エンターテインメント業界を中心に、自動車、映像、建築など、さまざまな業界向けにデジタルコンテンツ関連ビジネスを展開するシリコンスタジオは、西松建設による山岳トンネルデジタルツインプラットフォーム構築において、ゲームエンジンを活用した可視化技術で支援した。
このシステムは、トンネル切羽で掘削作業を行っている重機の位置・姿勢、稼働状況、環境データ、設備稼働状況、作業員のバイタルデータなどをリアルタイムに統合し、現場全体を俯瞰的に管理することを可能とし、トンネル工事の効率化、安全性向上および生産性向上を実現する。
山岳トンネルデジタルツインプラットフォーム

山岳トンネルデジタルツインプラットフォームは、建設機器やトンネル内部の状態など複数の情報をリアルタイムに可視化することにより、各種情報の共有や課題の早期発見、安全性の確認やルートのシミュレーションなどを実現するために活用されるものである。
シリコンスタジオは、3Dグラフィックスで仮想空間にトンネルを再現し、現場トンネル内の「環境データ」および⼈・重機の「位置データ」を仮想空間にリアルタイムで取り込んで反映・表示する仕組み部分を開発した。開発にはゲームエンジン「Unity(ユニティ)」を使用している。

環境データは、温度、湿度のほか、風速、気圧、照度、CO2濃度、電流値などが含まれる。2DグラフィックスによるGUI(グラフィカルユーザーインターフェース)で表示・更新される仕様だ。
位置データは、トンネル切羽で掘削作業を行っている⼈・重機の位置や姿勢、稼働状態などが含まれる。専用クラウドからリアルタイムに転送されるROSデータをUnityでデータ変換処理し、3Dモデル化した重機本体およびパーツに反映することで、移動・回転などの動きを再現した。仮想空間内の重機はトンネル仕様のホイールローダー(サイドダンプバケット仕様)である。図面および点群データを元に3Dモデル化した。
画面表示は、4つの視点切り替え(自由視点、運転席視点、追従視点、切羽側視点)が可能。また、「通常モード」のほか、ワイヤーフレームと透過マテリアルによる「透過モード」に切り替えることもできる仕様になっている。
・ゲームエンジン:コンピューターグラフィックスによるコンテンツ開発に必要なライブラリやツールなどの機能がまとまった統合開発環境 ・ROS:ロボットアプリケーションを開発するためのオープンソースのフレームワークとツールセット ・点群データ:3Dレーザースキャナーなどで計測することにより得られる、無数の点の集合体として取得された座標情報(XYZ)と色情報(RGB)を持つ物体表面の形状情報
西松建設 山本氏コメント
弊社では西松DXビジョンを策定し、DXで実現する西松の姿として「現場力がシンカしたスマート現場」を目指しています。その中でも、特に山岳トンネル工事の無人化・自動化を重点テーマとして技術開発を行っており、デジタルツインからの自動化を目指したプラットフォームの構築を開始しました。デジタルツイン構築にあたっては「Unity」をはじめとしたゲームエンジンの活用が不可欠だと考え、過去に実績のあったシリコンスタジオ様にお声がけをしました。シリコンスタジオ様は我々が持つ課題を自分事と考えて、こちらが思いつかないアイデアや機能を提案してくれるので頼りにしています。今後も3次元点群データの活用や施工シミュレートなど山岳トンネルデジタルツインプラットフォームの機能を拡充し、山岳トンネル工事の自動化を目指します。
西松建設株式会社 技術研究所 土木技術グループ 上席研究員 山本 悟