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独自路線を行く孤高のBlenderアニメーション作家 安田現象氏がクリエイター向けPC「raytrek」を検証

独自路線を行く孤高のBlenderアニメーション作家 安田現象氏がクリエイター向けPC「raytrek」を検証

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セル調の3DCGと高度な演出による独自のアニメーション作品を作り続ける安田現象氏。モデリングからアニメーション、コンポジットまでを一人で行う同氏の制作スタイルが確立された背景と、使用するPCスペックのこだわりについて話をきいた。

TEXT_神山大輝/ Daiki Kamiyama(NINE GATES STUDIO
PHOTO_竹下智宏/Tomohiro Takeshita
INTERVIEW_阿部祐司/Yuji Abe(CGWORLD)

INFORMATION

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「自分自身の作品をアニメ化したい」という想い

安田現象デモリール2020

CGWORLD(以下、CGW):安田さんは3DCGアニメーションの個人クリエイターとして大変注目をされていますが、まずはこれまでのキャリアについて教えて下さい。

安田現象氏(以下、安田氏):はじめての創作活動は高校2年生の終わりに始めた油絵で、大学でも美術学科で油絵を専攻していました。3年次、就職活動を意識したタイミングで「絵では食っていけない」と感じたため、知り合いに相談するなどして自分の中に出てきた選択肢が3DCGでした。その流れでデジタルハリウッドに1年間通って3DCG制作を学びました。これがたしか、21歳頃のことだったと思います。

CGW:油絵を選考というと、昔から絵を描くことが好きだったのでしょうか?

安田氏:いえ、高校以前は絵を描いたり、アニメや漫画などの文化に多く触れてきたわけでもなく、創作の礎となる積み重ねは特にありませんでした。落書き程度でも絵を描くとか、たくさんの作品に触れるとか、そういったことは表現者として必要な積み重ねだとは思うのですが、自分はそういったものも少なかったと思います。

CGW:大学卒業後は株式会社ニトロプラスに入社されたとのことですが、どういった経緯だったのでしょうか。

安田氏:はい、ニトロプラスでは3年間、3DCGクリエイターとして経験を積ませて頂きました。会社を選んだ経緯としては、純粋に自分が最も良く知っていたメーカーであることと、趣味によるものですね。そこでセル調の3DCGにも触れ、アニメ案件にも携わりました。その後、社内では規模の大きいゲーム開発にも参加し、そこである種満足して退社したかたちになりました。社会人になってから気付いたのですが、自分にとって一番面白いのは「物語づくり」なのではないかと気付いたんです。

CGW:物語というと、具体的にはシナリオ制作などでしょうか?

安田氏:そうですね。ニトロプラスに務めながらシナリオの専門学校にも通っていて、社内でも下倉バイオ氏(ニトロプラス所属シナリオライター)に見て頂きながら勉強しました。退職後はフリーランスとして業務委託などをしていましたが、実はその傍らでライトノベル執筆もやっていて。ただ、さまざまな賞に応募して、何度か最終選考などには残ったのですが、どうしても受賞が出来なかったんです。そこで、逆に「自分は受賞したら何がしたいんだろう?」と考えたんですが、やっぱり自分の作品をアニメ化したかったんですね。だから自分で作ってしまおうか、ということで制作したのが、2020年2月8日に公開した自主制作アニメ『メイクラブ』です。 自主制作アニメ『メイクラブ』by安田現象

CGW:2020年12月公開の『正しくなれない』も、動画が2000万再生を超える非常に大きな反響を呼んでいました。

安田氏:『メイクラブ』公開の時期からアニメーション制作のお仕事を頂くようになりました。他にも面白いお話を頂いていたのですが、アニメ作家として自身のIPをつくっていきたいという想いが強かったため、お断りしたものもありました。『正しくなれない』は2か月間、1日15時間作り続けて、何とか仕上げたものです。やり切った、という感じですね。 ずっと真夜中でいいのに。『正しくなれない』MV(ZUTOMAYO - Can't Be Right)
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BlenderではGPU性能と価格のバランスを重視

CGW:これまでの作品はBlenderで制作されているとのことですが、その他のDCCツールは何を使っていますか?

安田氏:BlenderのほかはAfter EffectsとPhotoShopです。作り方自体はかなり普通だと思いますよ。Blenderを触り始めたのは会社を辞めたあとで、『メイクラブ』の前に4本ほどショートムービーを制作して、そこで使用感を把握したうえで映像の仕事で使う方向に持って行きました。それまでは3ds MAXとMayaを使っていましたが、無料ということと機能的に問題がないことからBlenderに移行しました。

CGW:3Dアニメーション制作の全工程をおひとりで行っているとのことで、相応にPCスペックも求められると思います。現在はどういったPCで制作を行っていましたか?

安田氏:フリーランスになってから購入した5年程前のマシンにはなりますが、CPU Core i7-7700K、メモリ64GB、GPU Quadro M2000という構成です。ストレージ構成はSSD 500GBとHDD 1TBで、当時は28万円だったと記憶しています。ずぼらなのもあって、マシンの更新はあまりやっていないのですが...。購入時は第一に「メモリを厚くしたい」と考えていました。というのも、作業のかたわらでリファレンスを開いたり、YouTubeを開くことが多くて。また、レンダリング中も並行で別の作業が出来たらということもあって、当時としては頑張って64GBを搭載しました。

CGW:現在はCPUやGPUの重要度も高まっていると思いますが、PC選定に際して他に重視するポイントはありますか?

安田氏:メモリが重要なのは変わりませんが、今はCPUよりもGPUを重視する時代かと思います。もちろんどちらもが最新であれば長く使えると思いますが、Blenderを扱うにあたってはGPUを重視したいです。Blenderは2.80以降にGPUベースのレンダラであるEeveeが使えるようになりましたが、これがセル調の画作りでは非常に有用です。ビューポートなどでもGPUが優位に働くので、どちらか一方を優先するならGPUを選択したいです。

CGW:改めて、今回お試しいただいた『raytrek ZF』について、使用感をお聞かせください。先ほどのお話の流れで言うと、GPUはNVIDIA GeForce RTX 3070 8GBを搭載していますが、違いは感じられましたか?

安田氏:そこはとても感じました。私のやっているようなアニメーション制作では、正直に言ってGTX1000台のモデルでも動作自体は問題ありません。ただ、今回のraytrekを使用して、「無意識に我慢していたんだな」と思う部分はありました。例えば、レンダリングが短縮されるのはもちろんですが、ビューポートでマテリアルを表示するまでの時間も1分から10秒程度まで短縮されました。また、これまではサブディビジョンサーフェイスをOFFにして作業していましたが、raytrekではONにしたままアニメーション作業ができたのも驚きました。手と顔の関係性が重要視されるようなカットでは、サブディビジョンサーフェイスの有無で干渉具合の確認のし易さがもろに影響するので、見ながらスムーズに作業できるのは非常に良いですね。

左:ソリッ