>   >  『恐竜超伝説 劇場版ダーウィンが来た!』、"リアルサイズ"の恐竜を蘇らせる音響制作の職人技とは?
『恐竜超伝説 劇場版ダーウィンが来た!』、"リアルサイズ"の恐竜を蘇らせる音響制作の職人技とは?

『恐竜超伝説 劇場版ダーウィンが来た!』、"リアルサイズ"の恐竜を蘇らせる音響制作の職人技とは?

NHK人気自然番組『ダーウィンが来た!』(毎週日曜19:30〜20:00)の劇場版第2弾『恐竜超伝説 劇場版ダーウィンが来た!』が、2020年2月21日(金)より全国ロードショーされる。NHKではこれまでにも自然・科学番組で様々な3DCGの恐竜を制作してきた。本作はそれらの映像をふんだんに使い、テレビ放送では実現できなかった恐竜を"リアルサイズ"で映し出す。そこでの実存感を支えているのはサウンドにほかならない。一歩一歩の重量感や捕食の際の咆哮音、あるいは愛くるしい子供恐竜の鳴き声などを駆使し、この世界へと没入させてくれる。こうした映像と音響の両輪はどのようにつくられたのか、本作の植田和貴監督と音響監督・山田正幸氏に話を聞いた。

TEXT_日詰明嘉 / Akiyoshi Hizume
EDIT_山田桃子 / Momoko Yamada
PHOTO_弘田 充 / Mitsuru Hirota

『恐竜超伝説 劇場版ダーウィンが来た!』
2020年2月21日(金)全国ロードショー
kyouryu-darwin.com

<1>映画編集の不安から解き放ってくれた音響効果の役割

「デイノケイルスとタルボサウルスが戦うシーンなどはまさに"等身大"サイズ。これまでずっとテレビ番組をつくってきたので、今回映画として圧倒的に大きなスクリーンで観客の方にお見せすることができ、感慨ひとしおです。この劇場版でしか体験できない映像を楽しんでいただきたいと思います」と、語る植田和貴監督。『恐竜超伝説 劇場版ダーウィンが来た!』(以下、『恐竜超伝説』)は、植田監督の5年間の集大成的な「映画」になった。

© NHK

本作は、NHKスペシャル『生命大躍進』(2015)、『ダーウィンが来た! 史上最強!ティラノサウルスの真実』(2017)、『8Kで完全再現!これが恐竜王国ニッポンだ!』(2018)、NHKスペシャル『恐竜超世界』(2019)で登場した様々な地域の陸地と海洋の古代生物たちのCG映像部分に未公開カットなどを加え、1本の映画に構成されている。これらの番組で扱ったのはいずれも隕石が落ちて恐竜が絶滅する直前の時代。地域も日本、北アメリカ、北極圏、アジア地域、海中と多彩な背景が舞台になっており、まるでその頃の地球をカメラスイッチングするかのように観ることができる。

© NHK

NHKの自然番組や科学番組では通常、研究者の解説が挿入されるが、この映画では当時の地球を眺めるかのような没入感をコンセプトにしており、恐竜をはじめとした古代生物のCGシーンのみで構成した。ドキュメンタリーや科学番組というようりも、まるで恐竜たちを主人公にしたドラマ作品であるかのように描いているため、TV放送時にあったナレーションはできるだけ削ぎ落としている。また、作中ではティラノサウルスはマックス、デイノケイルスはニコといったネーミングをしていたり、恐竜の親子関係を描いたりと、キャラクターとしての親しみを出して感情移入しやすく描いているのが従来の「恐竜映画」にはなかった本作ならではの特徴といえる。

© NHK

「今作では恐竜にCGアニメーションで仕草をさせることで、人間のような感情表現をさせています。これはドラマの脚本家に入っていただくなかでアドバイスをいただいたことです。恐竜は当然ながら人間とは異なり表情がありませんから、実際に笑うようなアニメーションをつけたりナレーションで解説を加えたりはしていません。しかし、例えばデイノケイルスが他の恐竜に卵を取られたときに宙を仰ぐといった仕草を見せることで、視聴者は悲しみを覚えます。そうした感情移入させる芝居を本編の様々な箇所で行なっています」(植田監督)。

  • 植田和貴/Kazuki Ueda
    株式会社NHKエンタープライズ チーフ・ディレクター。1997 年日本放送協会(NHK)入局。釧路放送局、制作局科学環境番組部、大型企画開発センター等を経て現職。主な担当番組に、『ダーウィンが来た!』:「バシリスク」、「ハチドリ」、「ティラノサウルス」、「丹波竜」、『NHKスペシャル』:「恐竜VS ほ乳類」、「恐竜絶滅 ほ乳類の戦い」、「火星大冒険」、「メガクエイク2」、「生命大躍進」、「世紀の発見! 日本の巨大恐竜」、「恐竜超世界」などがある

また、この映画づくりにおいては"音"がさらに重要になった。プロダクションに際しては音響制作のスタイルが従来と異なり、CGアニメーション制作途中から着手したという。その理由として植田監督は本作における編集の難しさを語った。
「CGがまだダミー段階で、無音で編集をするとどうしても『これでは画面がもたないのでは?』と不安になって、せっかく全編CGアニメーションにしたいと考えても、ついカットを短く切ってしまいがちです。そのため今回はCGがダミーの段階であっても、あえて音響制作の山田(正幸)さんに生音を付けていただき、完成映像により近いかたちにして編集作業をさせていただきました。その結果、じっくりと構成・編集を行うことができました。映像と音響は両輪であると痛感しました」。

山田氏も「この作品をつくることでNHK音響デザイン部の意識が変わったと思います。これまでは映像が仕上がってから担当者を決めていたのですが、CG制作やそれに伴う作業の大変さが部署全体にも通じるようになり、今回のように先に音を付けた方が、映画や先々の展開を進めるにあたり有効だという判断をされるようになりました」と、作品づくりの影響を語る。
また、映像が進化するにしたがって音響効果のつくりにもより繊細さが求められているという。本作では具体的にどのような音づくりをしていったのか、続いて説明をしていただいた。

  • 山田正幸/Masayuki Yamada
    NHK デザインセンター 音響デザイン部 副部長。BSプレミアム『これが恐竜王国ニッポンだ!』(2018)より、植田氏が演出を手がける「恐竜」番組の音響監督を務めている

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<2>ティラノサウルスの咆哮音 6種の合成音の元ネタとは?

Profileプロフィール

監督・植田和貴、音響監督・山田正幸

監督・植田和貴、音響監督・山田正幸

右より、植田和貴氏(NHKエンタープライズ)、山田正幸氏(NHK)

スペシャルインタビュー