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松浦裕暁(サンジゲン代表取締役、CGプロデューサー)

3DCGをベースに日本特有のリミテッドアニメーションを追求するサンジゲンで代表取締役を務める松浦裕暁氏。今や飛ぶ鳥を落とす勢いで急成長を遂げる同社だが、その設立から現在に至るまでの一連の活動は、アニメ業界で必要とされるCGデザイナーの姿を追い求める松浦氏の熱意があってこそのものだと言えよう。
そして現在、アニメをはじめとする映像業界を目指し日夜努力する人たちにとって、そうした理想像に到達するための学習環境として「Autodesk Education Suite for Entertainment Creation 2011」は有効な選択肢と言える。今回は、松浦氏のキャリア経験を通して、同スイートの有用性を量る。

TVアニメ『Panty&Stocking with Garterbelt』

TVアニメ『Panty&Stocking with Garterbelt』
© 2010 GAINAX/GEEKS

リミテッドアニメーションを3DCGで描く

ーー3DCGでリミッテッドアニメーションに挑戦しようと思われたきっかけは何だったのでしょうか?

松浦裕暁氏ーーCGを始めて、最初に入った会社ではゲームムービーや映画VFXの制作などを行なっていたのですが、すぐに株式会社ゴンゾに入社し、アニメーション制作に携わることになったのです。その時の経験が現在のサンジゲンと僕自身に大きく影響を与えたと思いますね。実際に制作する中でアニメ制作におけるCGの使い方に関する僕の考えが確立されていったのです。例えば、当時CGでモデルを制作する際に三面図を準備して形作るのが普通でした。でも、僕的にはそれはいらないのです。斜め前、後ろの2つでパースが分かればそれで充分。アニメの中では、数値的に正しいものではなく、それよりも"絵として迫力があるか"というのが重要だ感じていました。

やがて、多くのプロジェクトを通してアニメにおけるCGの使い方、ワークフローを考えるようになりました。もちろん、当時はアニメの中でのCGの使い方というのは限られたもので、ボリュームも現在ほど多くはありませんでしたし、キャラクターをCGで作ることもありませんでした。アニメーションカットを作りながら、メカのモデリング、それからエフェクト作成、合成などしていました。まだまだ未熟な時期だったんですね。今でこそ撮影という最終セクションに投げるのが一般的ですが、当時はCG側で最後までやっていたんですよ。CGデザイナーが上げたCGカットをそのままコンポジット、最終編集まで持ち込んでました。でも、それはとても危険なことです。それぞれがそれぞれのやり方で絵づくりに関わるわけで、ノウハウが小さい規模では会社に、大きな規模では業界全体に溜まっていかないということになるので。
作業を進める中で生まれるノウハウは、ある程度は個人に宿るものなのですが、チームとして1つの作品を作るノウハウ、組織で作るノウハウなどをためる必要性を強く感じてました。それがサンジゲンを立ち上げるきっかけです。

今は一般的にも、作品としての質感統一、トータル処理を行うため、撮影にCGカットを回すようになっています。アニメの昔ながらの工程にのせる訳ですが、僕自身はそれは進化であると思っています。CG側で着彩を担当することもありますが、それはあくまでも仮。アニメの中で用いられるCGですので、アニメのフローの中で1つの素材として使用されるものであるべきですからね。そうした対応もアニメ向けCG制作ノウハウが蓄積されていく仕組みなのだと思います。品質、生産性などを向上させる上では欠かせないんですよね。

ーーサンジゲンでのアニメーション制作のコンセプトは?

松浦氏ーーサンジゲンのコンセプトは、「アニメでCGカットを担当する僕らはCG屋なのか?」というエクスキューズから入っています。CGを本職として、技術的な進歩を担う、ゲームムービーでのCG制作といったとことを考えるとCG屋で良いのかもしれませんが、アニメ表現におけるCGの活用なので。その点では、僕らはCGのエキスパートというよりは、用いるツールがCGなだけの"アニメ制作者"なんだと自負しています。CGを用いながらも日本のリミテッドアニメーションに合わせるというか、そのものにしなければならないと思っています。ただし、昔のアニメのままというわけではありません。作画に関しても過去のものを比べ格段に進歩しています。その中でCGを融合し発展させていくことが目的です。日本のアニメに関わるということは、そこまでいくことが必須だと思いますし、世界でも戦えるコンテンツ制作に関わることになるのだと考えています。

ワークフローとしても、アニメのそれに準じる形です。もちろん、そのまま無理矢理当て込んでも拒否反応を起こしてしまいますので、ゴンゾを辞めてからの数年はアイドリング期間とでも言うのか、数人のチームでフリーで活動していたのですが、ゆっくりと馴染ませる方向で進めてきました。ある程度の仕組みやノウハウが貯まり、サンジゲンを設立した時に、よりリミテッドアニメーションに向けた作り方を押し進めました。とくに1人のCGアニメーターがどこまで作業をするのか、責任を持つのかを精査しましたね。それである程度アニメのワークフローに近づいたのですが、それでもまったく同じではありません。現在でもプロジェクトを手掛ける度に新たなことを学び、より良い融合を図っています。例えば、CG制作の途中で原画チェックを取り入れたりなど、1つ1つ付け加えながらですね。面白いところでは現役の作画監督さんにCGディレクターとしてアニメーションを監督してもらったりもしていますよ。

アニメ業界で働くCGデザイナーに必要なスキル

ーーどのような環境でCG制作が行われているのですか?

松浦氏ーー現在サンジゲンはAutodesk 3ds Maxをメインツールに採用しています。約7年前、フリーになった際に他のソフトから乗り換えたのですが、その時にCGによるキャラクターアニメーションの需要拡大を予感してました。将来的にキャラクターアニメーションの大きな波が来るだろうって。そうした流れを感じた上で、それを作るソフトとして3ds Maxに大きな可能性を感じました。当時、Character Studioが3ds Maxに統合されたぐらいの時で、Character Studioの機能が非常に強力で、それを用いてオールインワンでアニメーション制作できることがなによりも魅力でした。その後、3ds MaxにはCATなども統合されてより発展的な制作環境が築けたと思います。

制作体制としては、ゆるやかな分業制のような形を採り、それに応じたプラグイン等の環境を確保しています。モデリングが得意な人はモデリングに特化した環境で作業を行うし、アニメーターはそれに合わせた環境でといった具合です。とは言え、サンジゲンは最終的な見え方を重視していますので、デザイナーに求められるのはその得意分野だけでは足りません。得意なことを持つことは重要なことですが、モデリングにしてもただ綺麗なモデルを作るだけではダメなんです。キャラクターの動きというか、表現を可能にするモデルでなければなりません。アニメーターも、ただのモーションデザイナーではなく、表情、動き、絵としてキャラクターのシルエットなどを考えられなければなりません。こうした様々な知識を持ったデザイナーがやはりアニメの業界、少なくともサンジゲンでは求められます。

また、その上でCGデザイナーは技術的な部分も非常に重要ですね。基本的な作り方は変わっていませんが、やはりテクノロジーは進化しています。制作のノウハウもプロジェクトをこなす毎に増加していきます。そのため、それらを融合して取り込んでいく、技術ノウハウは必要不可欠なんです。例えば、キャラクターの動きの仕組みに当たるリギングにしても、最初はCharacter Studio、Bipedをメインとしたものでしたが、CATを組み込んだものへとバージョンアップしています。今はBonesProなどのプラグインも使用したりしてますし、さらに変化していくことになるでしょう。もちろん、これはあくまで仕組みの話で、最終的には手作業でキャラクターは動かされます。CGデザイナーは、それらを使いこなす必要がある訳です。

ーーアニメ制作でのCGデザイナーに必要なものは?

松浦氏ーー知識的にも、技術的にも多くを求められるアニメ業界のCGデザイナーですが、ここで活躍するための制作に関するリテラシー、技術を育てるという点でも、ソフトや機能を知り尽くす必要があると思います。絵を描く人で鉛筆の使い方を知らない人はいない。知らなくてもそれなり描けますが、知っていた方がより良いものを描ける。CGもそれと一緒です。これからCGを学び、アニメ業界で働くためには、とにかく隅々まで知っていてほしいですね。特に最初の頃は寝食を惜しむ位にソフトと向き合い、夢中になるべきだと思います。その上で、注意してもらいたいのが模倣することです。僕らの仕事でも、まずは模倣から入ります。様々な情報からそれを生み出す訳ですが、そうした模倣があり、それも実現するためのアイデアが求められるのです。それはつまり、表現の実現のために必要な機能なわけです。ですので、学ぶ際にはただ単に機能を触ってみるのではなく、目的を持って使うのが有効ですし、その数は多ければ多いほど良いのです。それが作る上でのアイデアに繋がっていく訳ですから。

また、1つのソフトを使いこなせることは大切ですが、必要な時に必要な機能を使うのと同じで、必要な時には他のソフトを用いることもあります。映像制作はソフトを跨いでやるべきだと僕は思います。その意味では、学生さんにとって「Autodesk Education Suite for Entertainment Creation 2011」は凄く魅力的だと思いますよ。実は僕自身も、Shadeをやって、Softimageをやって、LightWave 3Dもやって、というようにツールを渡り歩きながらCGを学び、現在の3ds Maxに辿り着いたのですが、最近ではMayaとMotionBuilderも取り入れました。1つのソフトではできることが限られるし、仮にできたとしても非効率な場合が多々あります。できないことをどう工夫してやるのか、それを理解してこそ、"アイデアを実現する"ことになるのです。

現在、サンジゲンはガイナックスさん制作のTVシリーズ『Panty & Stocking with Garterbelt』の3D制作を担当しているのですが、先日僕たちが手掛けたカットをみて今石洋之監督に「この煙どうやってるの?」って聞かれたました。その表現を監督はとても気に入ってくれたのですが、CG制作者としてはすごく単純な作り方だったりするんです。そのカットの場合は、球を大量発生させているだけでした。ですが1つ工夫があって、球の真ん中をブーリアンでくり抜いてありました。実は作画の方方もこれと同じ発想で煙を描くのですが、作画のノウハウを採り入れてCGも制作することで、作画に合った質感が表現できるし、実はとても理に叶った手法だったりするわけですね。これは単純な例ですが、ものづくりの本質だと思います。1つ1つは機能の単なる結果でしかありませんが、それらの"組み合わせ方"に独自のアイデアを加えることで1つの表現へと昇華されるのです。こうしたアイデアを養うためにも、できるだけ多くのツールに触れて、様々な機能を使ってみるべきでしょう。

Autodesk Education Suite for Entertainment Creation 2011パッケージ

教育機関向け製品価格
10シート:1,356,075円
25シート:2,712,150円
125シート:6,780,375円
500シート:10,848,600円
追加1シート:108,675円

教育機関向けサプスクリプション価格
~24シート:20,370円
25~124シート:16,275円
125~499シート:8,140円
500シート:3,255円

学生版製品価格
81,375円(使用期間:在学期間限定)
※金額表記は全て税込み

問い合わせ:オートデスク インフォメーションセンター
TEL:0570-064-787(ナビダイヤル)
http://www.autodesk.co.jp/edu