>   >  新・海外で働く日本人アーティスト:アーティストからプロデューサーに転身し、インターナショナルな環境で活躍。第55回:中川 亮(Virtuos 上海スタジオ / Game Producer)
アーティストからプロデューサーに転身し、インターナショナルな環境で活躍。第55回:中川 亮(Virtuos 上海スタジオ / Game Producer)

アーティストからプロデューサーに転身し、インターナショナルな環境で活躍。第55回:中川 亮(Virtuos 上海スタジオ / Game Producer)

今回は本連載では初となる中国・上海からお届けしよう。最近の中国では、高い技術力をもつゲーム開発会社やプロダクションが増え、高いキャリアを積むことが可能な環境だという。今回、上海で活躍中の中川 亮氏に話を聞いた。


TEXT_鍋 潤太郎 / Jyuntaro Nabe
ハリウッドを拠点とするVFX専門の映像ジャーナリスト。
著書に『海外で働く日本人クリエイター』(ボーンデジタル刊)、『ハリウッドVFX業界就職の手引き』などがある。
公式ブログ「鍋潤太郎☆映像トピックス」


EDIT_三村ゆにこ / Uniko Mimura(@UNIKO_LITTLE



Artist's Profile

中川 亮 / Nakagawa Ryo(Virtuos 上海スタジオ / Game Producer)
静岡県出身。武蔵野美術大学映像学科を卒業後、都内のCG制作会社に就職。3DCGゼネラリストとしてのキャリアを経た後、ゲーム開発および3Dアート制作会社Virtuos(ヴァーチャス)に移籍。アート部門のアシスタント・プロデューサーとして、3Dキャラクターモデリングや3Dの背景モデリング、キャラクターアニメーションやコンセプトアートのマネジメントを担当。その後、ゲーム部門に異動し、アシスタント・ゲーム・プロデューサーとして複数の人気ゲームタイトルのプラットフォーム移植プロジェクトに携わる。2020年よりゲームプロデューサーとしてプロジェクトを指揮。2012年に初めて上海の土を踏んで以来、中国駐在歴を更新している。

<1>会計の勉強をしていたことに興味をもたれる

――学生時代のお話をお聞かせください。

高校時代にオーストラリアに留学していました。私は一人っ子なのですが、思いきって送り出してくれた両親に感謝しています。語学コースで1年英語集中コースに入り、その後オーストラリアで高校生活を送っていたのですが、現地の生徒の中に積極的に溶け込んで高校生活を謳歌しました。

学生時代は武蔵野美術大学で映像学科を専攻し、フィルモグラフィー、フォトグラフィー、CG、インタラクティブアート、空間映像など、幅広く触れました。興味がある分野に対して理解を深めることができる授業システムでしたね。

子供の頃からハリウッド映画が大好きだったのですが、入学後はいろんな分野に興味をもち、様々なジャンルの作品制作に励んでいました。3年次あたりから広告デザインにも興味をもちはじめたのですが、「じゃあ映像とデザインが組み合わさったものは何だろう?」と悩んだときに「CGがあるな」という結論に辿り着き、卒業後はCGコンテンツ制作に特化した映像業界に進むことを決意しました。

――日本でお仕事をされていた頃のお話をお聞かせください。

大学を卒業後、都内にある3Dモデル制作、キーフレームアニメーションやコンポジットなどを手がける複数のプロダクションに在籍し、3DCGゼネラリストとしてCG制作の全工程に携わりました。また、リアルタイムデモ(In-Game Cinematics: IGC)向けのプリレンダリングの制作や、インゲームで使用されるモデル制作なども担当しました。

3DCGデザイナーになったばかりの頃は皆さんもそうだと思うのですが、当時は朝から夜中までずっとPCに張り付いて作業をしていました。少しでもスキルアップをしたいという思いから、週末もよく出社していましたね。自分で手を動かして制作に携わりたい、ということに強くこだわってきたのですが、仲良くなったCGプロデューサーの話を聞いたり、その仕事ぶりを間近で見たりしているうちに、私も次第に惹かれその道を模索するようになりました。

――海外の映像業界への就活は、いかがでしたか?

知人からVirtuosが人材を募集していることを知り紹介を受け、Skypeで社長とアート部門のマネージングディレクターとインタビューをしました。ただ、自宅の回線状態が悪く、また英語をしばらく使っていなかったこともあり、思うように受け答えができず手応えのなさを感じました。しかし、私に3DCG制作のバックグラウンドがあることや、自己投資として会計の勉強をしていたことに強い興味をもっていただけたようです。その後すぐ、社長が出張で来日する機会があり、2回の面談を経てオファーをもらいました。


▲お仕事中

――中国での就労ビザの申請はどのようなプロセスが必要なのでしょうか?

中国では「Zビザ」と呼ばれているのですが、渡航前に取得が求められており、私が渡航した2012年当時は大体下記のプロセスでした。現在は多少変更があるかもしれません。

①卒業証明書と在籍証明書、パスポートコピー、証明写真を用意し現地受入会社に送付。会社が必要書類を提出し「招聘状」と「就労許可証」を発行、郵送にて受領。

②「招聘状」と「就労許可証」および「健康診断書」を在日中国領事館に提出し、一時入国用の就労ビザ(1ヶ月のみ有効)を取得し入国。

③「外国人就業証」と「外国人居留証明書」を取得し、入国管理局にて正式な就労ビザ(1年間有効)を取得。

④ 以降、毎年1回現地入国管理局にて就労ビザの更新手続きを行う。

また、2017年からは中国での就労を希望する外国人就業者に対しポイント制が導入され、合計で一定のスコアに達していないと就労が認められないケースがあるようで、ハードルが少し高くなりました。


<2>中国で海外就労の基礎を固めるという選択肢

――現在お勤めのVirtuosはどのような会社でしょうか? 

Virtuosは2004年の設立以来、シンガポール本社、中国(上海、成都、西安)、ベトナム、カナダ、フランス、日本、韓国、アイルランド、アメリカ等世界8カ所で業務を展開し、コンソール、PC、モバイルのAAAゲームタイトル向けに、ゲーム開発および3Dアート制作業務を提供しています。

――現在のポジションの面白いところは何でしょうか。

社内の様々なポジションのスタッフとコミュニケーションをとる機会があることです。担当する案件の実作業を行うスタッフはもちろん、他部署や管理レイヤー、別のオフィスのスタッフとも様々な場面で連携をとっています。アジアと欧米の文化がバランスよくミックスされた職場なので、クロス・カルチャーな経験を通じて自身の知見を広げたいという人には最適だと実感しています。

また、私の周囲のスタッフは、日本のゲームやアニメ、漫画、あるいはニュースについてよく話題にするなど興味をもっている様子が窺えます。日本語を理解できるスタッフが多く、彼らにはいつも驚かされます。英語が堪能なスタッフも多く、インターナショナルな環境だと思います。

――中国語はどのように習得されましたか?

上海に来たばかりの頃の私は、「ニーハオ」と「シエシエ」といった挨拶程度の言葉しか知りませんでした。会社が福利厚生の一環で、外国人就労者に対し1年間中国語レッスンをサポートする制度があり、週2日のペースで1時間のレッスンを受けることができました。また、個人で中国語教室を見つけて、週末や平日退社後にマンツーマンのレッスンに2年間近く通っていました。

また、日本語が上手な中国人の大半が「日本のアニメやドラマ(中国語の字幕付き)を見て身に付けた」というのを手本として、ある程度の中国語の基礎が身についた段階から、自分も同じように極力中国語の字幕がある動画を見るように意識しています。

Virtuosでは英語力の高い人材が多いのは事実ですが、やはり母国語の中国語ですと情報の正確性とスピード感が格段にちがいますし、人との距離感も近くなると感じます。日々のスタッフと