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1974年に設立され、アニメーション・実写映画のCG・VFXを手がけ、日本を代表する作品を次々と世に送り出してきた白組。近年は企画・製作にも取り組んでいる同社には現在、200名を超えるアーティストが在籍しており、それぞれがワークステーションを駆使した作品づくりに携わっている。ただし従来は、制作スタッフが使うワークステーションの機種が納期による型番の変更等で統一されておらず、保守・運用管理の面で難があり、制作環境の均一性を高いレベルで保つことが困難だった。そこで取り組んだのが、レノボ製品による機種統一であった。白組の技術スタッフに導入の決め手となったポイントを聞いた。
TEXT & PHOTO_猿人提供
はじめに
今回の取材に応じてくれたのは、白組 システム部 部長・鈴木 勝氏と、System Coordinator・藤井晴信氏の両氏。
白組では、制作で利用するワークステーションが異機種混成の状況にあったため、機器の保守・運用管理の負荷が大きくなっていた。それに加えて、CGやVFXのソフトウェアを稼働させるハードウェア環境のバラつきから、アーティストの制作環境を共通化し、共同作業や意思疎通の効率性をさらに高めるのも困難だったという。
鈴木 勝氏
白組 システム部 部長
そこで、社内のワークステーション全台をレノボの「ThinkStation Pシリーズ」で一本化する決断を下し、ミニタワー型ワークステーション「ThinkStation P330 Tower」と、ハイエンドワークステーション「ThinkStation P920」を導入。
ThinkStation Pシリーズによるワークステーションの一本化によって、保守・運用管理がシンプル化された。また、アーティストのワークステーション環境が共通化されたことで、全員が同じソフトウェアを利用できる環境が整備され、社員同士でのノウハウの共有や意思疎通を効率化する素地がつくられたという。
藤井晴信氏
白組 System Coordinator
<1>高性能、堅牢性、熱効率〜ワークステーションに求めてきたこと〜
「最先端と伝統技術が混在し、ハンドクラフト精神が生きた本物の映像を追求する」。
このフレーズを旗印として掲げ、確かな魅力が込められた良質なCGアニメーション&実写VFXを制作しているのが白組だ。1974年に設立された同社は、アニメ『うっかりペネロペ -Penelope tete en l'air-』や『もやしもん』、映画『ALWAYS 三丁目の夕日』シリーズ、『永遠の0』『STAND BY ME ドラえもん』『寄生獣』シリーズ、『シン・ゴジラ』など、数多くのヒット作を手がけてきた。
そんな白組のスタジオは、本社のある青山と三軒茶屋、調布に分散している。社員の総数は、制作業務に携わるアーティストを中心に210名に上り、ジャンルや業務ごとに様々な制作チームが存在する。
言うまでもなく、白組のアーティストには1人1台の割合でワークテーションが貸与されている。それらのワークステーションに求められる基本要件について、鈴木氏は次のように説明する。
白組 システム部 部長・鈴木 勝氏(以下、鈴木氏):爆発シミュレーションや流体シミュレーションなどの用途に使うワークステーションには、最低でもデュアルプロセッサ以上のCPUと128GB以上のメモリが必要です。また、CG制作やコンポジットといった通常の用途でも、64GB以上のメモリは最低でも必要ですし、それにプラスしてNVIDIAのQuadroやGeForceといったグラフィックスボードも必須です。そうした条件とアーティストのニーズを聞きながらワークステーションを都度選び、導入してきました。
こうしたスペック上の要件に加えて、同社ではワークステーションの熱効率も重視してきたという。
鈴木氏:当社の場合、シミュレーション専用のサーバは用意していますが、シミュレーション以外のほとんどの作業は、アーティストが各自のワークステーションを使って行なっています。ですので、CPU・GPUのリソースをフルで使い切るようなレンダリングの処理が3~4時間継続してワークステーション上で行われるケースも珍しくありません。この場合、内部のCPU・GPUはかなりの熱さになるので、排熱効率の悪いワークステーションでは、強制シャットダウンなど、現場の業務に負のインパクトを与えるトラブルが生じる恐れがあるのです。
この点に関して、藤井氏は次のような説明を加えてくれた。
白組 System Coordinator・藤井晴信(以下、藤井氏):今日のワークステーションは、CPUやGPUなどのメインのパーツがどのメーカーの製品も同じなので、スペックが同じなら性能に大差はないと思われがちです。ですが、実際にはそんなことはありません。厳しい環境で利用し続けていると、完成度の高い製品とそうではない製品との差が歴然となります。その差をしっかりと把握して、耐久性・信頼性に優れた製品を選ぶことを大切にしています。
<2>異機種混在の解消に向けて
従来、白組のワークステーションは、多様なメーカーの製品が入り混じった状態にあった。また、ワークステーションに搭載させるGPUについても、クライアントの環境や案件の内容に合わせて、NVIDIA QuadroやGeForceなど、様々なGPUが選択されてきたという。
鈴木氏:このような異機種混在の環境が作られたのは、現場のニーズに都度対応してきたある意味柔軟な結果と言えますが、機種がバラバラの状態にあると、機器の故障時に代替部品を即座に用意できないなど、システム部としてのサポートが難しくなります。そのため、トラブルへの対応スピードもなかなか上げられずにいました。
鈴木氏:また、アーティストが使うワークステーションのスペックが不統一であると、ソフトウェアの利用環境を共通化するのも難しくなります。そうなると、アーティスト間での業務の引継ぎやシェア、切り替え、さらには制作物を通した意思疎通が図りにくくなります。そうした問題を抜本的に解決するためにも、社内のワークステーション全台を単一メーカーの機種に統一したいと従来から考えていました。
このような考えをかたちにすべく、白組では社内のワークステーションの標準化に踏み切りました。その際に、社内標準機として選んだのが、レノボのワークステーション「ThinkStation P330 Tower」と「ThinkStation P920」だ。
鈴木氏:レノボ製品の導入を検討し始めたのは2016年ごろにさかのぼります。当時から、ThinkStation Pシリーズの900番台のモデルに注目していました。理由は、筐体内部における部品の効率的な配置や熱効率を高めるエアフロー設計など、運用を第一に考えた創意工夫が随所に凝らされ、設計者・開発者の想いがひしひしと伝わってきたからです。ただし、GPUについては、プロユースのGPUとして存在感を強める「NVIDIA GeForce」へのシフトを図りたいと考えていましたのですが、ThinkStation PシリーズはQuadroしか選べなかったこともあり、私個人としてはすごく推したのですがシステム部内での投票で負けてしまい、一度採用を見送りました。
そこで、白組 システム部が独自にカスタマイズを施すことでThinkStation PシリーズにGeForceを実装する目処が着いたという。それを契機に再び導入の検討を再開させ、2018年末に正式な採用に至った。
藤井氏:P330 TowerもP920も、2016年当時の900番台のマシンに比べて、筐体のデザインや熱効率がさらに向上していました。しかも、P330 Towerについては、一層の改良が加えられ、従来機に対し約30%の性能向上と30%のコンパクト化が実現されるとの情報もつかんでいました。そこで、P330 Towerが改良されるタイミングを待って本格導入へと動いたのです。
<3>入念な検証を経てP920・P330導入を正式決定
もっとも、カタログスペックや設計の良否だけでは、その製品(IT機器)が、期待通りの性能を本当に発揮するかどうかはわからない。
そのため白組では、ワークステーションなどの重要なIT機器を導入する際には、必ず実機を使って徹底的に他社製品との比較検証を行なってきた。それは、P920とP330 Towerについても例外ではなく、導入の正式決定前に独自の耐久テストを実施し、他社製品との性能差を確認したという。
藤井氏:この検証で特に入念にチェックしたのは、NVMe接続のM.2 SSDの冷却性能です。具体的には、CPU・GPUを使い切るように負荷をかけた状態で、SSDの温度変化や排熱性能、電源効率、ノイズなどを確認しました。他社製品では、CPUの温度が90℃を超えると強制的にシャットダウンが行われ、ファンがフル回転しているにもかかわらず、一向に温度が下がらないという現象が多々見受けられました。一方、ThinkStation P330やP920ではそのような現象は見られず、特にP920では、CPU温度が80℃後半になるとファンの回転とともにすっと温度が下がっていき、SSDの性能が劣化することもありませんでした。これにより、P330やP920に施された様々な設計上の工夫が、しっかりと機能しうることが確認できました。
「GPUボードの発熱/ファンによる空気の流れを意識した本体ファンの位置取りが絶妙」と、鈴木氏
<4>運用後に改めて気づく革新性
白組では、2018年末からThinkStation P330・P920の導入を段階的に進め、2020年2月時点で140台のP330と3台のP920の配備を完了させた。この配備により、同社におけるワークステーション運用管理や機器メンテナンスがかなりシンプルになったという。
鈴木氏は、実際の運用を通じて改めて実感したP330・P920の魅力として、「静音性」「デザイン性」「保守性」「排熱設計の革新性」などを挙げる。
鈴木氏:P330・P920は非常に静かでファンの音が気になるようなことはありません。また、P330の場合、筐体前面に配置されたUSBポートが一段奥まった位置にあります。そのため、ペンタブレットを(USB経由で)接続したり、ソフトウェアライセンス用USBドングルを差し込んだりしても接続部分の出っ張りがなく、何かをぶつけて、ポートを破損させてしまうリスクも小さくなります。こうした細かな配慮は、使ってみて初めてその良さに気づくものです。
ThinkStation P330は静音性に優れ、振動も少なく、作業に集中しやすいと、鈴木氏
このほか、運用を通じて気づいたP330・P920の設計上の革新性には以下のような事柄が含まれているという。
・M.2 SSDに排熱フィンが備わっている
・大型ファンの採用でファンの回転数が低く抑えられている
・前面の吸入口がハニカム構造で効率よく空気を取り込んでいる
・内蔵ディスクを、工具を使わずに取り付けられる
・HDDに防振ゴムが標準で着いている
・GPUとM.2 SSDのPCIeスロットの位置が排熱効率のよい配置になっている
工具を使わずにディスク交換が行えるといった保守性もThinkStation Pシリーズの魅力だ
ファンの振動・振動音を吸収する小さなゴムラバーからも、開発者たちの徹底したこだわりが伝わってくると、鈴木氏は評価する
<5>IT革新を共に協創していく
以上にように、白組では、ThinkStation P330/P920の社内展開をほぼ終えている。この環境整備をテコにしながら、今後は、システム部が積極的に制作現場のプロジェクトに関与して、受け身ではない「攻めのシステム部」となることを目指している。
鈴木氏:例えば、どのようなソフトウェアやライブラリが今後主流になるかを現場と一緒に考察し、新しいトレンドに合致したハードウェアやインフラを速やかに提供していきたいと考えています。
藤井氏:制作現場におけるソフトウェアの使い方が上達すればするほど、ハイパフォーマンスのハードウェアを購入した恩恵が大きくなります。ですので、トレーニングやセミナーなどを通じて社内のノウハウを充実させるだけでなく、社内のスタッフ同士が新しい表現手法やテクノロジーの使い方を教え合う場を提供していくつもりです。このように、アーティスト同士が互いに切磋琢磨できる環境を確保するという意味でも、レノボのP330・P920によって社内ワークステーションの標準化・統一化を実現した意義は大きいです。
そして、レノボに対しても、より密接なコミュニケーション&コラボレーションを図っていきたいと鈴木氏は続ける。
鈴木氏:お互いにものづくりをする立場として、ワークステーションを中心に、様々な業界の人たちと意見が交換できる場をともに構築していければと考えています。そのための取り組みとして、私たちが検証した結果や評価などの情報を、社外へと積極的に開示していくつもりです。
「ThinkStation P330やP920の設計は、全てにおいて考え抜かれています。それが高い熱効率や耐久性、使い勝手の良さにつながっているのですが、製品からは設計・開発を担当した人たちの想いがひしひしと伝わってきて、感動すら覚えます」(鈴木氏)
「レンダリングのように、CPU・GPUの使用率が100%に達するような処理を長時間かけても、効率的な排熱によって安定動作を続けるのが、ThinkStation P330やP920のスゴイところ。スペック上は同じに見えても、完成度の高さのちがいで実性能に大きな開きが出ることを改めて感じています」(藤井氏)
INFORMATION
次回取材も決定!次は白組のアーティストに取材し、「ThinkStation Pシリーズ」が現場にどのような影響をもたらしたかを伺います。(CGWORLD)
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デスクトップワークステーション
「ThinkStation Pシリーズ」
問:レノボ・ジャパン株式会社
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TEL:0120-80-4545
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