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3DCGの主要レンダラとして、多くのCGスタジオで使われてきたV-Rayが、新たにV-Ray Nextとしてメジャーバージョンアップをはたした。ポータルライトを不要とするアダプティブ・ドームライトや、毛髪の生え方や色味をプロシージャルで表現するフィジカル・ヘアシェーダなど、数々の新機能を備えてのリリースだ。その実力を、老舗CGスタジオのオムニバス・ジャパンに徹底検証してもらった。

TEXT_小野憲史 / Kenji Ono
PHOTO_弘田 充 / Mitsuru Hirota

  • Endeavor Pro5900 3DCG制作Select
    OS Windows 10 Pro 64bit
    CPU インテル® Core™ i7-8700K プロセッサー(3.7GHz)
    GPU NVIDIA® : GeForce® GTX 1080 Ti
    メモリ 64.0GB(16.0GB×4) PC4-2666 DDR4 SDRAM
    ストレージ インテル® Optane;&trade メモリー 32GB + 2TB HDD 7200rpm
    shop.epson.jp/pc/creator

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TEL:03-5215-5654
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基本性能はそのままにGPU対応が進化

mental ray、V-Ray、Arnold、Redshiftなど、戦国時代が続くレンダラ事情。もっとも、CGスタジオにとっては、レンダラだけでなく、レンダラにまつわるノウハウも重要な資産だ。特に日本のCGスタジオでは、mental rayからV-Rayに移行した例が多い。こうした中、次世代V-RayともいえるV-Ray Nextが3ds MaxとMaya向けにリリースされたことに対して、高い関心を示した業界人も多いだろう。

  • 山口翔平氏(テクニカルディレクター)

  • 坂田昌一氏(プロデューサー)

『DIC 企業ブランドCM「世界を彩りで変えていく。」篇』等のTVCM案件を中心に映画・イベントなど、多方面でハイエンドな実写VFXを展開するオムニバス・ジャパンも、V-Rayを主要レンダラとして採用してきたスタジオのひとつだ。同社でCGディレクターを務める河村有恒氏は、「V-Ray NextはV-Rayのバージョンアップ版で、操作感などもそのままです。過去のノウハウもそのまま引き継げます。V-Rayを長く使ってきたスタジオには、福音ではないでしょうか」と評価する。 機能面ではポータルライトを不要とするアダプティブ・ドームライトや、メラニン色素という概念を導入し、プロシージャルで毛髪表現を行うフィジカル・ヘアシェーダなど、数々の新機能が備わった。それと共に強化されたのがGPUベースでのレンダリングだ。それまでCPUベースでしかできなかったBucket処理が、GPUベースでも可能になった、などはその一例である。そこで今回は、CPUとGPUでの処理速度のちがいを中心に検証が行われた。

具体的には、同社で主力機として使用されているワークステーションと、エプソンのクリエイターPCを検証機として用意し、前者にQuadro、後者にGeForce搭載グラフィックスボードを装着して比較した。前者は約140万円、後者は約50万円の構成となる。結果は驚くことに、両者の性能が伯仲し、項目によっては後者が高いスコアを収めた。特にGPUベースでの処理でその傾向が強く、あらためてV-RayのGPU対応が非常に強力であることが示された。

  • 河村有恒氏(CG ディレクター)

もっとも、CPUベースとGPUベースでは処理が異なるため、厳密に同じレンダリング結果が得られたわけではない。特に透過や屈折が多い3Dモデルでは、ルックが大きく異なる傾向が見られた。一方で、今回の検証では見送られたが、流体表現などではGPUベースでの処理が大いに力を発揮するのも事実だ。テクニカルディレクターの山口翔平氏も「モデルや用途に応じて使い分けが必要になります」と分析する。

一方、河村氏は「V-Ray NextでCG制作の自由度がぐっと高まりました。これまで弊社ではV-RayやArnoldをはじめ、CPUベースのレンダラ向けに機材投資を行なってきましたが、今後はGPUへの投資も検討したいですね。プリビズはGPUベース、最終レンダリングはCPUベースで行うなどの切り分けも考えられます」と評価した。3DCG制作が過渡期を迎える中で、全方位に使えるV-Ray Nextの特性は、多くのCGスタジオの事情にも即しているのではないかという。

また、約50万円のPCが約140万円のワークステーションを凌駕するスコアを記録したことに、同社スタッフも改めて驚きを禁じ得ない様子だった。もっとも、プロユースのQuadroとコンシューマユースのGeForceでは、安定性や耐久性に大きなちがいがある。しかし学生やアマチュア用途では、GeForceとV-Ray Nextの組み合わせが高い効果を発揮するだろう。いずれにしても、目的に即した機材選びが重要だと言えそうだ。

01 CPU vs GPU

V-Ray Nextでは、それまでCPUベースでしかできなかったBucket処理がGPUでも可能になった。そこで最初の検証では同じ3Dモデルに対してCPUベースとGPUベースとで、レンダリングの時間を計測してみた。サンプルとして用意されたのは、透明なガラス状の物質を組み合わせた立体構造物だ。その結果、CPUよりもGPUでレンダリングした方が1/10~1/2の時間で終了するなど、圧倒的な差が出た。特にEndeavor Pro5900ではCPUで21分52.4秒かかっていたものが、GPUのBucketモードだと57.5秒で終了しており、最も高い効果が出ている。ただし、CPUとGPUとでレンダリング結果は異なった。CPUでは複雑に反射している効果を得られたが、GPUでは反射の回数が減っており、ルックが異なってしまったのだ。これはGPUがCPUで出力できるすべてのレンダリング成分を網羅していないためで、コースティクスのように屈折や透過が大きな表現をCGで表現するには、CPUベースでのレンダリングが適しそうだ。逆に屈折や透過が少ない表現であれば、GPUベースでCPUと同じ結果を出すことができる。

02 Adaptive Domelight

V-Ray Nextの目玉機能のひとつであるアダプティブ・ドームライト。自動的にシーンを分析し、よりノイズが少ない室内向けのイメージベースド・ライティング照明を提供するというものだ。実際、V-Ray 3.6までは室内のような閉鎖空間をレンダリングする際、そのままではrayが室内に回りきらず、全体的に暗くなる傾向にあった。そのため、補助的にポータルライトなどを設置する必要があったが、V-Ray Nextでは本機能の搭載により、チェックボックスを入れるだけで室内を適切な明るさでレンダリングすることが可能になっている。実際に検証したところ、アダプティブ・ドームライトを使用すると作業時間が格段に短縮しただけでなく、人の足下に落ちる影なども正しく再現された。また、Endeavor Pro5900でCPUベースとGPUベースでも処理時間の差を計測したところ、GPUベースでの処理の方がおしなべて作業が高速化された。実際、CPUベースでprogress処理を行い、アダプティブ・ドームライトをOFFにすると22分29.9秒かかっていた処理が、GPUベースでBucket処理を行い、アダプティブ・ドームライトをONにすると1分47.1秒で終了した点には驚かされる。もっとも、V-Ray 3.6とV-Ray NextによるCPUレンダリング比較でも、V-Ray Nextではレンダリング速度が上がっているとの検証結果が得られた。より幅広いスタジオで恩恵が受けられそうだ。

03 Hair Next

V-Ray Nextでは新たにフィジカル・ヘアシェーダが搭載され、毛並みや色などがプロシージャルで自動生成可能になった。その結果、これまで毛髪を作成する際、テクスチャアーティストが個別にマテリアルを作成していたものが、メラニン色素というパラメータの設定だけで、ブロンドからブルネット、赤髪まで、あらゆる髪の色を簡単に表現できるようになっている。レンダリング後の質感も明らかに異なっており、それまでベタッとした毛並みだったものが、毛の1本1本を確認できたり、彩度や明度が異なる毛が一定の割合で混じったりと、非常にリアルなものになった。ただし、レンダリング時間も従来のものより2~3倍必要になっており、クオリティと時間とでトレードオフがみられたのも事実だ。なお、他の検証と同じく、Hair Nextの使用時もCPUベースよりGPUベースの方が2~3倍の時間短縮が見られる。本機能をフルに活用するには、GPUへの適切な投資が求められそうだ。

Hair Next



  • Hair 3



  • Hair Next parameter(メラニン色素)

04 CUDA Bucket Rendering

すでに検証したように、CPUとGPUではレンダリング時の演算アルゴリズムが異なるため、屈折や透過が多用されると、最終的なレンダリング結果が異なる傾向がみられる。一方で静止画では気づかなくても、動画にした場合ノイズやちらつきが目立つこともある。そこで改めてEndeavor Pro5900を使用し、CPUベースとGPUベースで30フレーム(1秒)の連番ファイルを作成。作業時間と結果を比較してみた。まず作業時間では、予測通りGPUベースが圧勝し、レンダリング結果もルックが異なった。しかし、ノイズやちらつきなどは、動画でもほとんど見られなかった。こうした結果から、少なくともレンダリングの事前確認では、GPUベースで作業を行った方が、圧倒的な作業効率向上に貢献するといえそうだ。また、屈折や透過が少ない表現では、積極的にGPUベースを使用した方が、クオリティアップに貢献すると考えられる。プロジェクトの内容によって切り替えが求められるだろう。

V-Ray Next検証/CPU&CUDA(bucket)動画



  • CPU(bucket)



  • CPU(progressive)



  • GPU(bucket)



  • GPU(progressive)

05 IPRの高速化

IPR(Interactive Photorealistic Rendering)は、インタラクティブにプレビュー操作が行える機能のこと。本機能はV-Ray 3.6でも搭載されていたが、V-Ray Nextでさらに強化された。V-Ray 3.6をインストールしたHP Z640 Workstationと、V-Ray NextをインストールしたEndeavor Pro5900で使用感を比べたところ、前者ではマウスを移動してクリックを離すと、その場で再計算される程度に留まった。これに対して、後者ではほぼリアルタイムなプレビューが可能になったのだ。V-Ray Nextではカメラの動きやオブジェクトの回転、環境光の動きなどもインタラクティブに追随しており、より作業効率の改善に貢献することが期待できる。

V-Ray Next/IPRスピード比較動画

06 AIデノイザー

デノイザーは名前の通りノイズを除去する機能で、V-Ray 3.6でも搭載されていたもの。これがV-Ray Nextでは、新たにNVIDIAのAIアルゴリズムを活用し、NVIDIA AIデノイザーとして生まれ変わった。同社のディープラーニング技術を活用し、AIがシーンの内容を推測してリアルタイムにノイズを除去してくれるというもので、特にプレビューなどのリアルタイム処理で効果を発揮する。実際に使用したところ、アルゴリズムの推測精度がかなり高く、十分に実用的だと感じた。こうした特性からIPRと併用して使用すると、より効果が発揮されると思われる。もっとも、単にノイズを除去するだけなら、レンダリング後にコンポジットで除去した方が確実なのも事実。そのためAIデノイザーはプレビュー用途向きだと言えるだろう。また、使用にはNVIDIAのCUDA(GPU)が必要なので、その点は注意が必要だ。

07 Auto Exposure / WhiteBalance

V-Ray Nextではフィジカルカメラが復活し、UIが整理されると共に、新しい自動露出と自動ホワイトバランスがサポートされた。Mayaや3ds Max上で絞りを変更すると、それにあわせて自動的に背景のボケ感が変更され、シャッタースピードも最適なものになるなど、スマートフォン感覚でレンダリングができる。フルCG制作などで重宝しそうな機能だ。プリビジュアライゼーションで作成したシーンで、露出だけを手軽に変更し、暗めのシーンを明るくしたり、ホワイトバランスを修正したりといった用途にも向くと思われる。



  • Auto Exposure <OFF>



  • Auto Exposure <ON>

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