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日本国内での導入事例が増えるのに従い、知名度が高まってきたMVN。17個の慣性センサーを搭載したフルボディスーツを着用するだけで、場所を選ばず少人数で撮影可能な手軽さは、日本の制作現場との相性が良い。今春には同梱の専用ソフトMVN Studioの最新版がリリースされ、キャプチャ精度や操作性がさらに向上した。『コードギアス 亡国のアキト 第1章』の制作を終えたばかりのオレンジに、同作での活用事例を語って頂いた。
▼About Company
有限会社オレンジ
TVアニメや劇場アニメ、OVA、ゲームムービーの3DCG映像を制作するCGプロダクション。特にアニメ作品において、作画と3DCGを自然に融合させる表現を得意としている。数多くの作品を手掛ける中で蓄積されたノウハウと実績が、高品質な映像制作を可能にしている。
▼About Project
コードギアス 亡国のアキト 第1章 翼竜は舞い降りた
TVアニメシリーズ「コードギアス反逆のルルーシュ」の世界観を受け継いだ物語。新主人公アキトの苛酷な運命を、全4章の劇場用新作で描く。第1章は全国30カ所の劇場で8/4より上映開始。
©SUNRISE/PROJECT G-AKITO
Character Design ©2006-2011 CLAMP
最新版のMVN Studioでは
キャプチャ精度や補正機能が向上
--井野元さんはアニメ制作でのモーションキャプチャ活用に積極的ですが、MVNと光学式、それぞれの使用頻度はどのくらいでしょうか?
井野元氏--現在はMVNだけでこなせていますね。弊社では、アニメーター自らがMVNを着用して撮影しています。ただし役者ではないので、演技力の面では難があります(笑)。一方で、作画と合わせた場合に違和感のない、メリハリのあるアニメらしい動きを熟知しているという利点があります。
--アニメ特有の動きを表現するうえで、それは心強いですね。御社がMVNを導入したのはいつ頃ですか?
井野元氏--日本でMVNの販売が開始されて間もない時期、2010年頃から使い続けています。当時から十分に精度の高い製品だと感じていましたが、MVN Studioのバージョンアップで、さらに使い勝手が良くなりましたね。
--脊柱や上腕の繊細な動きのキャプチャ精度が向上したと聞いていますが、印象は如何ですか?
井野元氏--良い感じです。キャラクターに自然な動きをさせるうえで、背骨まわりの撮影精度は凄く重要なんです。かなり改善された印象がありますね。加えて、高低差のある場所で撮影した際の補正の手間が、従来のMVNよりも軽減されましたね。
--ジャンプモーションの撮影などでは、足底と地面の接地点に誤差が発生する場合がありましたよね。
井野元氏--その通りです。これまでの撮影では、リアルタイムのプレビューで誤差が発生しても、ポスト処理の段階で修正すれば大丈夫だろうといった勘を頼りに進行する場合がありました。けれども最新版ではソフトの補正機能が向上しているので、誤差のないプレビューをリアルタイムに確認できるようになっています。
--最新作『コードギアス 亡国のアキト 第1章』では、高低差のある場所でのモーション撮影の機会はありましたか?
井野元氏--ありましたね。本作では一部のモブキャラクターのモーションでMVNを使用しました。例えばモブが大型の車から降りて走っていくシーンの撮影では、スタジオ内に車の床と地面に見立てた段差を作ったんです。この段差を使った撮影でもソフトがうまく機能したので、従来よりもポスト処理にかかる労力を軽減できました。加えて、動きは複数パターン撮影しておいて、モブに割り当てていきました。バリエーション豊かなモブの動きを効率的に作れた点でも良かったですね。
Point 01 脊柱や上腕の繊細な動きをキャプチャできる
(写真左)MVN Studioの最新版では、脊柱や上腕の繊細な動きのキャプチャ精度が向上している。そのため、従来よりも自然な動きを再現できるようになった。「例えば床に手をついて立ち上がる動きを撮影する場合、手が床に接地していないといったデータの誤差が発生しがちでした。最新版ではソフトの補正機能が向上しており、そういった問題の多くが解消されています」と、井野元氏は評価する。
(写真右)アニメーターの諏訪部氏がMVNを着用して演技し、その撮影結果をCGディレクターの鈴木氏がリアルタイムに確認する。納得いく動きが撮影できるまで、アニメーター自らが試行錯誤を繰り返すことができるのもMVNの魅力だ。
モーションキャプチャ導入の判断基準は
品質が向上するかどうか
--モブ以外、例えばメインキャラクターの表現に今後MVNを活用する可能性はありますか?
井野元氏--モーションキャプチャは強力な武器になり得ると考えているので、徐々に活用の幅を広げていきたいです。次回作の第2章では、ナイトメアフレーム(本作に登場するロボット)の表現にも使ってみたいですね。
--第1章でのMVN活用で、良い手応えが得られたということでしょうか?
井野元氏--モブであれば問題なく使用できるという感触はありました。メインキャラクターとなった場合は、さらに神経を使う必要があるでしょうね。
本作でのMVN使用には、モーションキャプチャの効果的な活用方法を模索する意味合いもありました。撮影後、MotionBuilderや3ds Max上で演技やタイミング、位置をどの程度修正する必要があるのか、確認したかったんです。こういった模索を繰り返すことで、モーションキャプチャを使用するべきか、全ての動きを手付けするべきか、自信をもって見極められるようになると考えています。
--アニメ制作における3DCGの需要は着実に増加していますから、さらにモーションキャプチャの使用頻度を上げて、制作を効率化する必要があるでしょうね。
井野元氏--そうですね。とはいえ最優先にしたいのは、品質の向上です。効率が良いというのはCG屋の都合であって、作品の観客には関係ないですから。
観客に喜んでもらえるものを作らなければ全く意味がありません。モーションキャプチャと手付け、
同じ期間と手間をかけた場合に、より高い品質の映像を作れるのはどちらか、という基準で判断していきたいと思っています。
--第2章では、モーションキャプチャと手付けを効果的に組み合わせた画作りに、さらに磨きがかかりそうですね。全力で楽しみにしています。
Point 02 上下移動をともなうモーションの誤差を
リアルタイムに補正
MVNの慣性センサーが撮影するのは空間における相対位置なので、階段の上り下りやジャンプなど、上下移動をともなうモーションでは撮影データに誤差が 生じる場合もあった。最新版のMVN Studioでは補正機能が向上しており、ポスト処理での修正の手間が軽減された。「処理が楽になったのに加え、補正済みのデータを、撮影しながらリアルタイムに確認できるのは嬉しいですね」と、井野元氏は語る。
TEXT_尾形美幸