仕事の面白さを世に広め、アニメーター人口を増やしたい

株式会社モックス　代表取締役　住岡 義和氏
複数のゲーム会社に勤務した後、同社を起ち上げた。アニメーターとしてのキャリアは16年目になる

　徹底してキャラクターアニメーションにこだわりぬく姿勢が、モックスの最大の特徴だ。「アニメーションはキャラクターに命を吹き込む重要な仕事です。しかし日本の3DCG業界においては、腕の良いスペシャリストの絶対数が少ないうえ、志望する学生も多くはない。この状況を打開したいという思いから、当社を起ち上げました」と代表取締役の住岡義和氏は語る

　"仕事の面白さを世に広め、アニメーター人口を増やしたい"という住岡氏の熱意は、同社の様々な取り組みに表れている。例えば同社では、住岡氏が講師を務める30分～1時間の勉強会が『ほぼ毎日』実施されている。内容はアニメーションだけに留まらず、デッサン・リギング・カメラワークなど多岐にわたる。なぜアニメーターにデッサンを教育するのか...その理由を住岡氏は次のように語る。「デッサンを通して、絵を描くことへの苦手意識を払拭してほしいのです。いきなりキーフレームを打ち始めるのではなく、まずは動きの設計図を手描きすることで、着地点を具体的に把握する。そんな習慣を社内に根付かせ、より柔軟な発想のアニメーションを効率的に制作できる人を増やすことが目的です」。さらに住岡氏は、月1～2回のペースで未経験者を対象としたアニメーションのワークショップも実施している。受講生は学生・プロのモデラー・制作進行などバラエティに富んでいるそうだ。

キャラクターアニメーター　味園 義仁氏
モックス社での勤務は4年目になる。勉強会でのデッサンは基礎の見直しになるそうだ

　モックス社のアニメーターである味園義仁氏は、同社で働く魅力を次のように語る。「昔からアニメーター志望でしたが、以前の職場は純粋にアニメーションだけに集中できるわけではなく、ある時はモデリング、またある時はコンポジットを任されるという日々だったのです。けれど当社に転職してからは、アニメーションだけに集中できる環境が手に入りました。それが一番嬉しいですね」。味園氏は人型のキャラクターだけでなく、恐竜やライオンなどの四足動物の動きも得意としている。また、リアル調、あるいはカートゥーン調の動き、モーションキャプチャデータの加工、リギングやカメラワークも含めた依頼まで、クライアントのニーズは様々だという。「アニメーターという仕事の幅広さと奥深さを実感する毎日です」と味園氏は続ける。

『ソウルキャリバーV』　　　　　　　　　　　 　『スーパーマリオ 3Dワールド』
　© BANDAI NAMCO Games Inc.　　　　　 　 　　 担当パート：ムービー部分のアニメーション
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　 　 　　©2013 Nintendo

短い時間で効率的に成果を出し、過度の残業と休日出勤を回避

モーションデザイナー　櫻井 良輔氏
専門学校時代にアニメーションの面白さに目覚め、アニメーションのスペシャリスト集団である同社を志望したと語る

　専門学校卒業後、2013年4月に入社したばかりの櫻井良輔氏は、過去1年間をふり返って次のように語ってくれた。「当社ではクライアントへの窓口対応を全スタッフが分担で行います。先輩たちに混じって私にも役割が与えられるので、自分の仕事に対するコスト感覚を徐々に培うことができました」。顧客満足度を高める一方でリテイク回数を抑えるため、迅速なレスポンスを心がける、早めにサンプルムービーを提出するなど、同社では様々な工夫が実践されている。「時間をかければかけるほど、自分が作ったアニメーションの価値は目減りします。そのことを常に心に留めてほしいと、スタッフ全員に伝えていますね」と住岡氏は語る。この方針を設立当初から一貫して貫いた結果、同社スタッフには短い時間で効率的に成果を出す姿勢が浸透したそうだ。同社では残業は多くても2 ～3 時間、土日祭日の出勤はないという。

株式会社モックス～スタジオ内風景～
自らが動いて体の動きを確認できるように席後ろのスペースを広く取っているという

　冒頭でも紹介したが、同社ではPanda Graphicsとの業務提携を着々と進めている。両社が提携することで、2DCGのイラストレーション、3DCGのモデリングやアニメーションなどのデジタルクリエイションを、顧客のニーズに応じて柔軟に提供できるサービスが誕生するのだ。今後は海外法人や海外在住アーティストとのネットワークも強化し、グローバルなビジネス展開に挑戦していきたいと、Panda Graphics代表取締役社長の倉富佑也氏、および3D事業部 テクニカルリードの鎌田和幸氏は口を揃える。

Panda Graphics株式会社　3D事業部　テクニカルリード　鎌田 和幸氏
株式会社カプコン、株式会社トーセなどを経て、2013年7月よりPanda Graphics株式会社制作顧問。 フリーランスとしての担当タイトルに『妖怪ウォッチ』、『レイトン教授シリーズ』などがある。「SoftImage & XSI道場」の運営も行なう

　力強いパートナーを得て、新たな挑戦に乗り出したモックス。同社スタッフと共に、キャラクターアニメーションを極めたい人はぜひ応募してほしい。