ゲーム制作の導入からプロの現場まで広いシーンで活用されているゲームエンジン「Unity」。
特に初心者がPCを購入する場合、最低限作業ができるスペックは当然として、ほかに何を基準にマシンを選べばいいのだろうか。Flypot代表であり、普段からUnityでゲームエフェクト制作を専門的に制作している秋山高廣氏に、「パソコン工房」ブランドで知られるユニットコム推奨のマシン性能を検証してもらった。

TEXT_安田俊亮

10万円でも必要十分!GPUの性能次第で可能性がさらに広がる

パソコン工房スタッフ:秋山さんはエフェクターとして活躍されていますが、PC選びで重視するポイントはありますか?

秋山高廣氏(以下、秋山):まずはGPUですね。最近はGPUを駆使する作業の機会も増えてきたので、見逃せないポイントです。とはいえ、エフェクト制作の実作業では、GPUに負荷がかかりやすいシミュレーションまでカバーすることは多くありません。常に最新のものが必要かというと、そこまでではないですね。

パソコン工房スタッフ:やはりGPUなんですね。今回はUnityにこれから触れるような、初心者や学生を意識したモデルを3種類ご用意しましたが、使ってみていかがでしたか?

秋山:実際にUnityのプロジェクトでいろいろ試したのですが、エントリーモデルの時点でレスポンスはまったく問題ありませんでした。Unityのデモプロジェクト「The Heretic」を使って、全身から細かいエフェクトを出すキャラクターを呼び出してもみたのですが、Timelineでスクラブ再生してもとてもスムーズでした。

  • 秋山高廣氏

    エフェクター。コンポジターとしてCG制作スタジオに務めた後、フリーランスを経てゲームエフェクトを専門に制作・監修する合同会社Flypotを設立。事業に従事するかたわら、ゲームエフェクトデザイナーの育成にも精を出している。

    flypot.jp

パソコン工房スタッフ:エントリーモデルではCPUにCore i5-10400を搭載しています。Core i5は一般利用向けのイメージもありますが、今回使用した第10世代Core i5は6コア12スレッドあって、第8世代Core i7相当の性能です。GPUは売れ筋のGeForce GTX 1660 Superとして、価格は抑えながらミドルクラスのスペックを意識しています。スタンダードモデルは、CPUがCore i7- 10700、GPUはリアルタイムレイトレーシングにも対応したGeForce RTX 2060 Superを搭載しています。ノートPCの構成はスタンダードモデルと同程度のもので揃えました。どのモデルでも、Unityを使用する上で必要十分なパワーを実感いただけたのかなと思います。

秋山:エントリーモデルは10万円を切りますが、モバイル向けのゲーム開発はこれで十分ですね。ではどこで差がついてくるかというと、もっとGPU に負荷がかかるシーンかと思います。今回リアルタイムの流体シミュレータ「EmberGen」のサンプルシーンで検証したのですが、計算時間、描画時間の点でスタンダードモデル、ノートPCモデルが優位となりました。PCやコンソールゲーム向けの高スペックを必要とする制作作業だったり、次世代のパイプラインを意識するとスタンダードモデルやノートPCモデルは適しているのかもしれません。

パソコン工房スタッフ:そうですね。次世代、という点ではスタンダードモデルは拡張性も考慮しています。筐体はエントリーモデルよりひと回り大きいミドルタワーにして、電源は700Wのものを搭載しています。後から何か足したいな、というときも柔軟に対応できるのではないでしょうか。

秋山:それと静音性。私は個室でひとりで作業することが多いので、静音や排熱はPC選びのポイントのひとつです。しかしEmberGenで負荷をかけても、エントリーモデルとスタンダードモデルはとても静かでした。Unityで作業するならエントリーモデルでも安心して購入できますし、さらに一歩踏み込んで後々のことを考えるならスタンダードモデルに分がありそうです。ノートPCには持ち運びできるメリットがありますし、用途に合わせて検討していただけると良さそうですね。

POINT1:Unity配布のデモプロジェクトで検証 各モデル十二分なレスポンスを発揮

Unityでの検証は、デモプロジェクトの「Boat Attack」と「The Heretic」で行いました。Boat Attackは、これからのモバイル制作でのスタンダードになりそうな「ユニバーサルレンダーパイプライン」が使用されているデモです。モデルが豊富に置いてあるのですが、エントリー、スタンダード、ノートPCのどのモデルでもビルドにかかる時間やレスポンスに体感的な差はありませんでした。The Hereticでは、エフェクトが贅沢に使われているキャラクター「Morgan」のアセットで検証しました。全身から細かいエフェクトが絶えず吹き出していて、見た目からして計算負荷がかかりそうなMorganですが、3モデルとも動作は軽快。Timelineでスクラブ再生してもスムーズな動きを確認できました。スタンダードモデルとノートPCはもちろん、エントリーモデルでも十二分な性能があると言えます。(秋山氏)





※価格および各パーツのスペックは2020年10月時点の情報です。予告なく変更される場合があります。
製品購入はこちらから > www.pc-koubou.jp/cmg

POINT2:EmberGenで検証 スタンダードモデルがより快適に動作

Unityでの検証では性能に差が見られなかったので、リアルタイム流体シミュレータ「EmberGen」を使用してGPUに負荷がかかるシーンを試してみました。ピックアップしたのは3つのサンプルシーンで、それぞれ「火山噴火」、「竜巻」、「爆発」を表現したものです。参考にした数値は、EmberGenのタイトルバーに表示されるSim Time(計算時間)とRender Time(描画時間)。任意のフレームで見ていきました。また、より負荷をかけるために「竜巻」と「爆発」では解像度を2倍にしています。
結果から言うと、最も軽快に動作したのはスタンダードモデルでした。EmberGenはGPU駆動のシミュレータなので、負荷がかかるシーンほど順当にGPUの性能差が表われてきたのかなと思います。エントリーモデルでも動作はしますが、特に「爆発」では計算時間も描画時間もスタンダードモデルはエントリーモデルの約半分の時間で済んでいます。
EmberGenのような、GPUに高い負荷がかかる作業を連続させるとなると、スタンダードモデルやノートPCの方が優位なようです。Unityの作業としてはエントリーモデルでも十分ですが、例えばモデリングにも挑戦したいなど、ほかにもいろいろやりたいことがあるならスタンダードモデルやノートPCはいい受け皿になってくれそうですね。そこはケースバイケースで、自分に合うマシンを選んでいただければいいと思います。(秋山氏)





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