>   >  リードアニメーター 小島淳嗣が語る、ILMシンガポールにおけるアニメーターの役割とは。SIGGRAPH Asia 2018<4>
リードアニメーター 小島淳嗣が語る、ILMシンガポールにおけるアニメーターの役割とは。SIGGRAPH Asia 2018<4>

リードアニメーター 小島淳嗣が語る、ILMシンガポールにおけるアニメーターの役割とは。SIGGRAPH Asia 2018<4>

SIGGRAPH Asia 2018フィーチャードセッション"Behind the scenes of Solo - A Star Wars Story Nigel Sumner"登壇のために来日したIndustrial Light & Magic Singapore(以降、ILM シンガポール)のリードアニメーター 小島淳嗣氏。ILM シンガポールで参加した作品には、『パシフィック・リム』『スター・ウォーズ/フォースの覚醒』『キングコング:髑髏島の巨神』『レディ・プレイヤー1』をはじめ、『アベンジャーズ』シリーズ、『トランスフォーマー』シリーズなど、実に数多くのビッグタイトルが並ぶ。そんな小島氏にこれまでのキャリア、そしてILM シンガポールにおけるアニメーション制作について話を聞いた。

※本インタビューは、2018年12月6日に実施した取材内容に基づきます。

TEXT_石坂アツシ / Atsushi Ishizaka
PHOTO_弘田 充 / Mitsuru Hirota



Animation Reel 2018 from Atsushi Kojima on Vimeo.

『レディ・プレイヤー1』の序盤、主人公ウェイドの友人エイチが惑星ドゥームで戦っている様子をワンカットで追いかけるシーンを覚えているだろうか? フレディ・クルーガーが瞬殺されるシーンと言った方がわかりやすいかもしれない。あの長いショット内の全てのアニメーションがILM シンガポールの小島氏によるものだという。

ーー撃たれたキャラからコインが散らばりますが、あのコインはエフェクトアーティストの担当ですか?

小島淳嗣(以下、小島):最終的に見えているコインはエフェクトですが、コインが飛び出るタイミングや減り方をアニメーターが指定する必要があることと、散らばるコインをゲットするエイチの動きとのインタラクションがあるのでコインの動きもアニメートしました。

ーーこういった難しいショットは他にも担当されたことがありますか?

小島:『トランスフォーマー』シリーズではトランスフォームしながら戦闘につながる、という難しいショットを担当したのですが、それは自分がリグのこともわかるしアニメーションもできる、という技術に強かったからこそ巡ってきたチャンスだと思っています。そういった難しいショットを担当して、確かな実績を重ねることでリード・アニメーターを務めるようになりました。

ーーリード・アニメーターになったのはどの作品からですか?

小島:『ハン・ソロ/スター・ウォーズ・ストーリー』からです。

ーーリード・アニメーターの仕事内容はどのようなものですか?

小島:ショットのアニメーションを作成するという点では他のアニメーターと何ら変わりません。強いて言えばアニメーションの難しいショットを担当する、ということでしょうか。アニメーターは一番上にアニメーション・スーパーバイザーがいて、アニメーションの方針や動くスタイル、スケジュールなどを決めます。リード・アニメーターはそのサポートをしつつ、アニメーターたちの相談にのって問題を解決します。

ーーどのような相談にのるんですか?

小島:主にクオリティ面の相談ですかね。しっくりくる動きになるまでとことん詰めます。

ーーアニメーターが担当するのはショット単位でしょうか?

小島:そうです。ショットの中に存在する動きは全て、そのショットを担当するアニメーターが動かします。

ーーショットの中に特徴のある動きのキャラクターが登場する場合もありますよね。

小島:まず(アニメーション)スーパーバイザーがキャクターの大まかな動きの方向性を決め、リード(アニメーター)が具体的なモーションを作ります。そうして作られたキャラクターごとの個性に沿ってアニメーターが動きをつけていきます。タイトルによってはキャラクターごとのリードがいて、担当するキャラクターの動きだけをチェックする場合もあります。

ーー小島さんは元々システムエンジニアだったことから、C++、Python、MELにも精通していらっしゃるそうですね。

小島:はい。そのこともあり、リード・アニメーターと兼任でILM シンガポールのエリア・テック・リード(Area Tech Lead)もやっています。サンフランシスコ、バンクーバー、シンガポール、ロンドンにあるILM全社が様々なツールなどの技術開発をしているわけですが、その内容がダブらないように連携するのがエリア・テック・リードの役割です。

ーーエンジニアとしてのキャリアを今でも活用されているわけですね。

小島:そうですね。例えばバンクーバーでこういった開発をしているので、その方向はまかせてシンガポールではこういったことを開発しよう、というR&Dの方向を各地のエリア・テック・リードと相談しながら決めています。



ーーCG制作者としてのキャリアのスタートは、ポリゴン・ピクチュアズだったとか。

小島:エンジニアとして3〜4年働いた後、一念発起してサンフランシスコのAcademy of Art Universityで2003年からアニメーションについて本格的に学びました。卒業を機に日本に帰ることになったのですが、その時にボストンのSIGGRAPHでポリゴン・ピクチュアズ代表取締役社長の塩田周三さんにお会いしてリガーを求めている話を聞きました。僕はプログラムを組めましたし大学でリグもやっていたのでリガーとして2006年9月にポリゴン・ピクチュアズへ入社し、TVシリーズのアニメーションなどいろいろなプロジェクトを担当しました。

ーー2007年11月にはWhite Sharkというプロダクションへ移籍されました。スウェーデンのプロダクションのようですが、どのような経緯で?

小島:当時スウェーデンのストックホルムにあった会社なのですが、"Gnomes and Trolls: The Secret Chamber"というセルパッケージ用のアニメーション長編を制作していました。その頃に、友人から誘われてアニメーターとして入社したのです。やはりアニメーションをやりたいという気持ちが大きかったですね。そのタイトルが終わる間際に、タイ人の友達がルーカスフィルム・アニメーション・シンガポールが求人している情報を得て、僕のデモリールも送ったんです。そうしたらそれが通って入社したという、まるでアイドルのオーディションみたいな話です(笑)

ーー当時ルーカスフィルム・アニメーション・シンガポールに日本人のスタッフはいましたか?

小島:いいえ、日本人は僕ひとりでしたね。

ーーそこで担当されたのが『スター・ウォーズ/クローン・ウォーズ』ですね。

小島:ルーカスフィルム・アニメーションはTVシリーズの『クローン・ウォーズ』を制作している会社で、そこでシーズン1と2のアニメーションを担当しました。TVシリーズの作業はスピード重視なので、それが大変でしたね。

ーー『クローン・ウォーズ』には個性的なキャクターが多数登場しますが、それらの動きをスピード重視の作業の中でおこなうためにライブラリを活用したりしましたか?

小島:キャラクターごとにおおまかな動きのガイドラインはありましたが、アニメーターはそれに沿うようにしながらショットごとにアニメーションを作成します。なので、ライブラリがあってそれをはめるだけ、ということはありません。アニメーションが組みあがったショットは、リードとスーパーバイザーが動きの統一感を持たせるために細かくチェックします。

ーー2009年に現在もお勤めのILM シンガポールへ移籍されたわけですが、これはどういった経緯ですか?

小島:同じグループですが、ルーカスフィルム・アニメーションはTVシリーズがメイン、ILMは映画をメインに制作しており、映画『ランゴ』の制作時に社内でILMの募集があったことから、希望を出して移籍しました。



ーーアニメーション制作において心がけていることを教えてください。

小島:アニメーションに大切なのは「ビリーバビリティ(believability)」だと思います。その世界で起こっていることが本当に起きていると観客に錯覚させることです。そこにはアニメーション以外の部分も関与してきますが、時系列に沿って何がどこにあるのか、という要素においてはアニメーターの作業によるものが圧倒的に大きいんです。なので、「ビリーバビリティ」を実現するためには何でもする、妥協せずに詰めていく、それがアニメーターの本分だと思っています。

ーー「ビリーバビリティ」を実現するために必要な要素や考え方は何かありますか?

小島:「サブフレーム」という考え方が重要です。映画のアニメーションは1秒24フレームで動きますが、現実社会は24コマで動いているわけではありません。例えばガトリング砲。複数の銃身が回転して発砲するわけですが、あれほど速い速度の回転だとフィルムに捉える瞬間が変わるはずです。それを24で区切られたフレームでアニメーション作成すると、毎回同じタイミングで発砲される「解像度の低いアニメーション」になってしまうんです。鳥のはばたきもそうですね。常に同じフレームではばたいているわけではありません。そういった、24フレームに縛られない「サブフレーム」の考え方が「ビリーバビリティ」を実現させるんです。

ーーアニメーション表現技法の業界トレンドについて私見をお聞かせください。

小島:リアルタイムレンダリングが注目されていますが、僕はARに興味がありますね。元々ボードゲームが好きなんですが、それは触覚を伴うゲームだから、というのもあるんです。でもボードゲームはビジュアルとサウンドが弱いんですね。その部分をARで拡張することができると思っています。

ーー最後に次回作を教えていただけますか?

小島:2020年の夏に公開予定の『ジャングルクルーズ(原題:Jungle Cruise)』に、リード・アニメーターとして参加します。

ーー楽しみにしています。どうもありがとうございました!

Profileプロフィール

小島淳嗣/Atsushi Kojima(Industrial Light & Magic Singapore)

小島淳嗣/Atsushi Kojima(Industrial Light & Magic Singapore)

1998年9月からGatewayでシステムエンジニアにとしてのキャリアをスタート。2003年に一念発起して、サンフランシスコのAcademy of Art Universityでアニメーションを学ぶ。卒業後、2006年9月にポリゴン・ピクチュアズへ入社。リガーとして、CG制作者へ転身する。2007年11月にはWhite Shark Media AB(スウェーデン)でアニメーターとしての活動を開始。2008年3月にLucasfilm Animation Sinaporeへ移籍。2009年8月にIndustrial Light & Magic Singapore(ILM シンガポール)へ移籍、リードアにメーターとして活躍中。

スペシャルインタビュー