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 ツークン研究所は、東映グループの映像ポストプロダクション(以下:ポスプロ)事業を集約する東映デジタルセンターの一部門として、2010 年に開設された。4月某日、同研究所が開発したプリビジュアライゼーション(以下:プリビズ)とバーチャルカメラシステムの体験デモが本誌向けに行われた。今回の体験デモは、今後も定期的に開催する予定となっている。参加を検討したい読者のために、その内容をご紹介する。

プリビズ未体験の人に、その有効性を体感して欲しい

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 "Zukun(ツークン)" とは「未来」を意味するドイツ語" zukunft " から付けられた造語だ。同研究所は、これまでに仮面ライダーシリーズや、海賊戦隊ゴーカイジャー(ともに劇場用)などのモーションキャプチャや VFX を手がけてきた。 映画『はやぶさ 遥かなる帰還』( 2012 )では、ポスプロだけでなく、バーチャルカメラを駆使したプリビズも担当し、制作の効率化に大きく貢献してきた。
 今回の体験デモは、プリビズの予備知識がない人にも、その有効性が明確に伝わることを意識して企画したそうだ。「バーチャルカメラでの撮影や、プリビズ制作の一部を体験することで、その効果や導入方法を具体的に知っていただきたいと考えています」と、プロデューサーの村社幸司氏は語る。
 村社氏は、同研究所でのプリビズ導入事例や、ハリウッドの最新事例を紹介しながら、従来の絵コンテとプリビズの違いや、プリビズのメリット、制作フローなどを説明してくれた。プリビズとは、実写撮影や 3DCG 、VFX の実制作に入る前段階で、絵コンテをもとに仮素材を使って制作される映像だ。スタッフやスポンサー間の最終イメージの共有、制作コストの明確化、撮影前のシミュレーション、複雑な CG 合成の設計などに大きな効果を発揮する。
 ハリウッドでは『Star Wars Episode III 』( 2005 )の制作においてプリビズが本格的に導入され、クオリティアップと効率化に効果を発揮したことで注目を集めた。その後、多くのプロダクションがプリビズの費用対効果と重要性を認識し、次々と導入を決定した。現在では、映画はもちろん、ゲーム、CM、テレビドラマなど、多様な制作現場にプリビズが導入されている。
 「日本の映画やゲーム制作でも、徐々にプリビズが導入されています。『はやぶさ 遥かなる帰還』では、実写のカメラマンがバーチャルカメラを使うことで、監督のイメージ通りのプリビズを実現しました」と、CG ディレクターの興村暁人氏は語る。 スナップ1

 映画『はやぶさ 遥かなる帰還』におけるバーチャルカメラ活用シーン。実写の撮影監督やカメラマンが撮影することで、監督のイメージに近い絵作りが可能となった。リアルタイムに撮影結果を確認できるため、スタッフ全員が納得いくまで検証を繰り返し、完成度を高めることができる。(セミナームービーより抜粋。)

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 映画『はやぶさ 遙かなる帰還』の制作では、同作の実写撮影を担当したカメラマンの坂本氏がバーチャルカメラを操作した。カメラワークとレンズワークを熟知した坂本氏によって撮影されたプリビズは、プロダクション工程の効率化やクオリティアップに大きく貢献したそうだ。

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直感的な使用感のバーチャルカメラ 

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 体験デモの参加者は、バーチャルカメラを操作してプリビズ制作の一部を実践できる。三脚に固定しての撮影、肩に担いでの撮影、手持ち撮影など、本誌スタッフ達も実際に試してみたが、パン、ティルト、ドリーといったカメラワークはもちろん、ズームやレンズの変更も可能で、通常のカメラに近い直感的な使用感だった。
「CGアーティストはもちろん、実写の撮影監督やカメラマンも違和感なく扱えるシステムを実現しています」と、興村氏は語る。
 撮影した映像は、その場で編集や差し替えができるため、カメラの動きやフレーミング、演出のリズムなどを、監督やカメラマン、CG ディレクターが納得いくまで検証できる。 プリビズを使って試行錯誤やシミュレーションを入念に行っておけば、その後の実写撮影や 3DCG 、VFX 制作にかかる費用や時間、スタッフの負担は大きく軽減される。

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 バーチャルカメラの撮影結果は、写真上部の液晶モニタにリアルタイム表示される。写真下部のコントローラは、ズームなどのレンズワークに用いる。今回の体験デモでは、同研究所があらかじめ制作しておいたプリビズ用の 3DCG シーンを撮影した。それ以外にも、マーカを付けたアクターをバーチャルカメラで撮影し、アクターとカメラの動きをシーンデータに反映させ、リアルタイムに表示することも可能だ。

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 カメラ位置の計測には、光学式モーションキャプチャのVICON T160を用いており、非常に精度の高い撮影が可能だ。同研究所のスタジオには24台のVICON T160が常設されており、オプションで更に増設することもできる。

多様な設備と経験を土台に、後工程を見越した提案が可能 

 同研究所のシステムと、母体である東映撮影所の機能を組み合わせれば、プリビズから、美術セットの制作、実写撮影、モーションキャプチャ、 VFX 、編集、アフレコ、試写まで、映像制作の全領域に対応できる。たとえば『プリキュア』シリーズのダンスシーン制作では、モーションキャプチャの6人同時収録を行ったそうだ。「10人以上の同時収録を行ったこともあります」と、村社氏は語る。 多様な設備と経験があるからこそ、プリビズ制作の段階で、後工程を見越した様々な提案ができることも同研究所の強みだろう。なお、現在はフェイシャルキャプチャの新システムを開発中で、実現すれば『アバター』のように身体の動きと表情を同時撮影する、パフォーマンスキャプチャが可能になるという。
 次回の体験デモは、5月中旬以降の開催を予定しているそうだ。プリビズ未体験の映像 関係者は、ぜひ同研究所でバーチャルカメラとプリビズの効果を体感して欲しい。

TEXT_尾形美幸

「MDV-AGQ9300B-WS」

東映デジタルセンター
ツークン研究所スタッフ


左から村社幸司氏(プロデューサー)、葛西歩氏(センター長)、興村暁人氏(CG ディレクター)、黒澤あかね氏(モーションキャプチャースペシャリスト)


東映デジタルセンター ツークン研究所

東映デジタルセンター ツークン研究所

●プリビズ&バーチャルカメラ体験デモ
5月中旬以降より随時開催予定。詳細は下記より。
http://www.zukun-lab.com

●お問い合わせ先
東映株式会社 デジタルセンター ツークン研究所
mail: zukun@toei.co.jp
電話: 03 - 3867 - 5029