(メイン写真説明)MVN 2 セット(女性 S サイズ、男性 M サイズ)を 2 人で同時に利用し、格闘系のモーションデータを収録。2 人同時のキャプチャは、動きによっては、交差したり、体の後ろに腕が隠れる時があるが、その場合でも正確にデータ取得できるボディスーツ式の利点が顕著に現れる

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セットアップの手軽さと専用スタジオが不要なその機動性の高さから、日本国内でも映画・ゲーム・アニメ・遊技機と様々な分野で導入が進む慣性センサ式モーションキャプチャ MVN。学生でも活用しやすい利便性の高さから学びの場へも活用が広がっている。この 4 月に導入したばかりの東京デザイナー学院 映像デザイン科にカリキュラムへの導入理由を伺った。

▼About School

専門学校東京デザイナー学院 映像デザイン科
今年で50周年を迎えるデザインの専門学校。「最先端の映像をデザインすること」をコンセプトとした映像デザイン科では 2 年間のカリキュラムでプリプロダクションから撮影、3DCG、ポストプロダクションまで一連の映像制作のワークフローを学ぶことができる。

学生でも気負うことなく
モーションキャプチャが可能

CGWORLD(以下、C):世界標準のアーティストを輩出するため、時代を先取りした設備やカリキュラムを整備されている貴校ですが、今回新たに MVN を導入された理由についてお聞かせください。

松永治空氏(以下、松):当学科の特長は 2 年間のカリキュラムの中で絵コンテやプリビズといったプリプロから撮影、3DCG、そして合成/編集といったポスプロまで一貫した映像制作のフローを学べるところにありますが、特に「映像をデザインする力」を養うことを重視しています。そのためモーションキャプチャの導入にあたっても、何より学生のイメージを学生自身の力で映像に落とし込みができるようなものを探していました。

C:学生でも簡単に操作できるということがポイントだったのですね。

:そうですね、MVN はセットアップや収録、後処理に至るまで非常にシンプルな操作方法でかつ、イメージに近い自然なキャラクターアニメーションを実現できるため導入に至りました。

小澤 怜氏(以下、小):その他にも 2 台の導入で殺陣(たて)のような 2 人分のデータを一度に収録できたり、電波が届く範囲であれば野外でも撮影が可能というところから活用可能性が非常に高そうだと感じたことも大きいですね。

C:プロの現場でもアニメーターがイメージした動きを手間をかけずに短時間で収録することができる点が評価されていますね。

:教育機関でもそれは一緒です。専属のオペレータが必要でセットアップに時間がかかってしまうシステムよりも、思い立ったらすぐにスーツに着替えてその場で収録して、自分のイメージするモーションに到達するまで何度も検証できる MVN の方が、学生の自発的な学びのモチベーションを高めることができるのではないでしょうか。

:自分自身で動いてその動きをリアルタイムに検証することができるので、手付けでアニメーションを付ける際の理解にもつながると思います。当学科では学生だけでもスタジオを自由に活用することができますし、研修を受けた後であれば MVN の利用を認めています。学生にはぜひどんどん試してもらいたいですね。

POIN 1
リアルタイムまたは、
収録後すぐに動きが確認できるのが便利

動きの確認

アクターの動きがリアルタイムで確認できるため、演出担当の学生らと、絵コンテと比較しながら動きを何度も再生し、実際の動きを詳細に確認することができる。アクター担当の学生も、自分の動きを客観的に見ることができ、動き(演技)にフィードバックすることができる

演出意図が反映されているか
リアルタイムに確認

C:では実際に授業ではどのような形で取り入れられているのでしょうか?

:MVN を使うことでアイデアが具体化しやすいので演出意図をどう映像表現に反映するかというトレーニングに活用しています。授業ではまずは絵コンテなどで自分のイメージをしっかりと作り上げさせているのですが、その絵コンテと、ビデオコンテと収録したモーションデータとを見比べながら演出意図にあった動きになっているか、アクター役と演出担当の学生をはじめ、スタッフ全員でリアルタイムに確認しています。

:自分以外の人が作った絵コンテや作品を忠実に模倣することも勉強になりますね。例えば、ゾンビが歩いてくるようなゲームのあるシーンをベースに、MVN を使って動きを真似することで、動きの背景に隠されたプロの演出意図の理解にもつながります。

C:今後の授業ではどういった活用を予定されているのでしょうか?

:今後はプロのダンサーに MVN を使ってもらい動きを学んだり、MVN のリアルタイムキャプチャの機能を生かし、モーション VJ のようなリアルタイムプロジェクションのライブなどを計画しています。手軽に使える機材と、学生の新しい発想とが組み合わさることでモーションキャプチャを活用した新しい映像表現が生み出されることを期待しています。

POIN 2
学生たちだけでも簡単に
スーツの着脱が可能

着脱

学生たちだけでも手軽に素早くセットアップ可能。東京デザイナー学院 映像デザイン科では、特殊な機材は免許許可制で、使い方の講習を受講した人のみが利用できるそう。ボディスーツは、背中のケーブル接続のみ手伝ってもらえば、1人でも素早く着られる

TEXT_安藤幸央(エクサ)
PHOTO_大沼洋平