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2021年7月15日にオンラインイベント「CGWORLD デザインビズカンファレンス」が開催された。そのセッションの1つ、株式会社CyberHuman Productionsの「アフターコロナの広告・PR・エンタメ新常識への挑戦 ~AI・3DCG・XR・Photogrammetry技術の社会実装~」では、同社のフォトグラメトリー技術やLEDスタジオを用いた新たな広告映像制作への取り組みが紹介された。サイバーエージェントのグループ会社のなかで3DCGはもちろん、AIやXR技術などをクロスさせワンチームで最先端の広告コンテンツを制作する同社の取り組みを、事例解説とともにお届けする。
フォトグラメトリーを活用し、従来のリアルイベント以上の体験をユーザーに届ける
株式会社CyberHuman Productionsは、社名の通り、「Cyber(技術)とHuman(人間)の融合で、新しいクリエイティブ・つくり方をつくる集団」と自身を定義し、「表現自体のつくり方をつくる集団」、「新しく当たり前と感じられるようなものを生み出していこう」とする集団だと、同社取締役の芦田直毅氏は語る。同社は株式会社サイバーエージェントのグループ会社として2017年に設立されたCGチェンジャー社と、桐島ローランド氏が2014年に設立したAVATTA社(2018年にサイバーエージェント子会社)をルーツとする。2019年からはAI事業が加わり、2020年からは動画の広告だけではなく、Future Event/Life事業(オンラインライブイベント)、スポーツDX事業(オンラインスポーツ観戦)も展開している。サイバーエージェントはこれまでもアド(広告)テクノロジーとしてAI技術を活用してきたが、それをさらに推し進めていくのが同社で、「3DCG」、「AI」、「フォトグラメトリー・モーションキャプチャ」、「バーチャル撮影XR」それぞれの技術に注力し広告映像やコンテンツ制作を行なっている。
つづいて、同じく取締役でフォトグラファーの桐島ローランド氏から、同社のフォトグラメトリー・モーションキャプチャ技術の解説が行なわれた。桐島氏自身も写真家として30年以上、広告業界に携わってきたが、デジタル技術に影響され、8年前に3Dスキャンをするフォトグラメトリー専用のスタジオであるAVATTA社を設立した。
「フォトグラメトリー」とは人やモノを様々な角度から撮影して3Dデータを作成する技術。これによってモノであれば別の角度を使ったり、人であれば当人を再撮影することなく広告に活用することができる。広告クリエイティブでは様々な修正を積み重ねてつくられていくことが多いというが、3Dデータがあればバッグのハンドルの素材だけを変えるといったことも可能だ。桐島氏は「衣装を撮影する場合、人間の動きに合わせて形状や皺の形も変化しますが、最近はそのシミュレート技術が非常に良くなっています。服とアバターの3Dデータがあれば、実写並みのクオリティで実装できるレベルになっています」と語る。
桐島氏は3Dデータをファッション分野で有効活用することを自身のミッションとしており、その一例について昨年の事例をもとに説明した。
桐島氏がフォトグラファーとして携わってきた、Y's(ヨウジヤマモトのファッションブランド)は、「VOGUE FASHIONNIGHT IN 2020」というイベントでPanasonic社協賛のもと個展を開くことを予定としていた。だが、コロナ禍によって開催できない状況となったため、CyberHuman Productionsの技術を使ってバーチャルインスタレーションイベントを開催することになった。ここではマネキンをスキャンしY'sの衣装を着せて、そのマネキンが夜中にアトリエの中で踊り出すというVR アートフィルムを公開するなど、バーチャルならではの試みも行なわれた。「Y'sさんのショップのスキャンも、Matterportという360度カメラを配置して店の全体の3Dデータを作成するプラットフォームを使うことで、低コストかつスピーディーにハイクオリティーなVRをつくることができました」(桐島氏)。さらにVR上から商品を購入することも可能で、ユーザーに単なるEコマース以上の体験を提供することができたという。
フォトグラメトリーは建物のスキャニングにも利用することができ、大規模なものではスタジアムのスキャニングの実績もあるという。CADデータがないような古い建物をデータ化してアーカイブすることや、そのデータを使ったVR/ARコンテンツを作成しバーチャルツアーをすることも可能だ。
桐島氏は6年前に北九州市旧門司税関の建物を丸ごとスキャニングした事例を挙げた。このときはFAROのレーザースキャナの高精度のデータに対して、フォトグラメトリーのテクスチャを貼り付ける方法を採用した。現在であればさらにスピーディーにクオリティが高い撮影が可能だと話す。
セッション終盤には芦田氏が参加者の質問に答える形で「フォトグラメトリーのデータは映像制作用途で使う場合のほか、リアルタイムレンダリングやWeb、ゲームなど使い方の要望に合わせて、CGのアーティストが扱いやすいようデータを生成することができます」と説明を加えた。
最後に桐島氏はスタジアム・エクスペリメント社がサービスを開始したサポーティングアプリ「スタジアムアプリ」におけるバーチャルヒューマン撮影の事例を説明した。このアプリは選手を3Dスキャンしアバター化することでアプリでの観戦をよりリッチな体験とし提供するサービス。選手の撮影はスタジオ設備をもつトラックをスタジアムに横付けして行なう。これは選手の厳しいスケジュールに対応したものだ。アバタートラックと呼ばれるトラックに設営されたスタジオには60台のカメラが360度取り巻いており、1秒間に12パターンも撮ることができる最新鋭の設備だ。
「このスタジオで撮影することで実写レベルにリアルな表現ができるスペキュラデータを取得することができます。アバターにリアリティをもたせるためには人の肌の艶や質感をいかに上手く撮るかが重要で、我々は艶のあるデータとないデータの差分からつくり上げる技術をもっています。弊社には60人のアーティストがいて、そのなかにスキャニング専門のチームを組んでいます。このレベルのものをここまで簡単に撮影できるシステムは日本随一だと自負しています」と桐島氏。この技術によって高品質のアバターをつくることで、天候やモデルのコンディションに左右されることなく、ハイクオリティな広告コンテンツを制作できるだけでなく、さらに応用させたVR広告などにも展開することが見込まれている。
広告企画からアセット制作・撮影までをワンチームで行える強み、スタッフも募集中
つづいて、芦田氏が再び登壇し、2021年4月よりサービスを開始した「FUTURE EVENT Basics」についての説明を行なった。これは3DCG・XR技術を用いたバーチャル会場でのイベントソリューションで、ステージや小物アセットを活用したりCG演出を加えることで従来よりもハイクオリティなイベントを短期間で構築することができる。また、オーディエンス側がリアクションをとって双方向に繋げることも可能だ。
他にもLEDスタジオを活用した広告映像制作へのチャレンジと撮影の様子が解説された。このスタジオではLEDの巨大ディスプレイを背景に撮影を行うことができ、現実ではありえないような景色を撮影することができる。背景の映像はUnreal Engineのアセットで制作され、映像中の動きとスタジオ内のLED照明が同期するしくみになっている。従来の映像制作よりも遥かに手軽で、急ぎであれば1ヶ月から、念入りに制作する場合は3ヶ月程度の期間で制作することができるとのこと。
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CyberHuman Productionsの強みは広告制作の企画からアバター制作、フォトグラメトリー、LEDスタジオによる撮影やAI技術までワンチームで広告制作を行なうことができる点だと芦田氏は言う。また、スキャンのみといった部分的な需要にも対応ができるほか、制作手法自体の開発も行なっているそうだ。
同社では「3DCGアーティスト」、「UEアーティスト」、「Digital Human」、「UE/XRエンジニア」を募集している。
芦田氏は最後に「私達が挑戦していることに興味をもたれた方がいらっしゃいましたら、様々な形でご一緒できると思いますのでぜひご連絡ください」とメッセージを伝え、セッションを締めくくった。