないユーザーも多いのではないかと考えて、どの場合にどれが適しているのかを説明したと執筆理由を語った。

最後はゲストそれぞれが『デザイナーズ・バイブル』の注目ページを紹介。佐藤氏は今回触れることができなかった、外部のデザインツールとの連携について書いたページも読み応えがあるとオススメした。それを受けて大下氏は「Unity IDの解説から始まって、Shotgunとの連携で終わるという、こんな本はなかなかないですよ」とコメント。ゲストの笑いを誘った。なおイベントでは当初計画していた『プログラミング・バイブル』の改訂版に着手することも明かされており、その動向も気になる配信となった。

『Unity デザイナーズ・バイブル』の掲載セクション一覧

書籍情報

  • Unity デザイナーズ・バイブル

    著者:森 哲哉、秋山 高廣、室星 亮太、石塚 淳一、轟 昂、牙竜、コポコポ、すいみん、ツバネ、ryosios、トライタム、やまたくさん、クロイニャン、ズゴゴ、karukaru、Maruton、monmoko、大下 岳志、時任 友興
    発行・発売:株式会社 ボーンデジタル
    ISBN:978-4-86246-477-4
    総ページ数:656ページ
    サイズ:B5変形判、オールカラー
    価格:4,600 円+税

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