大塚製薬の健康飲料「ポカリスエット」の新TVCM「潜在能力は君の中。」篇が7月12日(金)より全国で放送開始された。出演は女優の池端杏慈氏と椿氏。監督は柳沢 翔氏が務めている。7月19日(金)18時30分より放送されるテレビ朝日の番組「ミュージックステーション 夏祭り3.5時間SP」では、120秒の特別版が公開される予定だ。
本CMは「考えるより先に動いてみよう。汗をかけば君の力は満ちてゆく。」というポカリスエットの思いを伝えるため、「ゲーム」を表現モチーフとして制作されている。主人公の2人が全力で120mの階段をかけ上がっていく様子に、ARでゲーム世界を融合させた演出が見どころだ。本撮影のため、屋外を走るカメラとAR空間を同期させながら撮影するシステムが開発された。
ポカリスエットCM「潜在能力は君の中。」篇
ARオブジェクトとキャラクターのデザインは、2000年代のポップカルチャーを象徴する田中秀幸氏を含む数名のデザイナーが担当。楽曲は、TikTokで若い世代から人気のTomggg氏とena mori氏によるコラボレーション作品だ。
技術開発はBascule、BASSDRUM、Fabrica.、CG/VFXはslantedが担当した。
全力疾走しながらiPhoneでAR撮影するシステムを開発
CM「潜在能力は君の中。」篇の技術紹介動画
本CMのキーメッセージは「潜在能力は君の中。」。生命力がデジタル世界を超えていく過程をリアルに捉えるために、カメラマンはARオブジェクトが見える状態で主人公の2人が全力疾走する様子を撮影している。
屋外を長距離かつ高速移動するカメラと精確な同期を担保するAR技術が見当たらなかったため、iPhoneに搭載されている「ARKit」をベースに、現実空間に配置した原点マーカーを基準にしてAR空間と同期するシステムが開発された。
AR空間の制作と現実空間との同期
AR空間は事前に3Dスキャンした撮影エリアのデータを基に、Maya上でオブジェクト制作とレイアウト作成が行われた。作成したMayaのデータは軽量化してUnityに移植し、ARシステムに組み込まれている。
撮影コースはいくつかのブロックに分割し、カメラが原点から離れるほど大きくなる誤差を事前補正するため、ブロックマーカーによるキャリブレーションも実施された。
実際にどういったAR空間が広がっているのか、Meta Quest 3で確認できるシステムも用意された。このシステムにより、監督やカメラマン、出演者をはじめとするスタッフがAR空間を直感的に感じ取り、オブジェクトの位置をフィジカルに把握して撮影することが可能になった。
iPhoneを使ったAR撮影システム
撮影には3台のiPhoneが使用された。各iPhoneは、ARKitによるカメラ位置推定、iPhoneの13mmワイドカメラにARオブジェクトを合成した超低遅延ARモニター、ポストプロダクション用の実景映像の記録を担当。これらの諸機能を同時並行して実行できるよう、3台を組み合わせた専用のカメラリグが作成されている。
ポストプロダクションでは、本撮影時に記録したカメラ位置データを基に、ARオブジェクトのモデリング、質感、レイアウトを再調整し、実景映像とコンポジットする作業が行われた。本撮影では技術的に難しかったオクルージョンは、コンポジット時にマスク処理で実現されている。
AR撮影のリアルなカメラワークはそのままに、夏の強い日差しを浴びるARオブジェクトの中を駆け抜けていく2人が表現された。
CGWORLD掲載情報
9月10日(火)発売の『CGWORLD vol.314』(2024年10月号)では、ポカリスエットCM「潜在能力は君の中。」篇の詳しいメイキングを掲載予定。お楽しみに!