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新しいCaddy UIやリボンインターフェイスの改良などユーザーにとっての使いやすさがさらにバージョンアップした Autodesk 3ds Max 2011。この最新版を実際の業務で運用するメリットについて、昨春リンクス・デジワークスと事業統合を果たし、新たに生まれ変わった IMAGICA デジタルプロダクション クリエイティブサービス部 CGグループの中核メンバーに 3ds Max 2011 の実用度合いや期待している点について語って貰った。

リンクス・デジワークスとの事業統合がもたらすアドバンテージ

2010年4月1日付けで新たに誕生したIMAGICAのクリエイティブサービス部。この新しい部署は、日本のCG表現をリードしてきたトーヨーリンクスの系譜を受け継いたリンクス・デジワークスと、IMAGICAのCGチームとが統合されたことによって他にはないCG部とポスプロ部のシームレスな連携が可能となっているのが特徴となっている。今回の事業統合により、IMAGICAのオンライン編集チームとシームレスに連携できるようになったことで、例えばCGグループでも気兼ねなく Autodesk Inferno や同 Flame を利用できる環境が整ったという。

『GR75:オープニング』場面写真

昨年、IMAGICAは、クリエイティブサービス部の新設をはじめ大規模な組織改編を実施。その象徴とも言えるのが、東京都品川区五反田にある東京映像センターを「GR75(IMAGICA Gotanda Renaissance on the 75th Anniversary)/五反田ルネッサンス」と称して、最新技術をコアに機材と制作体制を全面リニューアルしたことである(画像は、昨秋のオープンハウス向けに制作された『GR75:オープニング』場面写真。国内では同社が初めて導入した3ALITY社製リグを用いて撮影の段階から立体映像として制作された)

今回の事業統合について、CGグループ全体のマネジメントを手掛けている大澤宏二郎氏(クリエイティブサービス部CGグループ課長)は「リンクスとの事業統合によって、クリエイティブサービス部内にも Inferno を1チェーン導入することができました。これにより、最終コンポジットやフィニッシングを行う上で、どのような素材を用意する、あるいはどのようなワークフローでCG作業を行うのが効率的なのかといった研究をオンライン編集の邪魔をすることなく随時行えるようになりましたね。ポスプロ業務を手掛けていないCGプロダクションがInfernoを導入するというのは現実的に難しいので、これは大きな武器だと自負しています」と自信をみせる。こうした日々の研究から新しい制作手法や映像表現が生まれてくることを期待しているそうだ。その他にも、モーションキャプチャ、立体映像、さらには最新のプリビジュアライゼーションやAR制作機能も備えており、真の意味でのワンストップソリューションの提供を目指しているという。

最新技術の一翼を担うAutodesk 3ds Max 2011

抜本的な組織改編と最新のハード/ソフトを導入したIMAGICA。しかし、組織が大きくなればなるほど、即座に最新バージョンのソフトウェアを実戦投入するのは難しい。それが日本最大のポスプロであるIMAGICAであればなおさらだ。そうした事情について、チーフCGディレクターの松本篤史氏は、今回の 3ds Max 2011 リリースはタイミングが良かったとふり返る。「僕のチームはCMを中心に手掛けていることもあり、新しいバージョンが出たらできるだけ早い段階から使い始める方針を執っています。とは言え、会社の諸事情によりタイムラグが生じることもあるわけですが、今回は『GR75』プロジェクトがスタートする時期のバージョンアップだったのでラッキーでした。さらに最新版では、いつでも自由に 3ds Max 2010のファイル形式として保存できるようになったため、前バージョンの時から進めていたプロジェクトでは重宝しました」。バージョンアップを行う際、前バージョンのプロジェクトデータやプラグインの互換性が気になるものだが、こうした配慮はユーザーにとってはありがたいものだと思う。事実、松本氏のチームが手掛けていた案件の中には実際に前バージョンへ戻さねばならない場面があったそうだが、複雑なデータでも支障なく 3ds Max 2010環境に復帰することができたそうだ。

現在クリエイティブサービス部CGグループには、リンクス・デジワークスの系譜を継ぐ3チームに、IMAGICAの映画VFXチームが合流する形で、計4チームが活動しているという。その中でも松本氏のチーム(元リンクスの1つ)が、いち早く、3ds Max 2011への移行を済ませたという。「商業制作でもチャンスがあれば積極的に最新機能や強化された機能を使っています。新機能の中でも、スレート マテリアルエディタは重宝していますね。以前からコンポジット作業にノードベースのソフトウェアを使っていることもあり、3ds Max でもノードベースで細かく調整できるようになったのは凄く使いやすいです。UIも洗練されていると思いますよ」。
 

3ds Max 2011スレート マテリアルエディタUI

3ds Max 2011の新機能「スレート マテリアルエディタ」UI。「多数のノードを一覧できるので、容易にバリエーションを増やすことができますね。ノードを複数選択して、Shift+ドラッグでどんどんバリエーションを増やしていき、検討するといったことも問題ありませんでした」(松本氏)。以前はカーブエディタからアクセスしていたコントローラ関係のプロパティへのアクセスが容易になったことも評価しているとのこと

今回も実に多くの新機能が追加された 3ds Max 2011だが、新たに標準バンドルされるようになったクルマをはじめとする乗り物のリギング並びにアニメーション制作が手軽に行える Craft Director Studio も実際の商業制作で活躍しているそうだ。「クルマのアニメーションは、想像以上に複雑で、普段見慣れているだけに少しでも挙動がおかしいと違和感も大きくなるんですよね。先日も某プロジェクトでカーブしながら走ってきて停車するという動きを付ける際に、Craft Animationを利用することで半日ほどで納得のいくクオリティに仕上げることが出来ました」(松本氏)。

3ds Max 2011にバンドルされているCraftAnimationのUI

ニューラルネットワークシステム(脳神経系をモデルにした情報処理システム)、人工知能や自律制御システムの研究を基に開発された、3DCGアニメーション作成用プラグイン「Craft Director Studio」、3ds Max 2011から標準バンドルされるようになった。乗り物自体の動きに加えカメラワークなどもジョイスティック等で直感的にアニメーションを付けることができる

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CATベースのアニメーション制作

今井真司チーフCGデザイナーが率いるチームでは、ゲームタイトル用のアニメーションなど、松本氏のチームよりも比較的長期の案件を手掛けることが多いという。そのため現在も 3ds Max 2010をメインに使用しているそうだが、最新バージョンからサブスクリプションではなく、標準搭載されるようになったCAT(Character Animation Tool)に注目しているそうだ。「以前からCATを使っているのですが、現在はモーションキャプチャのデータを .fbx 形式で読み込み、CATのクリップファイルに変換するスクリプトを内製するなどして、CATベースのパイプラインを少しずつ構築しているところです。これまでに集めたノウハウを通じて、CATを有効活用する術が色々と見えてきたので、今回の 3ds Max 2011から標準搭載されたことで、より気軽に使えるようになるのではないかと期待しています」。そして、そうした取り組みの集大成になったのが、先述した「GR75」プロジェクト向けに制作した短編アニメーション『登場篇』だったという。

『GR75:登場篇』場面写真

『GR75:登場篇』。「GR75」プロジェクトでは、前頁で紹介した『オープニング』とは別に、『登場篇』、『試写室篇』、『ストロボ篇』という3本の短編が制作されたが、これらの3作品では、クリエイティブサービス部CGグループのデジタル・アーティストたちとポストプロダクション部のオンライン・エディターが複数のチームを組み、それぞれが密接に連携して協業することになった

今井氏のチームでは、東京映像センターの前を鹿型のCGキャラクターたちがユーモラスに行進する動きをCATで作成。CATを利用することで、短期間でハイクオリティな動きに仕上げられたとふり返る。「企画自体は4週間ぐらい前から練り始めていたのですが、通常業務も並行して手掛けていたこともあり、実作業は2〜3日で完パケしなければなりませんでした(苦笑)。そこで、CGグループはキャラクターアニメーション、ポスプロはコンポジットと質感調整に注力するといった具合に分業することにしたのですが、CATを利用したことでセットアップとアニメーション作成を手早く行えたと思います」。実際、今井氏のチームが作成した鹿のキャラクターが道を横断していくアニメーションは、わずか1日で完成に漕ぎ着けたとのこと。CATの生産性の高さが図らずも証明されたと言えるだろう。

3ds Max 2011 CATのUI

『GR75:登場篇』のアニメーションはCATで作成。「社内案件ということもあり、通常業務の合間を縫って制作する必要がありました。そこでCATを用いることでセットアップと、アニメーション付けのスピードアップを図りました。チーム内でアニメーション作業を分担する上ではアニメーションレイヤーが有効でしたね」(今井氏)

包括的にパフォーマンスが向上

3ds Max 2011で搭載された新機能・強化された機能が多岐にわたることもある、IMAGICA クリエイティブサービス部 CGグループでは現在も実制作と並行して各種検証を進めている最中だという。今後の商業制作で使ってみたい機能として、松本氏はNVIDA PhysX テクノロジを採用した新しいリジッド・ボディ・ダイナミクスを挙げる。「PhysXを採用したことで、設定中もリアルタイムでシミュレーション結果が変わるようになり、それを見ているだけでも楽しいですね(笑)。レスポンスも良いし、安定感もあるのでチャンスがあれば是非使ってみたいです」(松本氏)。

3ds Max 2011 CATのUI

3ds Max 2011 では、リジッド・ボディ・ダイナミクスに対して、NVIDA が開発した物理演算エンジン PhysX を新たに採用。「思いつくままに設定していっても、破綻なく動作してくれるので安心感があります。オブジェクトが多量になっても動作のレスポンスが良いので、トライアンドエラーを繰り返す際のストレスも少ないです」(松本氏)

一方、今井氏はコンテナ機能を挙げてくれた。「最新バージョンでは、コンテナ周りが強化されているみたいなので、特にモデリングを分業して行う際に利用すれば、より効率的に作業できるのではないかと期待しています」(今井氏)。さらに松本氏と今井氏は年々合成処理が複雑になってきていることを指摘し、OpenEXRファイル I/O の強化3ds Max Compositeにも期待していると口を揃えた。劇場長編や TVCM など実写との絡みが多いプロジェクトを多数手掛けている IMAGICA で活躍する両氏ならではの説得力のある見解だ。
新生 IMAGICA において、様々な局面で確かなパフォーマンス向上を実証しているという 3ds Max 2011。パイプラインの改良を考えているプロダクションは導入を検討してみてはどうだろうか。

TEXT_宮田悠輔
PHOTO_弘田 充

『GR75:試写室篇』場面写真

オープン75周年を機に大幅リニューアル
IMAGICA 五反田 東京映像センター

日本最大のポストプロダクションであるIMAGICAは昨年、創業75周年という節目の年に映画やテレビ、Web、モバイルといったメディアの枠を超えた技術サービスを提供すべく、主要拠点である五反田東京映像センターを「GR75(IMAGICA Gotanda Renaissance on the 75th Anniversary)/五反田ルネッサンス」と題して、最新技術をコアに全面的なリニューアルを実施。その地位をより盤石なものにしたと言えるだろう(画像は「GR75」オープンハウス向けに制作された『試写室篇』)
 
「五反田ルネッサンス」ブログ
IMAGICA公式サイト
 

Autodesk 3ds Max 2011パッケージ画像

Autodesk 3ds Max 2011

価格:515,550円(新規製品、オンラインストア価格)
対応OS:7/Vista/XP
問い合わせ先:オートデスク インフォメーションセンター
TEL:0570-064-787(ナビダイヤル)
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オートデスク3ds Max情報サイト
 

オートデスク「パイプライン最適化キャンペーン」サイト

パイプライン最適化キャンペーン実施中!

現在、オートデスクでは、Autodesk 3ds Max 2011、Autodesk Maya 2011、そしてAutodesk Entertainment Creation Suite 2011の3製品を対象にした「パイプライン最適化キャンペーン」を実施中だ。キャンペーンサイトでは、最新版の機能向上を第3者の調査機関による調査レポートを通じて解説するほか、最新の映画/テレビ並びにゲーム制作のパイプラインについても解説している。購入予定がない人でも楽しめるのでぜひ一度アクセスしてみよう。
 
オートデスク「パイプライン最適化キャンペーン」特設ページ