MSIは2026年10月29日、ビジネス向け上位シリーズ「PRO MAX」の新製品発表・体験セッションを開催した。5層タンデム構造のQD-OLEDパネルを採用した34インチウルトラワイドモニター「PRO MAX 341QPXW14G」と、同日発売のAIワークステーション「PRO MAX EDGE AI+」が紹介されたほか、映像監督のかとうみさと氏が登壇し、実機を試した感想を語った。
「作業そのものに没頭できる」PRO MAXシリーズ
MSIのビジネス向け製品には、幅広い業務に対応するスタンダードな「PRO」シリーズがある。PRO MAXはその一段上に位置づけられた戦略シリーズで、高性能ワークやクリエイティブ、上質なデスクワークを対象とする。シリーズ名の「MAX」には、現代性(Modernity)、加速(Acceleration)、体験(Experience)の意味が込められており、日常的に使っていて楽しいハードウェアを目指したという。
設計面で重視するのは接続性と多機能性だ。USB Type-C接続に加え、1組のキーボードとマウスで複数のPCを切り替えられるKVM機能など、作業環境をまとめやすい仕様をそろえている。2026年のラインアップとしては、ビジネス向けQD-OLEDモニターと、AMD Ryzen AI Max+ 395を搭載したAI PCが加わった。
第5世代QD-OLEDと低反射加工で作業向けに
新モデルのPRO MAX 341QPXW14Gは、解像度3,440×1,440(UWQHD)、最大リフレッシュレート144Hzの34インチモニター。MSIのQD-OLEDモニターとしては初めてフラットなウルトラワイドパネルを採用した。これまで同社は曲面モデルを得意としてきたが、作業用途を想定してフラットとした。本体は無骨さを抑えたホワイトデザインで、オフィスや自宅のデスクになじむ外観に仕上げている。
パネルは第5世代のQD-OLEDで、5層タンデム構造により従来製品と比べて明るさを30%向上させ、ピーク時1,300の高い輝度をより長く維持できるという。サブピクセル配列にはRGBストライプを採用した。従来の配列では白背景に黒い文字を表示した際などに文字のにじみが課題となっていたが、これを改善している。
表面には、MSIのゲーミングモニターで先行採用されていた「ダークアーマー・フィルム」を用いた。色かぶりを抑えつつ黒レベルを最大40%向上させ、耐傷性も従来製品の2.5倍に高めた。加えて独自の低反射技術「VisiClarity」により、ノングレアと同等の低反射を実現した。ウルトラワイドの広い表示領域は、動画編集ソフトのタイムラインを長く表示したり、作業中のソフトとは別に資料を並べたりする用途に向くと説明された。
Mac連携、3台対応KVM、2つの色域を並べる表示モード
今回の新しい取り組みとして紹介されたのが、macOSに対応したユーティリティ「MSI M-Mate」だ(WindowsではProductivity Intelligenceに対応)。ソフトウェア上からモニターの設定や入力切り替えを操作できるほか、MacBookに近い色味を再現するモードや、Mac側の明るさ・音量調整にモニターの輝度やスピーカーを連動させる機能を備える。
KVMスイッチは最大3台のデバイスに対応し、MacBook、ミニPC、デスクトップPCなどを1組のキーボードとマウスで切り替えて使える。Windows PC同士をつないでPbP(ピクチャー・バイ・ピクチャー)表示しているときに、モニターを介してPC間でデータを転送できる「KVM 2.0」も搭載。NASやクラウド、USBメモリを経由する手間を省ける。
クリエイター向けには、色精度をΔE≤2に抑えた工場出荷時のキャリブレーションに加え、画面を左右に分割して異なるカラープロファイルを表示する「デュアルガミュートモード」を用意した。例えばsRGBでWebでの見え方を、Adobe RGBで印刷時の見え方を、同時に確認できる。
OLEDの焼き付き対策としては「MSI OLED Care 3.0」を搭載。画面下部のNPUベースのAIケアセンサーが在席・離席を検知して自動で消灯するほか、24時間ごとのパネルプロテクトを電源オフ時やスタンバイ時に自動で実行する。
ローカルLLMを想定した小型AIワークステーション
同日発売のPRO MAX EDGE AI+は、容積約4Lの小型筐体にAMD Ryzen AI Max+ 395(16コア/32スレッド)を搭載したデスクトップPC。最大128GBのユニファイドメモリを備え、そのうち最大96GBをVRAMとして割り当てられるため、一般的なディスクリートGPUでは収まらない大型のモデルも扱える。ローカルLLMやAI推論のほか、ゲーム開発、コーディング、Web検索の自動化、AAAタイトルのゲームプレイなどを想定している。
MSIではGemmaやQwen、GPT系のオープンモデルなどで動作を検証済み。対話用途では毎秒20トークン程度出れば十分としたうえで、実質3.5bit程度に量子化した大型モデルでミニゲームを生成させた計測では、入力(プリフィル)が毎秒約660〜700トークン、出力が毎秒約40トークンだったという。AI処理時の消費電力は200W弱で、1kWhあたり30円で計算すると24時間稼働で約120円、30日で約3,600円になると紹介された。
かとうみさと氏「メモを横に表示しながら編集できる」
後半のトークセッションには、ミュージックビデオを中心にドラマや広告、商業映画まで手がける映像監督のかとうみさと氏が登壇。企画、絵コンテ、撮影、編集までを自ら担当しており、普段はMac Studioと16:9のモニターでAdobe Premiere Proを使って編集しているという。
事前にPRO MAX 341QPXW14Gを試したかとう氏は、まずウルトラワイドの横幅の広さに驚いたと語った。本体が薄くスタンドも細いため、周りに資料やノートPCを置く余裕がある点も評価。作業面では「編集後に修正や指示書が届くことが多い。いつもはノートPCを横に置いて対応しているが、ウルトラワイドならメモを表示しながら、その横で編集ができる」と効率の良さを挙げた。Premiereのタイムラインについても「広ければ広いほど作業しやすい」という。
画質については、黒の表現を高く評価した。一般的なモニターでは黒がつぶれて一緒くたになりがちだが、本機では黒のグラデーションがきれいで奥行きが感じられたとのこと。サテン生地を撮影した映像では、スマートフォンでは分からない素材感や質感まで伝わったと話した。
Macに近い色味を再現できる点については、カラーグレーディングの段階で役立つとの見方を示した。視聴者がMVを見るのはスマートフォンやPCが多いため、実際の視聴環境に近い色で確認できることに意義があるという。低反射性能も好評で、普段は映り込みを避けながら色を確認しているが、その手間がなくクリアに見えたと語った。
接続後すぐにキーボード操作へ移れる点や、キーボードから明るさや音量を調整できる点にも触れ、カフェで進めていた企画書の作業を自宅で続ける際などに便利だとした。最後にかとう氏は、細かなディテールを積み重ねるMVの制作において、色彩感や奥行きを表現できるモニターは心強く、作品のクオリティ向上にもつながるのではないかとまとめた。
主な仕様
PRO MAX 341QPXW14G
- 項目
仕様
- 画面サイズ
34インチ(21:9)
- 解像度
UWQHD(3,440×1,440)
- パネル
QD-OLED(第5世代、5層タンデム、RGBストライプ)
- 表面処理
ノングレア(VisiClarity)
- 最大リフレッシュレート
144Hz
- 応答速度
0.03ms(GTG)
- 彩度
300(ピーク時1,300)
- コントラスト比
1,500,000:1
- 色域
sRGBカバー率99.8%、Adobe RGBカバー率97.4%、DCI-P3カバー率99%
- 最大表示色
約10億7,300万色
- 視野角
178°(H)/178°(V)
- 入力端子
HDMI 2.1×2、DisplayPort 1.4a×1、USB Type-C(DP Alt mode、USB PD 98W)×1、USB Type-C(DP Alt mode)×1
- その他端子
USB 3.2 Gen1 Type-A(USBハブ)×4、USB 3.2 Gen1 Type-B×1、ヘッドホン出力×1
- スタンド
チルト-5°~20°、スイベル-30°~30°、高さ調節0~150mm
- 主な機能
MSI OLED Care 3.0、AI Care Sensor、KVMスイッチ 2.0、PIP/PBP、DisplayHDR True Black 500、FreeSync Premium Pro、スピーカー(3W+3W)
- 消費電力
使用時30W、スタンバイ時0.5W
- 本体サイズ(W×D×H)
約818×201×550mm
- 本体重量
約8.6kg
- 保証期間
3年間
PRO MAX EDGE AI+ 11M-008JP
- 項目
仕様
- OS
Windows 11 Pro
- CPU
AMD Ryzen AI Max+ 395(3GHz/Turbo 5.1GHz、16コア/32スレッド)
- GPU
Radeon 8060S グラフィックス(CPU内蔵)
- メモリ
128GB LPDDR5X(オンパッケージ、増設不可)
- ストレージ
2TB SSD(M.2 NVMe)、M.2 NVMe空きスロット×1
- 有線LAN
2.5GbE(Realtek RTL8125B)
- 無線LAN
Wi-Fi 7(IEEE802.11be)、Bluetooth 5.4
- 映像出力
USB4×2、DisplayPort 1.4a×1、HDMI 2.1×1(いずれも最大3,840×2,160/60Hz)
- フロントI/O
USB4(40Gbps)×1、USB 3.2 Gen2 Type-A×2、オーディオコンボジャック×1、SDカードリーダー(UHS-II)×1
- リアI/O
USB4(40Gbps)×1、USB 3.2 Gen2 Type-A×1、USB 2.0 Type-A×2、有線LAN×1、HDMI 2.1×1、DisplayPort 1.4a×1、オーディオコンボジャック×1
- 電源
300W
- 本体サイズ(W×D×H)
97.5×188.4×248.5mm
- 本体重量
約3.1kg
- 保証期間
2年間
※USB4ポートは電源入力非対応。製品の仕様、機能は国によって異なる
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