東大松尾研発のAIスタートアップである株式会社ACESと、株式会社バンダイナムコ研究所は、AI技術を用いたキャラクターモーション作成に関する研究・開発プロジェクトを発足した。ACESはこれまで、スポーツや製造業、小売、保育など様々な業界にAIアルゴリズムの開発・提供を行なってきたが、エンターテインメント業界向けに開発・提供を行うのは今回が初となる。
詳細はこちら

■背景とねらい

昨今バーチャルキャラクター市場の拡大に伴い、キャラクターの属性や場面に応じた自然で多様なキャラクターモーションの作成需要が高まっている。バンダイナムコ研究所では、メタバース及びxR技術の研究を進めるうえで、様々なキャラクターで複数のモーションを検証する必要があり、そのためには膨大な数のモーションデータを用意しなければならないという課題があった。そこで、人の知見や行動のデジタル化に強みをもつACESの技術と、バンダイナムコ研究所のエンターテインメントにおけるモーション制作のノウハウを生かし、AI技術である「モーションスタイル変換」を用いて、より多様なキャラクターモーションの生成を手軽に行うための研究開発を本格的に開始する。キャラクターの自然で複雑な表現が可能になると、見ている側のユーザーはより深く感情移入することができるため、ゲームや映像などコンテンツの価値向上につながる。また、メタバースをはじめ、オンライン上でユーザー同士のコミュニケーションを活性化させることは、新しいエンターテインメントの創出にもなると考えているという。

■プロジェクトの概要

多彩なキャラクターモーションを生成するためには、AI技術である「モーションスタイル変換」を用いる。「モーションスタイル変換」とは、モーションを動作の内容を表す「コンテンツ」(例:歩く)と動作のニュアンスを表す「スタイル」(例:楽しそうに)に分解し、2つのモーションをかけ合わせたときに、一方のモーションの「コンテンツ」を維持し、もう一方のモーションの「スタイル」を反映した新しいモーション(例:楽しそうに歩く)を作成する技術のことを指す。エンターテインメント向けデータに適用可能な「モーションスタイル変換」モデルを作成するためには、多種多様なキャラクターのモーションのデータセットが必要になる。そのため、ACESがこれまで培ってきた人の行動をデジタル化する技術ノウハウを元に、バンダイナムコ研究所にて、プロの演者による移動や格闘などの動作に、喜怒哀楽の感情、老若男女といった属性はじめキャラクターらしさや状態に応じた個別のスタイルを適用させたモーションを撮影する。同プロジェクトでは、アルゴリズムを各種エンターテインメントに実装すべく研究開発を邁進していくという。