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ZBrushマスターとして独特の存在感を放つVillard・岡田恵太が、ZBrushを用いた勢いのある造形テクニックを毎月紹介していく本連載。今回はダークファンタジー作品の敵として登場しそうなクリーチャーを造形します。

TEXT_岡田恵太 / Keita Okada(Villard Inc.
EDIT_小村仁美 / Hitomi Komura(CGWORLD)



顔のない処刑人の狂気を表現

今回は、洋風のダークなテイストで、人型をモチーフに、不気味さのあるクリーチャーとして「死刑執行人」をテーマに選びました。シンプルですが美しく、静かな狂気が雰囲気として出るように意識しています。無慈悲に人々を殺しそうなクリーチャーです。

主要な制作アプリケーション
・ZBrush 2020
・KeyShot 8
・Procreate 4.0.10

STEP 01:ラフモデルの作成

まず、イメージを固めるためにラフでざっくりと造形をしていきます。雰囲気が固まれば良いので、大雑把で問題ありません。


  • 【1】まず上半身から造形していきます

  • 【2】不気味さを出すために表情はつくりません


  • 【3】いったん全身を作ります

  • 【4】少し胸筋部分が引き伸ばされている印象にします

STEP 02:ラフモデルを参考にイメージ画を作成

大まかな形状が見えてきたら、iPadでイメージを描き起こしながら詳細を詰めていきます。このときも不気味さが出るように意識して描いていきます。

STEP 03:ラフモデルをブラッシュアップ

ある程度ディテールのイメージが固まったら、イメージ画をベースにラフモデルをブラッシュアップします。

【1】徐々に肉肉しさを出していきます

【2】骨格を合わせながら、筋肉も整理していきます

【3】猫背ですが巻き肩ではなく、胸を張っている印象を意識します

【4】奇形感を出したかったので、上半身が強く反っている感じにしました

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STEP 04:武器を作成し、形状を整理

STEP 04:武器を作成し、形状を整理

腕に武器を作成し、スカルプトの甘い部分などを中心に彫り込んでいきます。

【1】鋭い武器ですが、どこか崩したような雰囲気にします

【2】首周辺の部分は視線がいきやすいため、より彫り込んでいきます

【3】骨盤や肩など、関節がしっかりして見えるよう詰めていきます

【4】ディテールの強い部分、弱い部分を意識してメリハリをつけていきます

STEP 05:ディテールの最終調整と着色

ディテールをより詰めていきます。例えば映像用などのリアルなモデルの制作であれば、部位ごとにディテールを追求したり皺や凹凸までシビアに観察しないといけませんが、今回はマケット用のコンセプトモデルを想定しているので、そこまでシビアにはしません。

【1】アルファを使いながらディテールを足していきます

【2】武器には年輪のようなディテールを足して、異質な感じを演出します

【3】ポリペイントで色をつけ、より不気味さを出していきます

【4】背中側は今回はあまり見せないので、整合性を合わせる程度でざっくり作成しています

【5】凄くマッチョとまではいきませんが、しっかりした体格を意識しています

【6】少し味付け程度の感覚でポーズをつけます

完成

KeyShotでレンダリングして完成です。




今回はよりダークなテイストでの造形になりました。個人的にはこういったテイストの作品は作っていていろいろと想像しやすく楽しいですね。仕事ではダークなものだけでなく、龍などの誰もが思う格好良いものなど様々なモチーフを扱いますので、その分引き出しが増え、自主制作にも活かせていると思います。

Profile.

  • 岡田恵太/Keita Okada(Villard Inc.)
    デジタルスカルプター、3Dコンセプトアーティスト。1991年7月生まれ、広島県出身。2012年大阪の専門学校を卒業後、大阪のゲーム会社に就職。2013年に退職し上京した後、1年ほど建設現場の作業員(荷揚げ屋)などをしながらZBrushを独学で習得し東京のゲーム会社へ就職。2015年からフリーランスとなり、PS4用ゲームのDLC『Bloodborne The Old Hunters』をはじめ主にクリーチャーなどのコンセプトモデルを手がける。2017年3月、新会社「Villard」を設立
    www.artstation.com/artist/yuzuki
    www.villard.co.jp