記事の目次

    画にプラス要素を。
    画には法則があります。

    それは長い年月をかけて、様々な先人たちにより研鑽されてきたものです。CGという分野においても非常に有効な法則で、きっとあなたの知恵と技術になってくれることでしょう。 永く、そして楽しくこの仕事をし続けるために。

    そして願わくば貴方の人生に+画を。
    今回もWeb連載の強みを活かし、動画チュートリアル『CGWORLD Online Tutorials』と連携してお届けします。

    【ダイジェスト】 vol.013:虎 / 「流れ」を与える
    【+画 ONLINE】 vol.013:虎 / 「流れ」を与える (CGWORLD Online Tutorials)の詳細・動画はこちら

    2022年の干支:虎

    新年あけましておめでとうございます。

    まだまだ世の中は大変ですが、人類の英知が着実に良い未来に向かってくれることを祈っています。今年が我々の業界にとって、また良い年でありますように。

    新連載もついに1周年を迎えました。ありがとうございます。
    月並みですが、この歳になると1年なんて本当にあっという間で、「ちょっと前にはじまったばかりじゃん」などと思っていたらもう2022年。

    このままだと2222年もあっという間に来るかもしれません。時間だけは全ての人に平等なはずですが、「何をしてきたのか」は後にならないとわかりません。

    クリエイティブにおいて「ものづくりにかけた時間」はそのまま自分に返ってきます。
    そして、自分がしてきたことも自分に返ってきます。
    長年見てきましたが、やはり「ただ純粋に画に生きている人」が最後には強いですね。

    そこで、12年前の虎は何を作ったのかと思ったら……、ない! そうなんです。確か連載を2年ほど休んでいた時期があって、この年がそうだったんですね。ただ、年賀状は作っていたので、ここで公開させていただきます。

    当時はスプライン+サーフェイスという作り方ばかり使っていたので、この時期の作品はこのパターンが多いです。

    虎の模様

    自然界に存在するあらゆるパターン。これは本当に素晴らしいものですね。画を志すにあたり、これを参考にせず過ごすことはできません。前回は蝶を作りましたが、蝶の羽の模様もしかり……、

    例えば、以前制作したシマウマの縞模様。ただの「まだらな縞模様」ですが、自然の力は偉大ですね。とても洗練されて見えます。このような「自然の中にあるパターン」はいろいろありますが、「反応拡散系」などと呼ばれているものは有名ですね。

    たしかアラン・チューリングが唱えた説で「チューリングパターン」と呼ばれるものなどは、癒し系のパターンとして知っている方が多いのではないでしょうか。

    ∂u∂t=DuΔu+f(u,v)

    などと数式を見てもなんだかわかりませんが(笑)。

    その他に有名なのは「フィボナッチ」などの数式ですね。フィボナッチの数式を使用して作成したひまわりです。このようなパターンの見極めのお話も画創にはありますが、それはまた今度。

    今回の画創は「流れの法則」。力の流れ方についてお話します。

    世の中のものは何かしら流れがあります。「パターン」あるいは「行動原理」などとも言いますが、「その繋がりがわかっていく」ということですね。このことは、ものの配置やレイアウトにおいても非常に大きな役割を担っています。

    例えば、こちら鯉のぼりの画ですが、ただまっすぐにしてしまうととてもつまらない上に、「泳いでいるのか? 昇っているのか? 釣られているのか?」。何をしているのか、理解しがたくなってしまいます。

    これに「流れの方向」を与えてあげることで、「動き」、「シチュエーション」、「ストーリー」といった様々な要素を追加することができます。

    物の配置についてですが、このように連続するオブジェクトがバラバラに置いてあっても、「散らかっている」という意味はあるかもしれませんがあまり意味が感じられません。

    これをこのように並べてみます。ちょっと回転させただけですが、

    ラインを引いてみましょう。このような流れを繋げてみました。これで、このオブジェクトに「流れ」が出来ました。電車なのか、はたまた紐で繋がっているのか、それとも引っ張られているのか、あるいは同じ道を走っているのか。様々なシチュエーションが想像できますよね。このように、配置に流れを与えることで「意味」が生まれるわけです。

    これは「流れを合わせている」レイアウトですね。流れの方向が合っているので安定したレイアウトに見えます。

    例えば、虎の模様は一見ランダムなように感じられますが、よく見ると「体の流れ」に沿っていたり「ある一定の流れのパターン」があり、そういったものから「虎の模様」としての意味が生じています。

    当然ですがバラバラに並べてしまうと、同じ数・同じ太さのラインであっても意味がなくなってしまいます。

    今回の作例では、虎のラインはその流れを意識したパターンを作成しています。大もとはリアルな虎柄がベースとなっています。

    そのパターンから「流れをくずなさい形」を描いていきます。

    さらに、ライン同士の繋がりを深めるための流れのラインも用意しました。

    同じラインでも、まったく流れに関係のないものを組み合わせるとちぐはぐな画になってしまいます。

    ここでレイアウトの話を少々。今回はかなり王道のテクニックを使っています。

    まずはおなじみの「天地」。画に安定性をもたせるため、上部に空間を作って地面を意識させます。そして「シンメトリー変形」。ただのシンメトリーではなく、鏡面シンメトリーですね。これにより、情報量は単純に2倍になります。床を汚して反射を鈍くしているのは味付けです。

    この後どのようにしているかについては、チュートリアル動画で解説しています。ご興味ある方はぜひご覧ください。

    Composite

    レンダリングした画像をコンポジットしていきましょう。今回は細かいことと反射が強いということもあり、コンポジットで極端に調整してしまうと潰れてしまいます。気を付けながら進めていきます。

    まずはEXRの素材レイヤーをひと通り重ねていきましょう。このあたりは面倒くさがらず、1レイヤーごとに調整しながら重ねていくと味が出てきます。

    調整レイヤーで最終的な画像の「締め」を行います。よく使う「S字」ですね。

    最近の私の講演などには、以前よりももっと様々な方が来て下さるようなりました!
    年配の方も多く参加されています。CGはいくつになっても夢があります。

    願わくば、生涯現役でCGの楽しさを伝えていきたいと思っています。
    今年もよろしくお願いいたします。

    本来の「画を創る楽しさ」をいつまでも忘れずに。

    【チュートリアル収録内容】

    <画創の法則>
    ・パターン
    ・流れの法則
    ・レイアウト、天地、シンメトリ変形

    <実際の制作過程メイキング>
    モデリングからコンポジットまで
    使用ソフト:3ds Max、After Effects
    長年、セミナーや授業でお話してきた生な感じをぜひ体感いただけたら嬉しいです。ムービーの解説ではさらに詳しくないようをご説明しております。

    【ダイジェスト】 vol.013:虎 / 「流れ」を与える
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    Information

    3ds Max『画龍点睛オンライン』講座

    文章だけでは語りつくせない詳細をオンライン形式でお届けします。実践で役に立つ「基本と応用」をCGWORLDの連載『画龍点睛』で制作した作品を通じて解説します。ゼネラリストとしての作品づくりに対する考え方で、さらなるステップアップを。
    tutorials.cgworld.jp

    3ds Max『3DCGクリエイター講座』講座(デジタルハリウッド)

    CGに初めて触れる方や新人教育用の教材「CGオペレーション基礎講座」として、基礎固めに効果を発揮しています。3ds Maxの機能をひとつずつ詳細に解説。豊富な作例から楽しく機能を学んでいただけます。
    online.dhw.co.jp/course/3dcg

    Profile

    早野海兵/Kaihei Hayano

    画龍 / Garyu
    ソニー・ミュージックエンタテインメント、ソニー・コンピュータエンタテインメントを経て創作活動の世界へ。現在、CGWORLD.jpにて「+画」連載中。アートディレクターを務めながら講師や執筆等、幅広くCG業界に貢献している。
    #3dsMax, #adobe aftereffects, #zbrush, #substancepainter

    <代表作>
    ゲーム『鬼武者』シリーズ
    『ヱヴァンゲリヲン新劇場版』シリーズ
    『EXILE LIVE TOUR 2018-2019 "STAR OF WISH"』
    著書『テクスチャイリュージョン』シリーズ
    連載「+画」、「画龍点睛」

    早野海兵公式サイト:kaihei.net
    画龍公式サイト:garyu.mystrikingly.com
    Twitter:@Kai_ryu_Kai

    TEXT_早野海兵 / Kaihei Hayano(@Kai_ryu_Kai)
    EDIT_三村ゆにこ / Uniko Mimura(@UNIKO_LITTLE)