ドイツの空間体験設計の専門集団「jangled nerves」が、9月に東京に日本法人を設立することが決まり、国内屈指の技術者が集うテクニカルディレクター・コレクティブのBASSDRUMの所属メンバーである清水幹太氏が、代表に就任することになった。

体験に“物語”を宿す、空間設計のプロフェッショナル

jangled nerves社は、ドイツで権威のあるProfessor(教授)の称号を持つトーマス・フントと、インゴ・ツィルンギベルの二人の建築家によって1998年に設立された。その専門性を軸に、インタラクティブ技術やメディア表現、映像演出を自在に融合させた「没入型体験」の設計を得意とし、革新をもたらしてきた。

博物館や展示会、ブランドショールームから万博パビリオン、企業イベントに至るまで、多種多様なスケール・用途の空間に物語性を与える手腕には定評がある。これまでに、メルセデス・ベンツ、フォルクスワーゲン、ポルシェといった世界的自動車ブランドの体験施設や、DMG MORIの国際展示ブース、さらにBASSDRUMが技術支援を行った大阪・関西万博2025のルクセンブルク館など、グローバルに数々のプロジェクトを手がけてきた。

同社の理念は、「あらゆる形やスケールの没入型体験を創造する」というもの。空間、メディア、コミュニケーションの垣根を超え、観客の心を動かす体験づくりを追求している。

  • EXPO 2025 大阪・関西万博 ルクセンブルグパビリオン Photo by Wataru Aoyama ©BASSDRUM
  • ドイツ・ウンターウフルディンゲン パールバウテン博物館 ©Adrian Alexander | jangled nerves

日本法人設立の背景

アジアにおけるプロジェクト需要の高まりと、空間体験・デジタル表現の進化を背景に、同社は2019年、上海に中国法人を設立した。上海では商業施設や展示空間など多様なプロジェクトに取り組み、アジア市場におけるニーズの高さと可能性を実感。その成果を踏まえ、さらなる展開として、このたび東京に日本法人を設立する運びとなった。 日本法人は、ドイツ・シュトゥットガルト、上海に続くjangled nerves社の新たな拠点となり、代表にはBASSDRUMの清水幹太氏が就任する。

BASSDRUMと、アジア・欧州の連携によるシナジー

BASSDRUMは、国内外の第一線で活躍する技術のスペシャリストが集う、日本初のテクニカルディレクター・コレクティブである。大規施設等の体験システム設計、大手メーカーとの技術共創、AIやXRを用いたインタラクティブなコンテンツ設計、さらには研究開発型のプロトタイプ開発など、多岐にわたる領域において、プロジェクトの構想から実装・運用の段階までを担い、“技術監督”としてテクノロジーと表現をつなぐ役割を果たしてる。

今回、空間・建築に強みを持つjangled nerves社の日本法人設立により、両社の強みを掛け合わせた、以下のような新たな価値創出が期待される。

・空間・建築・インタラクション・映像を横断した複合的な体験設計
・建築と技術の融合によるR&D・プロトタイピング開発支援
・グローバルクライアント、欧州市場に対する日独共同提案体制の構築、および実行力の強化
・jangled nerves chinaとの連携を通じた、アジア全域にわたる事業展開・ローカライズの推進

各代表コメント

清水幹太氏

jangled nerves japan 代表 / BASSDRUM テクニカルディレクター

「"デジタルとフィジカルの融合"はかつて画期的なコンセプトとしてもてはやされていましたが、今や両者は切り離せない関係です。その融合の舞台が「空間」。jangled nervesは、バウハウスの系譜を受け継ぎつつ、デジタルと空間体験の融合を牽引してきました。BASSDRUMも、日本的クラフトマンシップで新たなものづくりを追求してきました。今回、国や分野を越えた協業を通じて、私たちは空間創造の未来に変革をもたらす新たな挑戦を始めます。」

トーマス・フント氏

jangled nerves CEO / 共同創業者

「私たちの協業は、万博のルクセンブルクパビリオンから始まりました。現地での実装に向けて緊密に連携し、価値観を共有できたことで強い信頼関係が築けたと感じています。この関係が協業へと発展し、日欧の新たなプロジェクトに取り組めることを嬉しく思います。“Be jangled”は、異文化や新しい視点に対して好奇心と情熱をもって挑む弊社の姿勢を表す言葉です。その精神で「jangled japan」と共に歩み出せるのが楽しみです。」