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復刻・第26回:地雷

復刻・第26回:地雷

STEP 03:「地雷の爆発煙」を考える ~3つの特徴を活かして爆発を再現する~

煙の特徴に分けてシミュレーションし地雷の爆発を形づくる

地中での爆発は砂利と土で構成され、対戦車地雷のような威力の高い爆発ではない限りはなかなか火が立ち昇ることはありません。今回の地雷爆発もそのほとんどが土煙となって地上に吹き出されています。地上で爆発が起きるよりも圧倒的に不純物が多く様々な挙動で推移していくため、1つの爆発では全ての煙のパターンを再現することは難しく、大きく3つの特徴に分けて制作することにしました。

1つ目は上空に立ち昇る煙です。以前制作した「荒野の爆発」同様、爆心地を中心に上方向に伸び上がる煙です。注意する点は荒野の爆発のような地上での爆発とはちがい、砂利や土が多い分モコモコとした煙にならないようにすること。FumeFXパラメータ内のTurbulence Noiseを中心に使用して目の細かい質感になるようシミュレーションを行います。


上空に立ち昇る煙は、[Turbulence Noise]の[Detail]の数値を上げて目の細かい質感を目指します

2つ目に制作するのはサイドに流れていく煙です。この煙は1つめの立ち昇る煙よりも拡散するスピードが速く、1つめの煙が画面最上部に到達する前にほとんどが拡散して消えてしまいます。そこで、煙の拡散スピードを上げるためDissipation Min. Dens.とDissipation Strengthを調整することで煙が拡散して消えていくスピードを速くしておきます。


サイドに流れる煙は、[Dissipation Min. Dens.]と[Dissipation Strength]の値を調整して消失速度を速くします

最後となる3つ目の煙の制作では地中での爆発で最も特徴的な"トゲのある煙"を再現していきます。はじめに説明した通り地中の爆発は不純物が多く含まれるため、煙を突き破る石や砂が内部から多量に弾き出されます。そうした結果、煙にトゲのような大きく筋状に伸び上がる部分ができます。このトゲ状の煙をつくるためには現実と同様に煙の内部から飛び上がる障害物を用意します。パーティクルフローを用いて上空に障害物となるパーティクルを飛ばしたら、コリジョン用に全てのパーティクルをオブジェクト化します。このオブジェクトを衝突オブジェクトとして適用し、SpeedMulで衝突に対する反応を調整し適切なトゲの形になるようにします。各々の特徴をもつ3種類の煙ができたら、最後は1つにまとめてレンダリングします。


トゲのある煙は、衝突判定用オブジェクトを用意し[SpeedMul]によりトゲの形を調整します


【1】【3】の煙を合成します

STEP 04:「粒感のある煙」を考える ~密度の薄い煙を再現する~

PRT FumeFXで粒感の煙をねらう

最後のSTEPでは爆発煙の周囲に漂う粒状の煙を制作します。メインとなる爆発煙以外にも、リファレンス動画をよく見ると先行して密度の低い薄い煙が漂っているのが見えます。この煙の特徴は爆発煙のようなフワッとした質感の煙ではなく、薄いながらもひとつひとつの粒が大きく、動きの推移もはっきり見て取れます。


動画をよく見ると、爆発煙よりも先行して薄い煙が確認できます

この煙を爆発煙と同様にFumeFXでレンダリングしてしまうと粉っぽい煙になってしまいます。そこで、動きについてはFumeFXを使用して再現し、レンダリングは大量の粒に置き換えることのできるKrakatoaを使用することにしました。はじめにVelocityチャンネルを保存したFumeFXをシミュレーションし、FumeFXのキャッシュをKrakatoaでレンダリングをするためにPRT FumeFXを用意します。このローダーにキャッシュを読み込みKrakatoaのパラメータで粒子の密度を調整して適切な煙の密度になるようにします。これでFumeFXの煙の動きを踏襲しながら粒の煙を制作することができました。


PRT FumeFXを使用するための準備として、シミュレーション時にVelocityチャンネルの保存を設定しておきます


PRT FumeFXローダーでFumeFXのキャッシュをKrakatoaに読み込み、粒子の密度を調整します


爆発煙と合成して完成です

完成

現在も毎年数万個の地雷が新たに設置されており、今まで使用された地雷を含めて全て撤去するには1,000年かかると言われています。撤去するか接触するまで半永久的に埋設された土地、生活する人や動物に危害を及ぼし続けるため「悪魔の兵器」と呼ばれています。必ずしもエフェクト制作に必要な知識ではありませんが、こうした背景を知ることで画面から爆発の威力や恐怖がより多く伝えられるのではと思う今日このごろです。地雷ダメ、ゼッタイ。




Profile.

  • 近藤啓太(ジェットスタジオ)
    エフェクトを中心に映像制作をしております


  • JET STUDIO
    ゲーム、映画、遊技機映像など幅広く制作を行う、3ds MaxをメインツールとするCGプロダクション。ベトナムにも支社を構え、大規模な制作体制を採っている
    www.jetstudio.co.jp


  • イラストでわかる物理現象 CGエフェクトLab.
  • イラストでわかる物理現象 CGエフェクトLab.


    定価:3,000円+税
    サイズ:B5変型/フルカラー
    総ページ数:288
    ISBN:978-4-86246-395-1

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