ZBrushマスターとして独特の存在感を放つVillard・岡田恵太が、ZBrushを用いた勢いのある造形テクニックを毎月紹介していく本連載。今回は冬の代名詞「トナカイ」を、クリーチャー感のある造形で制作します。

記事の目次

    コンセプトアートに近い雰囲気で仕上げる

    今回は12月ということもあり、トナカイをモチーフにして何か作ろうと思いました。美しい印象の正統派のトナカイにしても良かったのですが、クリーチャーに振ってみました。トナカイの顔が裂けて少しグロテスクなクリーチャーになりました。また、今回は少しアート寄りの雰囲気に調整しています。今後は造形としての作品やアート寄りの制作を織り交ぜて進めていけたらと思っています。

    主要な制作アプリケーション

    ZBrush 2021
    KeyShot 8

    STEP 01:顔のラフを制作

    顔のシルエットやボリュームを作成していきます。自分の中でも少しイメージがふわっとしたところからスタートしたので、トナカイの参考資料を観察しながら雰囲気を徐々に探っていきます。

    【1】顔のラフを作成します
    【2】角を追加します
    【3】外側に少し湾曲する感じのデザインにしていきます
    【4】角を整えていきます
    【5】顔の造形を進めていきます
    【6】角度を頻繁に変えながら顔の彫りを進めていきます(角も一緒に進めていきます)

    STEP 02:顔の分割

    顔のラフモデルができてきたら、顔を分割してクリーチャーにしていきます。身体部分と顔から出ている軟組織との質感のちがいを意識して制作していきます。軟組織にはそこまでディテールは必要ありません。

    【1】顔を分割して軟組織を追加します
    【2】口から出ている腕を作成します
    【3】身体の毛のディテールを作成していきます
    【4】毛の立体感を意識して無造作感も採り入れつつ、造形していきます
    【5】丁寧さよりもしっかり彫り込んでいくことを重視して進めていきます
    【6】細かい毛も織り交ぜながら進めます

    STEP 03:指の作成〜ディテールの追加

    【1】指を作成していきます。時短のため、指は1つを複製して並べていきます
    【2】腕と指にクリーチャーっぽいディテールを足していきます
    ▲【3】身体の毛の部分にシャープなディテールを追加していきます
    ▲【4】これで造形は完成です

    STEP 04:KeyShotでレンダリングする

    今回は特にポージングを行う必要はないので、そのまますぐKeyShotでレンダリングをします。最終的にPhotoshopでレタッチを加えて完成です。

    ▲KeyShotのレンダリング。斜め前方からのライティングを意識します

    完成

    完成です。

    今回は少しコンセプトアートよりの作品となりました。造形で毛を作成するのは時間や手間がかかる場合があるので、軽くレタッチして毛の雰囲気を整えています。

    今後もアート寄りの作品を記事に加えていこうと思います。

    岡田恵太/Keita Okada(Villard Inc.)

    デジタルスカルプター、3Dコンセプトアーティスト。1991年7月生まれ、広島県出身。2012年大阪の専門学校を卒業後、大阪のゲーム会社に就職。2013年に退職し上京した後、1年ほど建設現場の作業員(荷揚げ屋)などをしながらZBrushを独学で習得し東京のゲーム会社へ就職。2015年からフリーランスとなり、PS4用ゲームのDLC『Bloodborne The Old Hunters』をはじめ主にクリーチャーなどのコンセプトモデルを手がける。2017年3月、新会社「Villard」を設立

    www.artstation.com/artist/yuzuki

    www.villard.co.jp