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2021年11月8日(月)から12日(金)にかけて、「CGWORLDクリエイティブカンファレンス」が開催された。本稿では、11月11日(火)に開催されたAMDコラボセッション「物理ベースレンダリングエンジン Radeon ProRender の基本と最近のアップデートの紹介」についてレポートする。

TEXT_江連良介 / Ryosuke Edure
EDIT_小村仁美 / Hitomi Komura(CGWORLD)、山田桃子 / Momoko Yamda

様々な環境で利用可能なRadeon ProRender

本講演に登壇したのは、日本AMDでシニアソフトウェアエンジニアとして勤務する池田 翔氏。2017年に入社してからは、Radeon ProRenderの開発に携わる仕事をしており、本講演でもその機能やアップデート内容について説明が行われた。

Radeon ProRenderはサードパーティのCPU、GPUでもレンダリングできるが、AMDのRadeon PRO W6000シリーズを使えばさらに高速なレンダリングが可能だ。様々な環境でプラグインとして利用することができ、特にMayaBlenderHoudiniなどでは最新のProRenderを使うことができる。

例えば、Mayaで本製品を利用する際には、ビューポートから「Radeon ProRender」を選択すればレンダリングが開始される。

▲Mayaビューポートから「Radeon ProRender」を選択

▲レンダリングされた画像

「オブジェクトを動かしたりすると、その動きが即座に反映されレンダリングが確認できます。今回はAMD Radeon RX 6800 XTを使っているので、かなり早くレスポンスも良いレンダリングになっていることがわかると思います」(池田氏)。

面白い応用も可能なノンフォトリアルレンダリング

次に池田氏は、Radeon ProRenderのアップデートによって最近実装された内容を紹介した。本レンダラはフォトリアルなレンダリングができることが強みのひとつだが、ノンフォトリアルレンダリングではコンター(アウトライン)やトゥーンシェーダなどのレンダリングも可能だ。

コンターでは、複数の条件で線を出すことができる。例えば、Object IDでは各オブジェクトのつなぎ目が強調され、Shading Normalではくぼみや曲線などの線が強く表れる。「これらの条件は単体で使用することもできますが、いくつか組み合わせることで効果を発揮することもあります。例えば、Object IDで各オブジェクトのつなぎ目の線を出しつつ、パーツの凹凸を反映することが可能なShading Normalを使って線を補うことができます。また、線の太さやアンチエイリアシングのON/OFFも調節でき、ガラスなどの透過にも対応しています」(池田氏)。

トゥーンシェーダでは、ハイライト・中間・影の3色でレンダリングを行う。加えてハイライトや影の量を簡単に調整できることも本レンダリングのメリットだという。現在は3色表現だが、今後のアップデートで5色表現が可能になる予定だ。

▲トゥーンシェーダによるレンダリング画像

トゥーンシェーダの面白い活用例も紹介された。「左上の画像はコンポジットだけ見るとトゥーン調の画像なんですが、実はトゥーンを直接使っているわけではなく、影色を変えられるのを利用して、影を青と赤で出しています。その後、影とハイライトのマスクをつくり、さらに画像処理で影やハイライトをつくることもできる。レンダリングではなく、画像処理のときに影やハイライトをつける面白い例です」(池田氏)。

作業を効率化させるクラウドレンダリングとUSD機能

講演の後半では、制作全体を効率化してくれる機能について紹介があった。クラウドレンダリングは、モルゲンロット株式会社が提供している「Render Pool」というサービスの中で利用することができる。

Render Pool上では1,000台以上のGPUサーバが動いており、並列レンダリングが可能なため、大量のフレームをレンダリングしなければならない場合でも短時間で実行できる。また、サーバ上でレンダリングを行うため、手元で別の作業を並行できるというメリットもある。

他にもUNIVERSAL SCENE DESCRIPTION(USD)に関するアップデート情報も話題に挙げられた。

USDはPixarが開発した、シーンを保存するためのファイル形式のことで、3Dアプリケーション間で効率良くデータのやり取りができることがメリットだ。USDはHoudiniでサポート、BlenderではBeta版リリース、Mayaでは開発中という状況で、年内にBeta版を出す予定だという。

「既存の3Dプロダクションパイプラインは、モデリングやレイアウトが終わった後のシミュレーションやライティング工程で修正作業が発生した場合、手戻りコストが大きいという問題がありました。USDを使うと各セクションがそれぞれ個別に読み込み・書き出しを行えるようになるため、それぞれの工程で並行して作業ができるようになり、作業効率が上がります」(池田氏)。

▲既存のモデリングでは手戻り作業に時間がかかった

▲USDでは各工程を並行して作業できる

池田氏は、最後にRadeon ProRenderとUSDを組み合わせて将来できることとして、異なるアプリケーション間で同じUSDファイルを用いてRadeon ProRenderでレンダリングが可能になること、また同様に同じUSDファイルを用いてクラウドレンダリングも可能になることなどについて触れ、講演を終了した。