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お題その31:「すこし怒ってる」

お題その31:「すこし怒ってる」

Sony Pictures Imageworksのアニメーターであり、オンラインスクールAnimationAidの講師も務める若杉 遼氏がTwitter上でお題に沿ったポーズ画を募集する「エイド宿題」。本連載では、その企画で集まった作品をピックアップし、若杉氏がドローオーバーによる添削とそのポイントを解説する。

TEXT_若杉 遼 / Ryo Wakasugi(Sony​ Pictures​ Imageworks
EDIT_三村ゆにこ / Uniko Mimura(@UNIKO_LITTLE



今回のお題

こんにちは、海外でCGアニメーターをやっている若杉(@ryowaks)です。今回は、「すこし怒ってる」というテーマでポーズの添削をさせていただきます。

「すこし怒ってる」というお題のポーズでは、キャラクターがカメラにかなり近い「クローズアップの構図」になっています。今回は、キャラクターの表情のつくり方や指のポーズなどのディテールによって、「ポーズの意図がしっかりと伝わるか」がポイントになります。ポーズの設定としては、とてもわかりやすくシンプルなポーズで良いかなと思ったのですが、表情のデザインや小物を手に持っていたりするので、「パッと見」の印象よりさらに深くポーズを詰められる要素が存分にあります。

添削前のポーズは、アイデアを含めしっかりとポーズの意図が伝わるので、とても良くできていたと思います。その上で「より明確にわかりやすく」ポーズを伝えるためのディテールに注目して解説していきます。


作品01:「すこし怒ってる」

投稿作品


先ほども触れましたが、このポーズはカメラに近いため「ポーズのディテール」がとても重要です。演技的な面に関しては、表情はキャラクターの感情が明確に伝わるのでとても良くできていますし、全体的なポーズも違和感がないと思います。演技面は問題ないので、今回の添削では「デザインの観点」からポーズを深掘りしていきます。

Point 1:デザインと左右非対称

アニメーションの基本ルールに「ツイニング(左右対称のデザイン)を避ける」というものがあります。簡単に説明すると、左右対称なポーズは自然ではなく、CGっぽさや機械的な印象をつくってしまう傾向があるということです。特に、手描きではなくCGの場合は、左右の移動や回転の数値を同じにすると、まったく同じデザインのポーズが簡単に出来上がってしまうので要注意です。

また場合によっては、それでも左右対称なポーズが必要な場合もあるかと思います(例:誰かを止めようとして両手を上げている場合のポーズなど)。こういった場合は、左右対称を意識し過ぎると逆に意図が伝わらなくなってしまうことがあるので、注意が必要です。また応用テクニックとして、自然な範囲内での左右非対称が求められる場合、例えば、左右で少しだけ手の高さをずらすだけでも、自然な見た目の印象をつくることができます。

話が少しそれますが、大切なことなのでここで触れておきます。僕の考え方として「デザインの要素」は、ショットやアニメーションにおける「意図の要素」よりも優先度は低いと思っています。ピラミッドの階層でいうと、「意図の要素」の下に「デザインの要素」があるというイメージです。

これは、ポーズにしてもアニメーションにしても、「何を伝えなければならないのか」という「意図」が優先されるべきという考え方です。その上で、その意図をさらに明確でわかりやすく伝えるためには「わかりやすいデザインが必要になる」ということになります。これが逆になってしまうと、シルエットやデザインはとても良いけど、「何を伝えたいのか」がよくわからないポーズやアニメーションとなってしまいます。どんなに良いデザインでも、これでは元も子もありません。


Point 2:デザインと方向性

左右非対称の話と関連して、もう1つお話ししておきたいことがあります。それが「方向性」です。左右非対称にするということは、別の言い方をすると「方向性を決める」ということになります。今回のポーズの場合では、表情のデザインを考えるときに「方向性」を考えてみると良いかなと思いました。

人間のキャラクターの場合には、顔にはまゆげ、目(まぶた)、鼻、口といった要素があるので、それぞれの部位でこの「方向性」を意識するとまとまりが出てきます。それにより、単に左右非対称になっているだけではなく、見やすいデザインにもなってきます。

また、この方向性を考える際には「三角形」を意識して、三角形の辺の「開いている方向」と「閉じている方向」を決めると良いでしょう。基本的には、「キャラクターの目線の方向=開いている方向」といった感じで、三角形の形と合わせていきます。その理由は、観客の目線は「三角形の開いている方向に向きやすい」ということと、心理的に「キャラクターの意識は三角形の開いている方向に向いている」と感じられるからです。

少し上級編の知識として、「相手の方向(=目線の方向)」を先ほどの知識とは逆に、「三角形の閉じている方向」にすると、相手に対して疑惑を抱いていたり信用していなかったりといった印象をつくることができます。


Point 3:表情の例外

表情をつくるときは、これまでに解説してきた部分を意識して詰めていくと、より伝わりやすいデザインになっていくと思います。気をつけておきたいのは、デザインの明確さよりも「ポーズの意図」の方が大切ということです。

その上で、「表情デザインのルール」の例外をご紹介します。人間の表情は、自分で意識的に「コントロールできる表情」と「コントロールができない表情」に分かれます。例えば、「何かが急に目の前に飛び出してきて驚いた!」という場合、表情をコントロールすることはできませんよね? また、何かに対して激怒した場合なども自分でコントロールすることができません。

このような「自分でコントロールができない反応」をしてしまうシチュエーションでは、表情は左右対称や方向性などをそこまで意識せず、左右対称にした方が意図が伝わります。表情をつくるときに、デザインを意識し過ぎて意図が伝わらない表情になっていないか気をつけましょう。


添削前のポーズ


添削ノート


添削後のポーズ

今回はクローズアップのカメラで、キャラクターの表情のディテールがよく見えるポーズだったため、デザインの観点から見てより良いポーズにするためのポイントを解説しました。また、実際に僕がポーズをつくるときに意識している部分や、例外も盛り込んでみました。

「意図の要素」と「デザインの要素」の話は、表情デザインだけに限ったことではなく全体的にとても大切な考え方です。アニメーションやイラストをつくる際に、あらゆる場面で役に立つ考え方ではないでしょうか。この考え方を常に意識しておくと、見ている人に意図がしっかりと伝わるアニメーションやポーズがつくれるようになると思います。また、常に「何を伝えなければならないかを考える」という、基本的なことではあるけれど意外と抜けてしまいがちな部分も意識できるようになるはずです。

今回の添削はこんな感じです。最後まで読んでいただきありがとうございました。最後に、いつも#エイド宿題 に参加してくださってありがとうございます!皆さん、本当に素晴らしいポーズをつくってくださるので、僕も勉強させていただいています。ぜひまた今後も#エイド宿題に参加してくださると嬉しいです!


「エイド宿題」とは?

「エイド宿題」はTwitterで始めたクリエイターの皆さんへ向けた新しい企画です。オンラインスクールAnimationAidのクラス内で出している「ポーズをつくる」という課題を、Twitterでみんなでやってみようというとってもシンプルな企画です。

●参加方法とやり方

・毎週月曜日にTwitter(@ryowaks)でその週のお題を発表するので、そのお題に沿ったポーズをつくってみましょう。
・CGでつくった、もしくは絵で描いたポーズにハッシュタグ(#エイド宿題)をつけてTwitterに上げましょう。
・ぜひハッシュタグで検索して、他の人がつくったポーズも見てみましょう。

●参考

・エイド宿題とは?
https://ryowaks.com/what-is-aidshukudai/

・エイド宿題 これまでのお題
https://ryowaks.com/category/aidshukudai/

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