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リアルタイム性とクオリティ両面が高水準で求められるビジュアライゼーション業務。ソフトウェアの進化に伴って求められるPCスペックも上昇傾向にある。ビジュアライゼーション領域の先進企業、日南に高コストパフォーマンス機として注目をあつめるAMD Ryzen 9 3900XT搭載のマウスコンピューター機「DAIV A9」の実力を検証いただいた。

TEXT _神山大輝(NINE GATES STUDIO)、PHOTO_日南より提供

VRED、Gravity Sketch、Unity、Fusion 360を用いて
AMD Ryzen 9 3900XT搭載機の実力を徹底検証

本企画の検証パートナーは自動車などの産業向けデザイン開発やモックアップ制作を主幹事業として、製品開発におけるあらゆるプロセスをトータルにサポートする開発総合支援企業、日南だ。
ハイエンドな3DCG制作やVR開発を得意としており、特にビジュアライゼーションにおいては業界内でも一日の長がある。同社には30名規模のデザインスタジオおよびUXデザインスタジオが存在し、Aliasをベースとしながら、VRED、KeyShot、Gravity Sketch、Fusion 360、ZBrush、Unityなど幅広いツールを用いて制作を行っている。

「事業の特性上、業界やお客様ごとにツールはさまざまで、データ形式も都度違う場合が多いため、使用ツールも必然的に多岐に渡っています。ベースのデザイン業務はAliasが中心ですが、作る対象が大型のものであればGravity Sketchを用いますし、汎用的なモデリングにはFusion 360など、その中から最適なものを選んで使用するようにしています(橘田氏)」。デザイン業務だけでなく生産業務にまで範囲が及ぶため、クライアント各社の制作スタイルに適応するべく、オペレーション可能なソフトウェアの種類が一般的な3DCGスタジオに比べて遥かに多い。

固めの画作りやガラスなど透明表現を重視するのであればVREDを使い、空気感が柔らかくエモーショナルなレンダリングを目指す場合はKeyShotを用いるなど、提案する業界や用途に応じてルックを変えていくことも重要とのこと。数多くのツールを自在に使いこなす日南ならではの特徴とも言えるだろう。結果、通常業務で用いる機材も、CPU・GPUともに高水準でバランスを意識した構成となっている(※各検証パート参照)。

今回はAMD Ryzen CPU搭載のマウスコンピューター機を「VRED」「Gravity Sketch」「Unity」「Fusion」の4ツールで検証していただいた。検証機のスペックはAMD Ryzen 9 3900XT(12コア/24スレッド)メモリ64GBGeForce RTX2080 Superと、3DCG制作の現場を強く意識した構成。
検証を担当したのはデザインスタジオ アシスタントチーフデザイナー峯崎栄治氏、UXデザインスタジオ エキスパートデザイナー 橘田幸一氏、UXデザインスタジオ UXデザイナー 福富康平氏の3名で、いずれも現場の第一線で活躍するアーティストだ。

下記にて検証結果のまとめを紹介する。ぜひ、今後の機材選定の参考にしてもらいたい。

▼検証機:マウスコンピューター「DAIV A9 シリーズ」

  • OS
  • Windows 10 Home 64 ビット
  • CPU
  • AMD Ryzen™ 9 3900XT
  • グラフィックス
  • GeForce® RTX 2080 SUPER™(BTOにてカスタマイズ)
  • メモリ
  • 64GB PC4-25600(BTOにてカスタマイズ)
  • ストレージ
  • M.2 SSD 1TB (NVMe対応)
  • 拡張カード
  • Thunderbolt™ 3
  • 電源
  • 800W 【80PLUSR TITANIUM】
  • 価格
  • ¥229,800~(※)

(※)検証機はBTOにて構成しています。価格は掲載時点のものです

▼検証01 VRED

→ CPUレンダリングが1.5倍高速化
→ リアルタイムレイトレーシングもスムーズに活用

自動車デザイナーに向けた3Dビジュアライゼーション作成ソフトウェア「VRED」の検証は峯崎栄治氏に担当いただいた。検証内容は、ファイルインポートからマテリアル付きの影のベイク、GPU/CPUそれぞれを用いたレイトレース、さらにはVRの検証までビジュアライゼーションの全行程。結果としてはCPU、GPUレンダリングともに1.5倍程度に速度アップしたほか、GPU/CPUレイトレーシングを用いたシーンのプレビューなども非常に快適な結果となったという。

※対抗機 スペック
CPU:Intel Core i9-7900X(10コア/20スレッド)
GPU:GeForce GTX1080Ti x 2(SLI設定でパフォーマンス最大化済)

【VRED CPUレンダリング検証】

A3サイズ/解像度300dpiの自動車画像のレンダリングは、既存PCでは15分掛かっていたところ9分まで短縮。自動車の全景やランプ、インテリアなど対象を問わず1.5倍速で完了した。総合的にスペックが向上していることから、ガラス素材やインテリア、その他シーンのレンダリングも対象物の属性を問わず速度の向上の恩恵が得られていると言えるだろう。

【VRED CPUレンダリング検証イメージとパフォーマンス結果】



【VRED GPU/CPU リアルタイムレイトレーシング検証】

さらにパフォーマンス改善がみられた項目として「レイトレーシング」を挙げる。従来機では、GPUレイトレーシングが2.0-2.5fps、CPUベースでは1.0fps前後と、作業を行うにはカクツキが大きすぎる状況で、CPUベースではマウスカーソルが固まるなどの現象も見られた。
一方の検証機では3.5fps-4.0fps、CPUベースでも1.5fps以上を平均値として出ており、実際の数値で見るよりもはるかにスムーズなプレビューを可能にしていたとのことだ(非レイトレース時は50-60fpsを維持)。「最終的な画をここまで動かせることは今まではなかったので驚きました(峯崎氏)」。今後はレイトレーシングも積極的に活用していく方針だ。

▲ VREDリアルタイムレイトレーシング(GPU)検証動画。上段が「GeForce RTX 2080 SUPER」搭載の検証機、下段が「GeForce GTX1080Ti x 2(SLI設定でパフォーマンス最大化済)」搭載の対抗機によるもの。画面操作時にカクツキに違いがあるのがわかるだろう

▼検証02 Gravity Sketch、Unity

→Quadro RTX5000搭載機と遜色ないパフォーマンスを発揮

Gravity Sketch、Unity についての検証は橘田幸一氏に担当いただいた。「普段、業務で使用している対抗機は最近リプレイスしたばかりでしたので、あまり差は出ないと思っていましたが、操作している途中のさまざまなタイミングで速度向上を感じました。これまではGeForceは民生機向けで、業務で使うならQuadro一択と考えていましたが、正直言うと全く遜色なく使えてしまっていて...この部分は素直に驚いていますし、正直言って個人的に欲しいPCだなと思いました(橘田氏)」。

※対抗機 スペック
CPU:Intel Core i9-9900K(8コア/16スレッド)
GPU:Quadro RTX5000

【Gravity Sketch検証】

VR空間で3Dモデルを制作するGravity Sketchは、プロトタイピングが速く工業デザインのツールとして優れているのが特徴。比較対象になったマシンはQuadro RTX5000搭載機と非常にスペックの高いモデルだが、橘田氏によれば「全く遜色なく動いていた」という。Gravity SketchはCPU負荷が多くないため、AMD特有のメニーコアの恩恵は受けにくいものの、業務用途でも全くトラブルなく作業が出来ている。

▲動画はGravity Sketchを用いた制作の様子(5~6倍速で収録)

【Unity HDRP上でレイトレーシング検証】


Unity HDRP上でレイトレーシング(DXR)を使用した際も、操作のスピード感や画面の表示速度はそれほど大きな差は感じられなかった上、CPUベースで処理を行うファイル変換などの部分は速度向上を感じたとのこと。

▼検証03 Fusion 360検証

→ レンダリング速度60%向上

Fusion 360はCAD/CAM/CAEを統合したソフトウェアで、同社では多くの製品のモデリングに用いられている。本検証を担当した福富康平氏によれば、Fusion 360はシーンファイルが重くなればなるほど自動保存のタイミングやUndoなどに待ち時間が発生してしまうとのことだが、検証機ではこういった一瞬の硬直がほぼ感じられず、作業の円滑さが大きく向上したという。

※対抗機 スペック
CPU:Intel Core i9-9900K(8コア/16スレッド)
GPU:GeForce RTX 2080 SUPER VENTUS OC(GeForce RTX2080 SUPER 8GB)×2枚差し

【Fusion 360 CPUレンダリングテスト 】

建築ビジュアライゼーションの題材として制作したコンテナハウスのレンダリング時間は9:02から5:38へと大きく短縮。Fusion 360はレンダリング時にCPUパワーをかなりの精度で使い切るため、従来のPCで用いていたIntel Core i9-9900K(8コア/16スレッド)よりもAMD Ryzen 3900XT(12コア/24スレッド)のコア数が多いぶん、純粋にレンダリング時間が短縮できている



【Unity オペレーションテスト】

日南がデザインから設計、開発、試作まで、総合的に開発支援をてがけた手洗いスタンド「WOSH model zero」のVRコンテンツを用いて検証。こちらも全く対抗機と遜色なくオペレーションが可能だった。

検証結果まとめ

日南のビジュアライゼーション業務において、AMD Ryzen 9 3900XT搭載のマウスコンピューター「DAIV A9」シリーズは高い速度パフォーマンス・高い動作安定性を発揮した。「リーズナブルな価格を考慮すると、十二分に実用レベル」といった高い評価を得ることができた。

問い合わせ先
株式会社マウスコンピューター
TEL(法人):03-6739-3808
(平日:9~18時、土日祝:9~20時)
https://www.mouse-jp.co.jp/creator/