Houdini公式YouTubeは5月19日(火)、Storm StudiosによるFMX HIVE 2026イベントでの講演動画「Call of the Sirens: Percy Jackson S2 | Storm Studios | FMX HIVE 2026」を公開した。Disney+のドラマ『パーシー・ジャクソンとオリンポスの神々』シーズン2におけるVFXスーパーバイザーMagnus Peterson氏と、リードFXアーティストのYoki Hendendrickson氏が登壇し、ドラマに登場するセイレーンの制作事例を解説している。
岩で構成されたキャラクターに対するRBDシミュレーション
講演では、岩が寄り集まって人型を成すセイレーンのアニメーション手法について解説。モデルのデザインが日々変更されることから、従来のリギングでは岩同士の物理的なめり込み対応が現実的ではなかった。そこでチームは、Rigid Body Dynamics(RBD)ソルバを用いてパーツ同士をシミュレーションするアプローチを採用。シミュレーションの破綻を防ぐため、事前にAttribute Wrangleノードを用いて前フレームと現在のフレームの頂点位置を比較し、めり込んでいるメッシュを自動で押し出して解消(Detangle)する処理を行っている。
RBDシミュレーションの内部構造としては、アニメーションの動きに各パーツを追従させるためのRBD Pin Constraintと、岩同士を緩やかに繋ぎ止めるSoft Constraintを併用。これにより、肘の岩が動いた際に周囲の岩も連動して自然に押し出されるような、有機的なモーションを獲得している。また、拘束同士が反発して生じる微小な震え(Jitter)を抑えるため、コンストレイントの力を混ぜ合わせるConstraint Force Mixingパラメータを調整し、安定した物理挙動を実現している。
クロスシミュレーションを用いた海藻とAPEXによるヒトデのリギング
セイレーンに付着する海藻はVellumによるクロスシミュレーションが用いられ、モデラーがキャラクター上に手動で配置したポイントに対して、エフェクトアーティストが初期状態(Rest Position)を指定している。岩が動いた際に海藻が自然に張り付くようAttach to Geometryを使用しているが、岩同士が離れて海藻が極端にストレッチした場合には、Blastノードを用いて動的にポリゴンを削除し、不自然な伸びを隠蔽している。
また、体に付着するヒトデのキャラクターセットアップにはAPEXを活用。モデリングデータに対してカーブを描いてスケルトンを定義し、Auto Rigでコントローラを生成することで、エフェクトアーティストが単独で素早くアニメーションを実装したという。
複雑なパイプラインを自動化する独自システム「Process」
Storm Studiosでは、ベースとなるHIPファイルを1つ用意するだけで、各ショットに応じたモデルのバージョンや風の強さなどのアトリビュートを上書きしてレンダーファームへタスクを送信できる自動化システム「Process」を開発し、本作で運用。最新のアニメーションデータを自動取得し、RBDシミュレーション、USD形式でのキャッシュ出力、海藻のシミュレーション、そしてプレイブラスト(プレビュー用映像)の生成までを、依存関係に沿って一括処理できる。スタッフは退社前に全ショットの処理をファームに投げ、翌朝に一斉にクオリティチェックを行うというワークフローで、少人数チームながらも40カットにわたるショットを効率的にさばくことができたとのこと。
カーブシミュレーションとPath Deformを用いたツル植物の表現
講演終盤では、不気味に成長して対象物に巻き付くツル植物のセットアップを解説。Carveを徐々に描画して成長を表現する手法の場合、頂点数が変動してしまい、シミュレーション時に固定点(Pin)を設定することが難しくなる。そこで、一定の頂点数を保ったままカーブに沿ってメッシュを這わせるPath Deformを採用することで、安定したシミュレーションベースを確保している。
また、枝分かれする細かなツルに対する二次的なシミュレーションの工夫についても紹介している。海藻のセットアップと同様に、メインの枝をコリジョンとして利用しながら、特定のしきい値を超えて引き伸ばされたパーツは動的に削除することで、複雑に絡み合う有機的な構造を破綻なく描画している。
■Call of the Sirens: Percy Jackson S2 | Storm Studios | FMX HIVE 2026(YouTube)
https://www.youtube.com/watch?v=2xI9YHTAHN0
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