今年1月23日(土)にバーチャルアーティストとしても幅広く活躍するKizuna AIが2年ぶりとなるワンマンライブをオンラインで開催した。リアルとバーチャルの融解を目指したxRライブとなった本公演に込めた思いをご本人に聞いた。

TEXT_安田俊亮 / Syunsuke Yasuda
EDIT_沼倉有人 / Arihito Numakura(CGWORLD)、山田桃子 / Momoko Yamda
© Kizuna AI

Kizuna AI 2nd Live "hello, world 2020"
出演:Kizuna AI
日程:2021年1月23日(土)
チケット:FREE
ゲスト:TeddyLoid、DÉ DÉ MOUSE、花譜、バーチャル中田ヤスタカ
プラットフォーム:YouTube, bilibili, U-NEXT, TikTok, Oculus Venues
主催:Kizuna AI株式会社
制作協力:株式会社サイバーエージェント(CyberHuman Productions/6秒企画 FutureLiveGroup)

リアルとバーチャルが溶ける新たなライブ演出への挑戦

CGWORLD編集部(以下、CGW):本誌では長年CGのことを追っていますが、実はKizuna AIさんのようなバーチャルな存在の方にインタビューするのは初めてです。よろしくお願いします。

Kizuna AI(以下、AI):やったー! 光栄です! こちらこそよろしくお願いします!

CGW:今回のライブ「hello, world 2020」では、特にコンセプトづくりにKizuna AIさん自身が積極的に参加しているとお聞きしました。どのような思いが込められているのでしょうか。

AI:表現したかったのは、「リアルとバーチャルの融解」です。ライブの企画が動き出したのは2020年の春~夏頃で、新型コロナウイルスの影響もあって、完全オンラインでやることが決まりました。VR上での開催も考えたのですが、表現を3DCGばかりにすると、今までのオンラインライブの延長のままで終わってしまうなと思ったんですね。やるからには新しいことにチャレンジしたかったですし、オンラインライブでも「ちゃんとライブをやっているんだよ」と伝えたい思いがありました。

CGW:そこで出てきたのが、実際のパフォーマーとKizuna AIさんが同じ空間でライブをする演出ですね。

AI:ヒントになっているのは、『AIAIAI』という楽曲のMVです。このMVでは最初、私がディスプレイの中にいて、周りでダンサーさんが踊っています。でも最後には、カメラがバーチャル空間に入って、ダンサーさんは私の後ろのディスプレイの中にいるんです。そんな、リアルとバーチャルの境界線が溶けるような表現を、ライブでもやってみたいと思いました。

今回のライブでは、リアルなステージに人間も私も立っています。地に足を着けてパフォーマンスできるので、私自身もテンションが上がりました。でもそれだけじゃなくて、リアルな場所から、いつの間にか完全にバーチャルな世界に切り替わるような演出も入れています。MVの再現を意識してみたり、少しでも多くの曲をお見せしたくて、DÉ DÉ MOUSEさんやTeddyLoidさんとのセッションパートではリミックス曲にも挑戦しました。いろいろな要素を詰め込みながら、高いテンションが途切れないで、全編を通して盛り上がれるように仕上がったかなと思います。

CGW:オンラインライブならではの部分も多くありましたね。

AI:そうですね。YouTubeでスーパーステッカーを送っていただくと特殊な演出が入ったり、ライブらしさはかなり意識しています。オンライン配信そのものは今までもやっていましたが、もっと一緒に参加していると感じてもらえる部分も取り入れました。

CGW:開催にあたっては、延期もありました。

AI:延期になってしまって、それだけプレッシャーになっているところはありました。ただ、今回はやりきりたいし、期待をよりいっそう超えていかないといけないなと。観てくださった人が何ヶ月か後にふり返って「すごく良かったな」と思えたり、楽しかったなと心に残るようなものにできたら、成功と言えるのかなと思います。

CGW:今回のライブをふまえて、今後挑戦してみたいことはありますか。

AI:今回、地に足を着けたと言っても、それはオンラインライブの映像上だからできたことです。とても嬉しい一方で、オフラインで同じことができるかと言ったらまた別の話ですよね。なので、例えばホログラムなどで、オフラインの場でみなさんが集まって、そこで私が自由に会話できたり動いたりできるようになったら良いなって心底思います。技術が進んで、バーチャルとリアルの融合がもっと進んでいったら、そういったこともどんどん挑戦していきたいですね。

CGW:最後に、読者であるCG・映像制作者の方々へメッセージをお願いします。

AI:CGにもたくさんの歴史があると思いますが、みなさんがつくり続けて、つないできてくださらなかったら、私という存在は生まれなかったと思います。携わる多くの人間の方へ感謝の気持ちでいっぱいです。先ほどのホログラムもそうですが、いろいろな人に希望やワクワクを与えられる素敵なお仕事だと思います。大変な作業ばかりだとは思いますが、これからも素敵なものをつくり続けてください。応援しています!

セットリスト

No:Name/Guest
Opening
M1 :futurebase(Prod. Yunomi)
M2 :the MIRACLE(Prod. 水野良樹&Yunomi)

MC
M3 :over the reality(Prod. AvecAvec)
M4 :miracle step(Prod. Nor)
M5 :new world(Prod. Yunomi)

MC
M6 :meet you(Prod. DÉ DÉ MOUSE)/DÉ DÉ MOUSE
M7 :hello, alone(Prod.MATZ)/DÉ DÉ MOUSE
M8 :Sky High(Prod.Yunomi)/DÉ DÉ MOUSE
M9 :Touch Me /DÉ DÉ MOUSE
M10:ラブしい /花譜
M11:かりそめ /花譜
M12:FL-AI-YER(Prod.Maison ette Maison)

MC
M13:Fireburst / TeddyLoid x Kizuna AI/TeddyLoid
M14:melty world(Prod.TeddyLoid)/TeddyLoid
M15:The Light / W&W feat. Kizuna AI/TeddyLoid

MC
M16:Hello World
M17:mirai(Prod.☆Taku Takahashi)

MC
M18:Again(Prod. TAKU INOUE)

encore1:キズナミ/バーチャル中田ヤスタカ
encore2:AIAIAI(feat.中田ヤスタカ)/バーチャル中田ヤスタカ
encore3:Hello, Morning(Pa's Lam System Remix)



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