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CG映像制作やゲーム開発などに特化したワークステーション・レンダリングシステムの製造販売を行うBOXX Technologies社。 その主力製品であるrender PRO(2台)、APEXX 4 7201(2台)を『SUSHI POLICE』の本格始動に合わせて導入したKOO-KIにて、マシンの使用感をうかがった。

『SUSHI POLICE』 © "SUSHI POLICE" Project Partners
URL:http://sushi-police.com

『SUSHI POLICE』のデータを使い render PRO を徹底検証

CGWORLD(以下 C):今回のマシン導入は、『SUSHI POLICE』がきっかけだったのでしょうか?
木綿達史氏(以下 木):『SUSHI POLICE』のために買いました。2015年初頭に着手した本作のパイロット版では、約4,000フレームのレンダリングに5日くらいかかっていたのです。
C:それで本編に着手するのは不安ですね......。
:"超"不安でした!
中石賢悟氏(以下 中):そんな折り、福岡で開催されたイベントでインテルの方にお会いする機会があり、相談にのっていただいたのです。当時は5台のワークステーションをレンダリング専用にしていたのですが、「複数台に分散させるより、高速なマシン1台に代替させる方が、効率が良いし投資効果も高い」と教えていただきました。
:そのときのアドバイスが後々まで印象に残っていたので、後日メールで改めてご相談したところ、render PROと代理店のトーワ電機さんを紹介いただいたのです。
トーワ電機株式会社 小島 広氏(以下 小):実情に即した検証をするなら『SUSHI POLICE』のデータを使うのがベストなので、パイロット版のデータをいくつかお預かりして、テストレンダリングをやらせていただきました。

  • C:そんな経緯があって、詳細な検証レポートがつくられたわけですね。render PRO 1台で、ディフューズが最大194.9%、ノーマルマップが最大521.4%、アンビエントオクルージョンが最大417.9%の速度向上とは......圧巻の結果ですね。

:当時使っていた5台は、何年かに分けて順次購入したものだったので、Intel Core i5搭載の3世代前のマシンから、Intel Core i7搭載の比較的新しいマシンまで、色々なスペックが混在していました。ただ、総じてCPUのコア数は少なめだったので、『SUSHI POLICE』のデータを扱うにはパワー不足だったようです。

CPU やメモリ選択の最適解はソフトウェアによって変わる

C:決め手はCPUのコア数だったのでしょうか。
:『SUSHI POLICE』に限らず、当社では日常的に3ds MaxのデータをV-Rayでレンダリングしています。とりわけ、V-Rayでノーマルマップやアンビエントオクルージョンをレンダリングする際にはCPUコアへの負荷が高いそうです。
:コア数を最大まで増設することをお勧めしました。
C:一方で、メモリの増設は控えめですね。
:レンダリング中はあまりメモリを使わないことも、V-Rayの特徴だそうです。CPUやメモリ選択の最適解は、使うソフトウェアによって変わるのだと、今回の検証を通して実感しました。社内のスタッフだけでは、こんなにベストなカスタマイズはできなかったと思います。インテルとトーワ電機の皆さんのサポートには感謝しています。
C:合わせて導入したAPEXX 4 7201の使用感は如何ですか?
:好評ですよ。『SUSHI POLICE』の専属スタッフは中石のほかにもう1名おり、この2人が作業用として使っています。協力会社から送られてきた3ds Maxデータの最終調整、AfterEffectsでのコンポジットが主な用途です。
:『SUSHI POLICE』のレイヤーデータは極端に多いのですが、SSDのおかげで10分ほどかかっていたデータの読み込みが1~2分にまで短縮されました。プレビューも圧倒的に速くなり、今までの倍以上の試行錯誤ができるようになっています。作品の品質に加え、私自身の腕まで上がっているので、すごく嬉しいですね。

【Focus 1】レンダリング用マシンrender PRO

render PROはCPUの力を最大限まで引き出したレンダリングを実現するため、ほかに類を見ない独自設計がほどこされており、CPUコアを1台あたり28コアまで増設できる。一方で、省スペース(幅172×高さ96×奥行き508mm)・省電力・静音性も兼ね備えており、デスクサイドへの設置も可能だ。「当社ではrender PROをバックヤードに設置して、APEXX 4 7201上のリモートデスクトップを介して操作しています。『SUSHI POLICE』に関わる全ての作業を同じモニタで一元管理できるようになり、作業効率が格段に向上しました」(木綿氏)。


render PROと空気メインマシンによるレンダリング時間の比較

[単位]時間:分:秒

■テストレンダリング(ディフューズ)の比較

  • ファイル名
  • レンダリング時間
    (render PRO)
  • レンダリング時間
    (空気メインマシン)
  • 性能向上
  • C35 col
  • 1:23:52
  • 2:08:00
  • 152.60%
  • C40 col
  • 0:07:44
  • 0:10:00
  • 129.30%
  • C65 col
  • 0:09:14
  • 0:18:00
  • 194.90%

■テストレンダリング(ノーマルマップ)の比較

  • ファイル名
  • レンダリング時間
    (render PRO)
  • レンダリング時間
    (空気メインマシン)
  • 性能向上
  • C35 nom
  • 11:08:22
  • 6:00:00
  • 269.30%
  • C40 nom
  • 2:41:07
  • 14:00:00
  • 521.40%
  • C65 nom
  • 2:36:25
  • 11:00:00
  • 421.90%

■テストレンダリング(アンビエントオクルージョン)の比較

  • ファイル名
  • レンダリング時間
    (render PRO)
  • レンダリング時間
    (空気メインマシン)
  • 性能向上
  • C40 ao
  • 3:20:59
  • 14:00:00
  • 417.90%

【Focus 2】作業用マシン APEXX 4 7201

APEXX 4 7201も省スペース(幅174×高さ457×奥行き513mm)・省電力・静音性に加え、高い処理能力を有している。「『SUSHI POLICE』のAfter Effectsデータは、大きいものだと200MB以上、フッテージ数は3万近くになります。以前はデータの読み込み、プレビュー、レンダリングなど、何をするにも時間がかかっていました。ちょっとした修正のプレビュー結果が出るまで、木綿と私が2人して数分間待機することも日常茶飯事だったのです。そういう待ち時間が大幅に短縮されたおかげで、多くの時間を画づくりに費やせるようになりました」(中石氏)。

[ まとめ ]

既存環境に手詰まりを感じ、新規プロジェクトの本格始動直前にマシンのリプレースへと踏み切ったKOO-KI。V-Rayでのレンダリング時間を最大5倍も短縮できた大きな要因は、レンダリングに完全特化して開発されたrender PROと、28Core Xeon E5-2695v3に搭載された最新のインテルテクノロジーの導入にあるだろう。本番と同じデータで精緻な検証を行い、トーワ電機の全面協力を得てカスタマイズの最適解を割り出すという理にかなったアプローチも含め、参考になる導入事例といえる。

[問い合わせ先]

トーワ電機株式会社 BOXX事業部
TEL(法人):03-6803-2070(平日:9~17 時)
http://boxxtech.jp/

TEXT_尾形美幸(CGWORLD)
PHOTO_蟹 由香